年下イケメンに甘やかされすぎて困ってます

波木真帆

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兄弟の会話

二人のイチャイチャっぷりをじっくりとみさせてもらいながら、夕食を堪能した。
和食の料理人さんだと思っていたけれど、中華もイタリアンも上手だなんて凄すぎる。

「どれも美味しかったです。御馳走さまでした。和食以外も本当に美味しいですね」

「まぁね、どれも満遍なく作れた方が創作和食のイメージも膨らませやすいからね。イタリアンに関していえば、俺より透也の方が上手だよ。和食は流石に負けないけど」

「へぇ、そうなんですね」

透也が和食を作ってくれるのが多いのは俺が和食が好きだと言ったからだろう。
でも今度はイタリアンをおねだりしてみようかな。

「大智さん、fascinateファシネイトっていうケーキ屋さん、知ってますか?」

「えっ? 何、いきなり? もちろん知っているよ。東京で大人気のケーキ屋だろう? 俺も一度食べてみたいと思っていたけど、いつも行列ができているから諦めてる。また日本に帰ることがあったらチャレンジしたいなとは思ってるけど……」

フルーツたっぷりのタルトも人気だというその店の一番人気は濃厚なチョコレートをたっぷり使ったザッハトルテ。
少し苦いコーヒーと一緒に食べたらどんなに美味しいだろう。
想像するだけで、いつになったら食べられるかはわからないけれど。

「ふふっ。これ、みてください」

大夢くんが嬉しそうに冷蔵庫を開け、取り出した大きな箱の側面に書かれているのは、『fascinate』のロゴ。

「えっ? まさか……」

驚く俺を前に、大夢くんが開けた箱から出てきたのは、一度でいいから食べてみたいと思っていたあのザッハトルテと他にもたくさんの果物が乗ったタルトやイチゴのショートケーキ、モンブランにロールケーキなどなど全部で10個。

「これ……」

「ふふっ。実は、美術館の近くにあのお店の支店がオープンしたんですよ」

「えっ? じゃあ、本当にあの店の? 本物?」

「はい。僕も一度でいいから食べてみたいと思ってたんですけど、まさかここにできるとは思ってなかったですよね。今日、祥也さんがお休みだったんで、買いに行ってくれたんです」

「祥也さんっ、ありがとう!」

「ふふっ。いいよ。俺はあんまり甘いものは食べないから、大智さんが大夢に付き合ってくれると大夢も嬉しそうだし。好きなの選んでお皿に入れて。俺はコーヒー淹れてくるから」

そういうと、祥也さんはキッチンでコーヒーの支度を始めた。
大夢くんはケーキの箱をテーブルに置き、お皿とフォークを取りに行った。

すぐに帰ってきた大夢くんは、

「大智さん、どれにします?」

と嬉しそうにケーキを見つめている。

「やっぱりザッハトルテは欠かせないですよね。もう一個くらい食べられます?」

「もちろんいけるけど、そんな食べていいの?」

「もちろんですよ。そのために10個も買ってきてくれたんだと思いますし。言っておきますけど祥也さん、本当に食べないですよ」

「そうなんだ、じゃあもらおうかな」

そう言ってモンブランを手に取ると、

「ああ、いいチョイスですね!」

と言われる。

完全にプライベートな空間の中で年齢も上司と部下であることも何も気にすることなく、こうやって好きなものの話ができるって最高だな。
本当、こんな時間を過ごせるなんて日本にいる時じゃ考えられなかったな。

大夢くんは、ザッハトルテと王道イチゴのショートケーキを皿に乗せ、残ったケーキはまたあとで食べましょうねと言って箱を冷蔵庫に戻した。

同じタイミングでコーヒーを持ってきてくれた祥也さんにお礼を言いながら、美味しいケーキを食べる。

久しぶりの日本のケーキに感動していると、スマホが鳴り出した。

「あっ、透也かも」

慌ててフォークを置いて、スマホを取り出すとやっぱり透也から。
もちろんビデオ通話だ。

透也は仕事中なのにこっちは大夢くんと美味しいデザート実食中なんて申し訳ない気もするけれど、時差があるんだから仕方がない。
とりあえず一旦取って、ケーキを食べているからまたあとでと言おうか。
いや、やっぱりここはケーキじゃなくて恋人を取るべきところだよね。

今の考えが透也にバレたらショックを受けるかも……なんと思いながら、電話を取ろうとするとスッと横から長い腕が出てきた。

「えっ?」

「ケーキ食べてていいよ。俺が透也と話しておくから」

「でも……」

「いいから、いいから」

俺が戸惑っている間に
祥也さんが電話をとる。
ビデオ通話だからもちろんスピーカー設定になっていて、顔が見えた瞬間

ーなんで兄貴が大智のスマホに出るんだよ

と透也の声が響いた。

ー大声を出すな。今日は大夢が大智さんを誘って我が家で一緒に夕食を食べたんだ。今、二人はデザートを食べてて手が離せないから代わりに俺が取ったんだよ

ーえっ? 兄貴と高遠さんの家に? まだいるって、もうそっちは23時近いだろう?

ーああ、今日はこのまま泊まってもらうつもりだから。今から帰すよりは安心だろう?

ーう――っ、そりゃあ、確かにそうだけど。でもなんで今日いきなりなんだ?

ー大夢がずっと大智さんと食事がしたいって話してるって言っていたのに、お前が忙しいとかなんとか言って断ってたからだろう? お前経由だといつまで経ってもゆっくり話せそうにないから、お前が日本に行ってる時を狙ったんだよ。元々はお前のせいだろう?

ー…………

ーふふっ。何にも言えないか?

ー仕方ないだろう。離れる前の全ての時間を俺のものにしておきたかったんだから。ちゃんとそっちに配属が決まったら、高遠さんとの食事会もやるつもりだったよ。

ーわかってるよ、お前の気持ちは。だから今日にしたんだよ。お前だって、大智さんを一人で社宅に残しておくよりは安心だろう?

ーまぁ、そうだな。ありがとう。

ケーキを食べながら飛び込んでくる透也と祥也さんの会話が、なんかものすごく恥ずかしく感じて、せっかくのケーキなのに、全く味がわからなくなってしまっていた。
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