年下イケメンに甘やかされすぎて困ってます

波木真帆

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番外編

奴への報復  <中編>

やっぱり前編でのイチャイチャが響いて?長くなりすぎたので前中後編にタイトルを変えます。
これより長くなったらまたタイトル変えるかも。
楽しんでいただけると嬉しいです♡

  *   *   *


銀座にある老舗テーラー。
今回の一時帰国で絶対に大智を連れて行こうと思っていたこの店は、高祖父の友人が創業したお店で、我が家の男たちは代々この店のスーツを愛用している。

俺も成人の折にこのテーラーでスーツを仕立ててもらってから、その魅力にどっぷりとハマり、持っているスーツの全てがここのものだ。

もちろん、兄貴も敦己も同じだ。

それくらいにここのスーツは動きやすく着心地がいい上に、着る人の良さを最大限活かしてくれる。

今回はここで大智と俺の揃いのスーツを作ってもらうために連れてきたんだ。

「まさか、ここに入るのか?」

「もちろんです。そのために来たんですよ」

「でも、こんなすごいところ俺には敷居が高すぎて……」

「何を言っているんですか。大智にこそ一番似合う場所ですよ。結婚の記念に揃いのスーツを贈りたいんです。俺の願い事を聞いてくれるんですよね?」

「ゔーっ」

千鶴さんの件でどうしてもお礼がしたいと言い張る大智に、お礼なんてもらうつもりはさらさらなかったけれどどうしてもというので、それならお礼はお揃いのスーツを仕立てたいと言ったら、了承してくれたんだ。

大智はてっきりどこかで買うと思っていたようだったけれど、俺は最初から仕立てると話していたし、ここに連れて行く気満々だった。

「でも、ものすごく高そうだけど……」

「値段は気にしないでください。俺が仕立てるんですから、俺がプレゼントしますよ」

「それじゃあお礼にならないだろう?」

「お揃いが作れるんですから、お礼にしかならないですよ。さぁ、入りましょう」

緊張している大智の背中に手を添えて、店の中に入る。
チリンという可愛らしい音に迎えられて、大智の表情がほんの少し和らいだように見えた。

「透也さま。いらっしゃいませ」

「杉下さん、今日はよろしく頼むよ」

「こちらのお方が透也さまの大事なお相手でございますか?」

「ああ。綺麗な人だろう?」

「ええ。本当に。透也さまととてもよくお似合いでございます」

「ありがとう。大智、俺たちお似合いですって」

「あの、ありがとうございます。今日はよろしくお願いします」

「これはこれはご丁寧にありがとうございます。それでは早速生地選びから始めましょう」

今回は日下部家で集まる時には必ず着る正装としてのスーツと、そして普段使いのスーツの二着を俺たち二人分、計四着のスーツを仕立てるつもりだ。

ここで一度しっかりと採寸をしてもらえば、これからは大智を連れて行かなくても作ることができるな。

生地は大智の肌に合うものと似合う色味を考えて選んだが、比較的すぐに決まったのは大智が俺と同じものがいいと言ったからだ。

「杉山さまの採寸をお取りしますね」

フィッティングルームに入り、鏡を見ながら採寸をする。
その間、俺はスーツ似合うシャツやネクタイ、ベルトやカフスといったすべての小物を選んでおいた。

杉下さんの採寸は丁寧だからもう少し時間がかかりそうだな。
コーヒーでも飲みながらのんびり待っておくか。

そう思ってソファーに腰を下ろした途端、ジャケットの内側に入れていたスマホがブルブルと震えた。

誰だ?

画面表示を見て思わず眉を顰めたのは、嫌な予感がしたからだ。

電話表示は管理人。

といってもジャックではない。

大智が以前住んでいたマンションの管理人からの着信だ。

大智を訪ねて誰か来るようであれば連絡が欲しいといっておいたんだ。
それ以外でかかってくる理由がないのだから、奴が現れたということだ。

大智に気づかれないように、スタッフに部屋を借りそこで電話をとった。

ーもしもし。相楽さがらさん。何かありましたか?

ー日下部さん。夜遅くにすみません。迷ったのですがお知らせした方が良いと思いまして

ーいえ。今、日本に一時帰国しているんですよ。

ーあ、そうなんですか。それなら連絡をしておいてよかったです。実は先ほど杉山さんを訪ねて例の人が来ました。

ー奴ですか?

ーはい。日下部さんから写真をいただいていたので、間違いありません。杉山さんの部屋の前で大騒ぎしていました。居留守を使っているから、合鍵で中に入れろと言ってきたんですよ。言い方悪いですが、ヤバい奴ですよ。

ー合鍵で、ですか? 本当にとんでもない奴ですね。

ーはい。とりあえず、杉山さんはここには住んでいないと話をしたんですが、まだ諦めているようには見えませんでした。

ーなるほど。わかりました。わざわざご連絡ありがとうございます。

ーいえいえ、日下部さんには本当によくしていただいてますから。また何かありましたらご連絡いたします。

やっぱり家に来たか。
大智がどこに勤めているか教えてないと話していたから、こっそり家を調べているんじゃないかと思っていたんだ。
管理人に写真を見せておいて正解だったな。

偶然にも大智が住んでいたマンションが祖父の持っていたマンションの一つだったから助かった。

奴がこの時間にあのマンションを出たら、きっと行きつけのあのBARに愚痴を漏らしに行くはずだ。
念の為に彼に連絡を入れてBARを張り込んでもらうようにしておいたから、何かあれば連絡が来るだろう。

急いで部屋を出てさっきの場所に戻るとちょうど大智がフィッティングルームから出てきた。

「大智、お疲れさま。どうでした?」

「杉下さんから、透也や宇佐美くんの話を聞けて楽しかったよ」

「うわ、何を聞いたんですか?」

「ふふっ。内緒だよ」

どうやら、こんな短時間に杉下さんと仲良くなったみたいだ。
まぁ、彼にも素晴らしい伴侶がいるから全然心配はしていないけれど。

採寸も終わり、完成したらL.Aに送ってくれるということで話がまとまり俺たちは店を出た。

「何か食べたいものはありますか? どこかで食べていきましょうか」

「うーん、そうだな。あ、あそこの――」
「あ――っ!! お前っ!」

突然、俺たちの楽しい気分を一気にぶち壊す、嫌な声が耳に飛び込んできた。

「お前、ふざけんなよ。着信拒否にしやがって! 家まで行ってやったのにこんなところで何やってんだよ!」

銀座のど真ん中で周りのことも考えずに大声で騒ぎ立てながらこっちに近づいてくる人物を見て、大智は顔を青褪めさせていた。

「大智、大丈夫です。俺の後ろにいてください」

奴と大智の間にスッと入り込み、大智に触れさせないばかりか視線すらも合わせないようにした。

まるでどこぞのチンピラのような言葉遣いで凄んできたが、冷静に自分から名乗れと言えば、

「俺はついこの間までこいつと付き合ってやってたんだよ。まぁ遊びだったけどな。ペットがわりにもう一度遊んでやろうとしただけだ。どうせ誰も相手なんかいないだろうからな」

となぜか得意げに話し始める。
遊びだと思っているやつに執着しているくせに何を言っているんだ。

怒りが湧き上がるが、ここで興奮しては相手の思うつぼだ。

「それならご心配なく。彼は私の大切な恋人です。あなたの相手なんてしませんよ」

堂々と宣言してやれば、得意げだった顔が一気に怒りに歪んだ。

何か文句を言いたいらしいが見当たらなかったのか、若造のくせにと言われた。
そんな語彙力のなさに笑いそうになったが、そんなばかを相手にする時間も勿体無い。

「年齢は関係ないでしょう。それにあなたには婚約者がいるのではないんですか? それなのに彼に執着して恥ずかしくないんですか?」

至極冷静に言ってやれば、何も言えなくなったのか言葉に詰まったようだ。

そのまま逃げ帰れば放置してやってもよかったが、奴は大きな捨て台詞を残しやがった。

「はっ! そんなやつ、お前にくれてやるよ! 痛がってばかりで何にも良くないし、口でもやらせても何もできないつまらない男なんだからな」

奴の言葉に、俺の後ろで大智が俺の服を掴む手が震えているのがわかる。
また大智を傷つけやがった。
俺はこいつを絶対に許さない。

とはいえ、ここで挑発に乗るわけにはいかない。

「あなた、こんな場所でそんなことを言っていいんですか? 注目浴びてますよ」

怒りを抑えてそう告げれば、奴は震えながらも言葉を返してくる。
俺にビビっているくせにこの雑魚が。

もう手加減なんかしてやらないからな。
まぁ、元々する気なんてなかったが。

これ以上奴の言葉を大智の耳に入れたくなくて、車に連れて行こうとすると

「せいぜい捨てられないように少しはサービスしてやるんだな」

最後の足掻きのようにそんな言葉をぶつけてきた。

俺はどうしてもこの言葉だけは放っては置けなかった。
大智のことを守るためにどうしても。

「大智、すぐに戻ります」

一瞬だけ、その場に大智を置いて、奴に近づき耳元で

「お前、このままで済むと思うなよ。死ぬほど後悔させてやるからな」

と最大限怒りを滲ませて凄んでやった。

「それにな、大智ほど感じやすい人はいないんだよ。まぁお前の小さなモノで大智を気持ちよくさせるなんて一生無理だろうけどな。せいぜい婚約者さんには捨てられないようにするんだな」

おまけの言葉の方に奴は傷ついているようだったが、奴が茫然としている間に大智の元に戻り、そのまま車に乗せた。

「大智、今日はこのままホテルに帰りましょう」

「えっ、でも……透也はどこかで食事……」

「いいんです。今日は部屋で二人で食べましょう」

遠出をするかもしれないと思い、車で来たがそのまますぐ近くにあるホテルに戻った。

「ごめん、嫌な目に遭わせて……」

「何言っているんですか。一緒にいる時でよかったんですよ」

「透也……」

「今日は離れないでずっと一緒にいましょう」

俺が抱きしめると大智の方からキスをしてくれた。
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