年下イケメンに甘やかされすぎて困ってます

波木真帆

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番外編

奴への報復  <後編>

それが合図のように俺たちは甘い時間を過ごした。
リビングで、寝室で、そしてお風呂で……何度も何度も愛を重ねて、大智はさっきのことなど全て忘れて、俺の隣で幸せそうに眠っている。

だが、俺は大智を傷つけたやつを絶対に忘れはしない。

俺は隣に眠る大智の頬にそっとキスをして、ベッドを抜け出し、ある人に電話をかけた。

ーどうなりましたか?

ー透也さんの想像の通り、あのBARに来て盛大に愚痴ってましたよ。隣で相槌打ってやったらこっちが何を聞かなくてもあっちからペラペラと話してきて、それもバッチリ動画と音声データ残してますから。すぐにメールで送りますね。

ーユウさん。さすがですね。これで奴を地獄に落とせますよ。

ー透也さん、言っておきますが直接手を下すのは……

ーわかってますよ、大智を悲しませるようなことはしませんから。それにあんな雑魚、直接手を下すまでもないですよ。

ーふふっ。確かに。

ー今回の調査費用は、この後すぐに振り込んでおきますから確認よろしくお願いします。

ーはい。ありがとうございます。

爽やかな声で電話は切れた。
いや、お礼を言いたいのはこっちの方だ。
あれだけの証拠、ユウさんでなければ集めることはできないだろうからな。

俺はすぐにネットバンキングで料金を振り込み、次に祖父に連絡を入れた。

ーどうした? 珍しいな、大智くんに何かあったのか?

数ヶ月前、アメリカに仕事に来ていた祖父に大智を紹介した。
もちろん、兄貴の店で。
高遠さんも一緒に5人で食事をした。

その席で大智と高遠さんをいたく気に入った祖父は、今では本当の孫以上に二人を可愛がっている。
まぁ、ガタイのいい俺たちより華奢で可愛らしい印象のある敦己を可愛がっていた祖父なら、絶対に二人を気にいると思ってはいたが、あまりにもその通りで俺も兄貴も笑ってしまった。

すでに大智の過去については全て包み隠さずに話をしていて、奴が何か動こうとした時にはすぐに手を下してくれるということで話がついている。

だからだろう。
日本に帰ってきている俺からの電話にすぐに理解してくれたようだ。
さすが、泣く子も黙るベルンシュトルフ ホールディングスの会長だ。

ー奴が動いた。しかも、大智に罵声を浴びせて傷つけたんだ。

ーなんだと? 私の孫を傷つけたのか? わかった。全て任せておけ。もちろん、お前の名前を出してやっておくからな。その方が次期社長としてのお前の力を示すことができるだろう。

ー父さんには?

ーああ、それも大丈夫だ。私から言っておこう。お前は大智くんについててやれ。

ーありがとう。

ーこれが終わったら、雅也まさやにも大智くんを紹介してやれ。私だけ会ったことをまだ拗ねているからな。

ーははっ。わかったよ。父さんとも今回の滞在中に会いに行く予定だったし。

ーそれならいい。

ー必要なデータは全て送るから。

ーわかった。明日には全て終わるはずだよ。ただ、気をつけた方がいい。ああいう輩は逆恨みしてくるものだからな。

ーああ、わかってる。ありがとう。

俺と大智には頼りになる味方が多くて本当にありがたい。

俺は必要なものを全て祖父のパソコンに送り、大智のところに戻った。
祖父はうちの会長という立場だけでなく、経済界の重鎮でもある。

祖父に睨まれたらどこの会社もひとたまりもない。
これで奴は仕事もクビ。
結婚の話も流れるだろう。

まぁ、金遣いの荒いあの婚約者なら遅かれ早かれ破綻していただろうが。
もうどうでもいい。

明日は大智も会社に行く予定だったが、奴が乗り込んでくる恐れがある。
部屋で寝かせておいた方が良さそうだ。

仕事ではなく敦己と北原にお土産を渡しに行くためだったからそれはまた違う日でもいいだろう。


翌日、案の定起き上がることができなかった大智を部屋に残し、俺は一人でベルンシュトルフ ホールディングス本社に向かった。

敦己と北原は俺だけの出勤にわかりやすくがっかりしていて、俺は少しショックを受けた。

「久しぶりに支社長に会えると思っていたのに……どうせ、透也が激しくしたんだろ?」

「なんでわかった?」

「はぁー、やっぱり。そうだと思ったよ。あーあ、今日はたっぷり話せると思ったのに……ケダモノのせいで……」

すごい言われようだな。
だが、それくらい大智に会うのを楽しみにしていたってことか。

「わかったって。明日の休みはお前たちに譲るよ。ホテルのラウンジでケーキでも食べたらいい。俺の奢りだからなんでも好きなのを食え」

「わぁーっ! やった! 暁くん、一緒に行こう!」

「わぁーっ! 嬉しいです!!」

「ちゃんと上田先生と小田切先生の了承はとってくれよ。俺が文句言われるから」

「ふふっ。わかってるって。ねぇ、暁くん」

「智さんは文句なんか言わないと思うけどな」

そんなことを言っているけど、小田切先生も上田先生も俺が北原たちと仲良くしてると目が怖いんだよ。
本当に揃いも揃って鈍感で困る。

そんな話をしていると、

「日下部さん、大変です! 受付で――」

上田くんの声が聞こえてきて、大急ぎでロビーに駆け降りた。

「キャァーッ!」

受付の子の叫び声が聞こえた瞬間、俺は目の前にいる男の腕を捻り上げた。

「何しやがるんだ! 離せよ!」

苦痛に顔を歪めながら凄んできた男が俺の顔を見るなり、さらに怒りの色を強め、お前のせいで仕事をクビになったと声を荒らげた。

それどころか、

「皆さーん、ここの社長は男と付き合ってるキモ野郎ですよー! ゲイの社長の下で働くなんてやめた方がいいですよー!!」

と大声で叫んだが、こいつは本当に無知で大馬鹿野郎だ。

俺と大智はすでにパートナーシップを申請した、この会社では認められた正式な夫夫だ。
元々、祖父がいち早く取り入れた制度のおかげで会社内にも同性カップル率は他の会社よりも群を抜いて多い。
だから、身近にいるせいか、誰も非難などするものはいない。
いや、そんな人は元々採用しないのだ。

俺たちがカミングアウト済みで認められた夫夫だと話すと、奴は顔を青褪めさせこの場から逃げようとしていたが、逃すはずもない。

上田くんがすでに警察に呼んでくれていたおかげですぐに奴は逮捕された。

すぐに刑務所から出てこられたとしても、奴はこれから多額の賠償金を払うことになっている。
堅気の仕事では100年働いても返すことなど不可能な賠償金を払うために、刑務所から出てきたと同時にある店に連れて行かれることになっている。
そこなら、なんとか返せるようになるだろうか。

まぁいずれにしてももう大智と出会うことはない。
ようやく静かな日常が訪れるんだ。



  *   *   *

なんとか報復編終わりました。
せっかくなので、可愛い子猫ちゃんたちのスイーツのお話がおまけで続きます。
お楽しみに♡
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