年下イケメンに甘やかされすぎて困ってます

波木真帆

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番外編

運命の相手 <前編>

『自家焙煎珈琲店で出会ったのは自分好みのコーヒーと運命の相手でした』で千鶴から相談を受けた大智視点のお話。
ここでは大智と透也はL.Aと東京で遠距離恋愛中です。


  *   *   *

<side大智>

<小田切先生、先ほど千鶴に連絡しました。千鶴も暁くんと話をしてみたいと言っていましたので、ぜひ会いに行ってやってください。千鶴の連絡先はこちらです>

千鶴の電話の声、思ったより元気そうだったけどあいつはいつも無理するからな。
それでも暁くんのことを話した時は、興味を持ったみたいだった。

まだあの時のトラウマに悩まされている千鶴としては、同じように被害者となった暁くんがどうやって外に出られるまでに回復できたのか、知りたいのは当然だろう。

男性だろうが、女性だろうが、無理やり身体を奪われる苦しさは変わらないのだからな。

千鶴が少しでも前を向けるようになるきっかけになってくれたらいい。

わざわざ千鶴の元まで行ってくれるという小田切先生と暁くんの優しさに感謝しながら、メッセージを送るとしばらくして、今度の週末に会いに行く約束を取り付けたと小田切先生から連絡が来た。

そこからの日々はまるで自分のことのようにドキドキしてしまった。

それはきっと透也がそばにいなかったからかもしれない。
落ち着かない気持ちのまま、その日を迎えた。

小田切先生からはその後、千鶴と暁くんが会って話をしたこと。
二人が意気投合して仲良くなっていたことなど報告があったが、それ以上詳しく聞き出すのもなんとなく憚られて、お礼だけ伝えてそのままにしていた。

ー大智、どうかしましたか?

ーああ、ごめん。せっかくビデオ通話で話しているのに。

ーいえ、それはいいんですけど、何か心配事ですか?

ー千鶴のことだよ。

ーああ、北原と小田切先生が千鶴さんのところに会いに行ったんでしょう?

ーうん。小田切先生からは元気そうだったと連絡は来ていたけど、千鶴からは何もなくて……まぁ、いちいち兄に連絡なんかしないと言われればそうなんだけど、気になって……。

ーそうですね。でも、心配しないで大丈夫だと思いますよ。

ーなんでそんなことがわかるんだ?

ーまだ確定ではないので、はっきりとは言えないんですけど、千鶴さん……いい出会いがありそうなんです。

ーえっ? いい出会い? それって、恋人ってことか?

ーうーん、まだそこまでは……。でも可能性がないわけではないですよ。実は、小田切先生がある人を紹介したみたいなんです。

ーある人?

ーええ。大智も間接的には知っている人ですよ。

ー間接的? よくわからないな。

ーまぁ、もう少し待ってみたらきっと千鶴さんから連絡きますよ。

自信満々な透也の様子に俺はそれを信じて、ひたすらに待つことにした。

そして、それから数日後……。

透也と久しぶりに長電話をしてしまい、明日のために早く寝ようと電気を消して、目を瞑ったその時、枕元に置いていたスマホが鳴り始めた。
メッセージの通知音ではなく、着信の音にびっくりして手に取ると、画面表示には千鶴の名前があった。

半分寝かけていた頭はぼーっとしていたけれど、完全に眠る前で良かった。

慌てて電話を取り、

ーもしもし、千鶴?

と声をかけると、こっちの時間に気づいたらしい千鶴の焦った声が聞こえた。

ーごめん、お兄ちゃん。そっちは真夜中だったよね。すぐに切るから、ごめんね。

ー大丈夫だから落ち着け。

いつもの千鶴なら、電話をかける前に時差はもちろん、相手が何かしている時間かを考えるはず。
何も考えることなくかけてきたことが、千鶴に何かあったことを如実に表していて、ここで絶対に電話を切らせるわけにはいかないと思った。

一気に覚醒した頭で呼びかけると、千鶴は落ち着きを取り戻してもう一度謝ったが、謝罪よりも電話の意味が知りたくてたまらない。

ーそれよりどうしたんだ?

と尋ねると、千鶴は小田切先生と暁くんが来た時からの話を全て教えてくれた。

男同士ならすぐに結論から話すところだろうが、女性の会話はそこに辿り着くまでの過程が大事なのだと聞いたことがあったから、途中で口を挟むことなくただひたすらに聞き続けた。

小田切先生の友人が千鶴のためにブレンドしてくれたコーヒーと聞いただけで、透也の言っていた『間接的に知っている人』が彼だと分かった。

俺自身はまだ会ったことはないが、透也がいつも飲んでいて、俺もお気に入りのコーヒーをブレンドしてくれるバリスタの長瀬さん。

彼のコーヒーを好む人は透也の周りに多く、俺も今では彼のコーヒーの虜だ。

その人が千鶴のイメージに合わせてブレンドしたコーヒーが、偶然にも長瀬さんの好みのブレンドコーヒーそのもので、千鶴はそれを飲んで美味しいと感じたようだ。

以前透也からも聞いたことがある。

コーヒーの好みがピッタリ合う人は、運命の相手なのだと。

俺はそれは正しいと思っている。
なんせ、透也のコーヒーを飲んでからは他のブレンドコーヒーは美味しいと感じられなくなってしまったのだから。

千鶴は長瀬さんと会って、その日に運命の相手と言われたことについて戸惑っているようだったけれど、悩んでいる時点でもうすでに千鶴の気持ちは長瀬さんに向いているのだろう。
そうでなければ、悩んだりしない。
千鶴のそんな性格は俺がよく分かってる。

でも運命というものの存在がまだ完全に信じきれてない様子の千鶴に、それを信じさせるために俺はひと肌脱ぐ事にした。

ー運命っていうのはあると思うよ。

透也と出会う前の俺なら、今の千鶴のように半信半疑だっただろう。

ー俺もその運命っていうやつに出会ったから信じないわけにはいかないんだよ。

そういうと、電話の向こうで千鶴がはっと息を呑むのが分かった。
千鶴は俺がゲイだってことを口にはしないけれど、知っているはずだからきっと今頃いろいろ考えているんだろうけど、今はそこまでにしておこう。

ー今は気持ちも舞い上がってしまっているかもしれないけど一晩ゆっくり寝て、もう一度会いに行ったら、今の気持ちが本物かどうか自分でもわかるんじゃないか?

千鶴にそうアドバイスすると、千鶴の声は納得したように聞こえた。

電話を切った後で、透也に

<千鶴の件が落ち着いたら、千鶴に透也を紹介しようと思う。いいよな?」

とメッセージを送ると、速攻で透也から電話が来た。
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