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番外編
千鶴たちとの対面 2
タイトルは『千鶴たちとの対面』なのに千鶴がまだ出てこない(汗)
その代わり、今回はある人に特別出演してもらいました。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side透也>
日本までの飛行機はもちろんファーストクラス。その中でも俺たち二人に相応しいペアシートを予約した。この席なら俺たちの間に邪魔な仕切りなどなく、いつでも二人で座っていられる。
食事をするときも映画を見る時も、もちろん寝る時も、家にいる時と変わらず……とまではいかなくても、二人の時間を過ごすことはできた。
もちろん大智の可愛い寝起きの顔を見られるのも俺だけ。美味しそうに食事をしている姿を見られるのも俺だけ。それだけでこの席を予約した甲斐があったというものだ。
楽しい移動時間を終えて日本に到着し、まずはホテルに向かおうとしていると、甘く香ばしい匂いに大智が誘われた。
すごく美味しそう! と目を輝かせる大智の姿に笑顔しか出ない。千鶴さんたちへのお土産に買っていこうと言っているけれど、大智自身が食べたくて仕方がないみたいだ。少し行列ができているけれど、空港内の店だけあって回転は早く、そこまで待ち時間はなさそうだ。
ただこのキャリーケースを持ったまま並ぶのは通行の邪魔になりそうだ。そう伝えると、大智は一人で並ぶと言い出した。いやいや、そんなことさせられるわけがない。それならキャリーケースと一緒に行列から見えるベンチに座らせておいた方が安心だ。
とりあえず牽制のために俺の上着を羽織らせて、ベンチで座らせた。行列から眺めていてもかなり目立つ。大智はいい加減自分がどれほど目立つ存在かをわかっていて欲しいものだが、自分のことを平凡だと思い込んでいるから困る。
ああ、大智は本当に綺麗だ。第三者目線で見ても目を惹く。ここが日本じゃなかったら通行の邪魔になってもいいからそばに居させるな。
「あ、すみません。最後尾はこちらですか?」
大智に夢中になっていると、申し訳なさそうに声をかけられた。振り向くと長身イケメンが立っていた。それもただの長身イケメンじゃない。何かものすごいオーラが漂っている。どう見ても一般人ではない貫禄がある。そんな人がこのアップルパイの甘い匂いに誘われたのかと思うとちょっと笑ってしまう。
「ああ、はい。そうですよ」
「ありがとうございます。よかった、この分なら買えそうですね」
この行列に並んでいるのはほぼ女性。二人ほどいる男性は女性の付き添いのようで男だけで並んでいるのは俺とこの人だけ。
「アップルパイ、お好きなんですか?」
「今朝、ニュースを見て恋人が美味しそうと呟いていたのでこっそりプレゼントしようと思って買いに来たんです」
纏っているオーラが一気に和らぐのを感じる。よほど溺愛しているんだろうな。
「ああ、そういうことですか。私も似たようなものです」
「そうなんですか?」
「ええ、タクシー乗り場に向かう途中で可愛い恋人がこの焼きたての匂いに誘われまして……」
「ああ、なるほど」
きっと彼も、俺の溺愛オーラを感じているだろう。なんだか仲間意識のようなものを感じながら、彼と話をしているうちにもう俺たちの順番がやってきた。
三個まで買えるらしいが、少し大きめのアップルパイだから一つでいいか。
俺が一箱買うと、彼も一箱買っていた。このアップルパイを愛しい恋人と二人で食べるんだろう。それにしてもニュースを見て恋人がつぶやいただけでわざわざ成田まで買いに来るとは本当にすごい。
焼きたての香ばしい匂いが漂ってきて、大智の喜ぶ顔が早く見たいとそちらに視線を向けると、大智が警察官二人と向き合って話をしているのが見える。
「どうかしましたか?」
俺の表情に気づいたのか、彼が声をかけてきた。
「すみません、私の恋人が警官に声をかけられているので……」
それだけ告げて彼をその場に置き去りにして、大智の元に駆け寄った。
「大智、何かあったんですか?」
「透也っ!」
不安でたまらないと言った表情で、俺に助けを求めるように名前を呼ぶ。
「俺、30だって言ってるのに信じてくれなくて……っ」
「ああ、なるほど。そういうことですか」
チラリと警官二人に目を向けると、俺を訝しんだ目で見ながら、
「あなたはご家族の方ですか? この子とどういう関係ですか?」
と聞いてくる。
「彼は私の大事なパートナーですし、彼はこの子と呼ばれるような未成年ではなく、れっきとした大人ですよ」
「パートナー? あんた、この子はどう見たって未成年でしょう? 未成年の男の子相手に何言ってんの。もしかして家出少年を連れ去ろうとしてるんじゃないだろうね?」
「はぁ? いい加減にしてください! ほら、パスポートです」
俺は警官の態度に苛立ちながらも持っていた大智のパスポートを取り出し、警官たちに見せた。
彼らはパスポートの写真と大智を何度も見比べて、
「本当に、30……!!」
と呟いていたが、今度は
「子どもみたいな紛らわしい格好している方が悪い」
と言い出した。
あまりの言い草に腹が立って言い返そうとしたら、俺の後ろで様子を見ていたらしいさっきの長身イケメンが、
「お前たち、なんて物言いだ! 間違えて迷惑かけたんだから、まずは謝罪だろう!」
と大声で怒鳴った。
「ひぃ……っ、ま、真壁、警視正っ!」
警視正? この人、警察官僚だったのか……。どおりであの貫禄。
「申し訳ありません、私の部下がご迷惑をおかけして失礼しました」
「いえ、わかっていただければいいんですが、先ほどの態度は少し改善していただいた方がいいですね」
「はい。それはもう厳しく指導いたします。後であらためてお詫びいたしますので、お名刺いただけますか?」
警視正という立場の人間にここまで謝ってもらえればもう問題はないが、また同じようなことがあっても困るからな。
俺は持っていた名刺入れから一枚引き抜いて彼に渡した。
「――っ、ベルンシュトルフホールディングスの副社長……っ、これは大変失礼いたしました」
「真壁警視正、彼らの指導、よろしくお願いしますね」
「は、はい」
申し訳なさそうに頭を下げる彼にそっと
「アップルパイ、愛しい恋人さんに早く食べさせてあげてくださいね」
と声をかけ、
「大智、行きましょうか」
と抱き寄せながら立たせて、キャリーケースをひいて急いでその場を立ち去った。
タクシー乗り場に向かいながら
「あの人、知り合いだったのか?」
と尋ねられ、たまたま列に一緒に並んでいただけだと告げた。
「アップルパイを買って大智を見たら警官二人と話しているからびっくりしましたよ」
「俺だって急に声かけられて、家出少年と間違われてどうしていいか困ってたんだよ」
「ふふっ。大智が家出少年……」
「もう30なのに、未成年とかありえないだろう。アメリカならまだしも日本だぞ」
「それくらい、大智が可愛いってことですよ」
「可愛いっていうな!」
そんなふうに拗ねるのも可愛くてたまらないのに。ああ、もう俺のパートナーが可愛すぎて困る。
* * *
真壁の肩書を警視長から警視正に変更しました。
その代わり、今回はある人に特別出演してもらいました。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side透也>
日本までの飛行機はもちろんファーストクラス。その中でも俺たち二人に相応しいペアシートを予約した。この席なら俺たちの間に邪魔な仕切りなどなく、いつでも二人で座っていられる。
食事をするときも映画を見る時も、もちろん寝る時も、家にいる時と変わらず……とまではいかなくても、二人の時間を過ごすことはできた。
もちろん大智の可愛い寝起きの顔を見られるのも俺だけ。美味しそうに食事をしている姿を見られるのも俺だけ。それだけでこの席を予約した甲斐があったというものだ。
楽しい移動時間を終えて日本に到着し、まずはホテルに向かおうとしていると、甘く香ばしい匂いに大智が誘われた。
すごく美味しそう! と目を輝かせる大智の姿に笑顔しか出ない。千鶴さんたちへのお土産に買っていこうと言っているけれど、大智自身が食べたくて仕方がないみたいだ。少し行列ができているけれど、空港内の店だけあって回転は早く、そこまで待ち時間はなさそうだ。
ただこのキャリーケースを持ったまま並ぶのは通行の邪魔になりそうだ。そう伝えると、大智は一人で並ぶと言い出した。いやいや、そんなことさせられるわけがない。それならキャリーケースと一緒に行列から見えるベンチに座らせておいた方が安心だ。
とりあえず牽制のために俺の上着を羽織らせて、ベンチで座らせた。行列から眺めていてもかなり目立つ。大智はいい加減自分がどれほど目立つ存在かをわかっていて欲しいものだが、自分のことを平凡だと思い込んでいるから困る。
ああ、大智は本当に綺麗だ。第三者目線で見ても目を惹く。ここが日本じゃなかったら通行の邪魔になってもいいからそばに居させるな。
「あ、すみません。最後尾はこちらですか?」
大智に夢中になっていると、申し訳なさそうに声をかけられた。振り向くと長身イケメンが立っていた。それもただの長身イケメンじゃない。何かものすごいオーラが漂っている。どう見ても一般人ではない貫禄がある。そんな人がこのアップルパイの甘い匂いに誘われたのかと思うとちょっと笑ってしまう。
「ああ、はい。そうですよ」
「ありがとうございます。よかった、この分なら買えそうですね」
この行列に並んでいるのはほぼ女性。二人ほどいる男性は女性の付き添いのようで男だけで並んでいるのは俺とこの人だけ。
「アップルパイ、お好きなんですか?」
「今朝、ニュースを見て恋人が美味しそうと呟いていたのでこっそりプレゼントしようと思って買いに来たんです」
纏っているオーラが一気に和らぐのを感じる。よほど溺愛しているんだろうな。
「ああ、そういうことですか。私も似たようなものです」
「そうなんですか?」
「ええ、タクシー乗り場に向かう途中で可愛い恋人がこの焼きたての匂いに誘われまして……」
「ああ、なるほど」
きっと彼も、俺の溺愛オーラを感じているだろう。なんだか仲間意識のようなものを感じながら、彼と話をしているうちにもう俺たちの順番がやってきた。
三個まで買えるらしいが、少し大きめのアップルパイだから一つでいいか。
俺が一箱買うと、彼も一箱買っていた。このアップルパイを愛しい恋人と二人で食べるんだろう。それにしてもニュースを見て恋人がつぶやいただけでわざわざ成田まで買いに来るとは本当にすごい。
焼きたての香ばしい匂いが漂ってきて、大智の喜ぶ顔が早く見たいとそちらに視線を向けると、大智が警察官二人と向き合って話をしているのが見える。
「どうかしましたか?」
俺の表情に気づいたのか、彼が声をかけてきた。
「すみません、私の恋人が警官に声をかけられているので……」
それだけ告げて彼をその場に置き去りにして、大智の元に駆け寄った。
「大智、何かあったんですか?」
「透也っ!」
不安でたまらないと言った表情で、俺に助けを求めるように名前を呼ぶ。
「俺、30だって言ってるのに信じてくれなくて……っ」
「ああ、なるほど。そういうことですか」
チラリと警官二人に目を向けると、俺を訝しんだ目で見ながら、
「あなたはご家族の方ですか? この子とどういう関係ですか?」
と聞いてくる。
「彼は私の大事なパートナーですし、彼はこの子と呼ばれるような未成年ではなく、れっきとした大人ですよ」
「パートナー? あんた、この子はどう見たって未成年でしょう? 未成年の男の子相手に何言ってんの。もしかして家出少年を連れ去ろうとしてるんじゃないだろうね?」
「はぁ? いい加減にしてください! ほら、パスポートです」
俺は警官の態度に苛立ちながらも持っていた大智のパスポートを取り出し、警官たちに見せた。
彼らはパスポートの写真と大智を何度も見比べて、
「本当に、30……!!」
と呟いていたが、今度は
「子どもみたいな紛らわしい格好している方が悪い」
と言い出した。
あまりの言い草に腹が立って言い返そうとしたら、俺の後ろで様子を見ていたらしいさっきの長身イケメンが、
「お前たち、なんて物言いだ! 間違えて迷惑かけたんだから、まずは謝罪だろう!」
と大声で怒鳴った。
「ひぃ……っ、ま、真壁、警視正っ!」
警視正? この人、警察官僚だったのか……。どおりであの貫禄。
「申し訳ありません、私の部下がご迷惑をおかけして失礼しました」
「いえ、わかっていただければいいんですが、先ほどの態度は少し改善していただいた方がいいですね」
「はい。それはもう厳しく指導いたします。後であらためてお詫びいたしますので、お名刺いただけますか?」
警視正という立場の人間にここまで謝ってもらえればもう問題はないが、また同じようなことがあっても困るからな。
俺は持っていた名刺入れから一枚引き抜いて彼に渡した。
「――っ、ベルンシュトルフホールディングスの副社長……っ、これは大変失礼いたしました」
「真壁警視正、彼らの指導、よろしくお願いしますね」
「は、はい」
申し訳なさそうに頭を下げる彼にそっと
「アップルパイ、愛しい恋人さんに早く食べさせてあげてくださいね」
と声をかけ、
「大智、行きましょうか」
と抱き寄せながら立たせて、キャリーケースをひいて急いでその場を立ち去った。
タクシー乗り場に向かいながら
「あの人、知り合いだったのか?」
と尋ねられ、たまたま列に一緒に並んでいただけだと告げた。
「アップルパイを買って大智を見たら警官二人と話しているからびっくりしましたよ」
「俺だって急に声かけられて、家出少年と間違われてどうしていいか困ってたんだよ」
「ふふっ。大智が家出少年……」
「もう30なのに、未成年とかありえないだろう。アメリカならまだしも日本だぞ」
「それくらい、大智が可愛いってことですよ」
「可愛いっていうな!」
そんなふうに拗ねるのも可愛くてたまらないのに。ああ、もう俺のパートナーが可愛すぎて困る。
* * *
真壁の肩書を警視長から警視正に変更しました。
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