109 / 137
番外編
千鶴たちとの対面 5
<side大智>
長瀬さんの店で、俺たちの好きなあのブレンドコーヒーを淹れてもらう。
透也が淹れてくれるコーヒーはもちろん最高に美味しいけれど、やっぱり目の前で調合し、挽きたての豆で淹れるコーヒーは格別。しかもそれが妹の旦那だというのだから思いもひとしおだ。
あれほど辛い思いをした千鶴がこんなにも笑顔でいられるのは、心から愛し支えてくれる存在がいるからこそだ。
本当に長瀬さんに出会えてよかったと思う。
そんな感慨深い気持ちでコーヒーを飲んでいると、千鶴の飲んでいるものが気になった。
オリジナルブレンドはその人にピッタリ合うものを作っていて、その好みがぴったり同じな人が運命の相手だと聞いていた。俺が透也のために作られたオリジナルブレンドが好みだったように、千鶴もまた長瀬さんのためのオリジナルブレンドを気に入った。
でも本当にそんなにも違うんだろうか? それがずっと気になっていた。
元々コーヒーが得意ではない千鶴が美味しそうに飲むくらいだから味は間違いないのはわかっているけれど、俺の飲んでいるものとそんなに違うのか?
そんな疑問が湧き上がると確かめずにはいられなくて、千鶴が飲んでいるものを一口もらうことにした。
千鶴は喜んでカップを交換し、千鶴もまた興味深そうに俺のコーヒーに口をつけた。
香りは悪くない。いや、いい香りだと感じる。でも、一口飲んでわかった。コレジャナイ、と。
本当に運命の味だったんだなと確認できて満足していると、透也と長瀬さんが俺たちに驚きの表情を向けていたことに気がついた。
どうやら俺たちがカップを交換して飲み合っていたことに驚いたらしい。
兄妹だし、家族だし特に問題はないだろうと思ったけれど、自分の家の常識が他の家で非常識となる場合はよくある。
透也にもお兄さんがいるが、もしかしたら一口ちょうだいなんてことはしない家なのかもしれない。
まぁ、考えてみたら大会社の経営一族だ。俺たちの常識なんて会わないで当然なのだろう。
透也だけでなく長瀬さんも驚いているところを見ると、これが常識ではないのかもしれないし、今日それがわかっただけでもよかった。これから気をつけると言ったけれど、気にしないでいいと返された。
本気で嫌そうならやめようと思ったけれど、そう言ってくれるならいいのかな。
安心して、コーヒーを飲みながら、お土産に買ってきたアップルパイを頬張っていると、千鶴にどうして機嫌が悪かったのかと尋ねられた。
最初に聞かれた以降、何も言ってこなかったからもう聞いてこないかと思ったけど、やっぱり気になっていたのか。
俺だって、普段ならあれくらい我慢できた。でも空港に引き続き電車でもあんなことを言われて、透也の隣が不釣り合いだと言われているみたいでショックだった。透也と初めて出会った時に、大学生に間違えられたからソレからは俺なりに年相応に見られるように気を付けていたはずだったのに……今度は未成年、しかも高校生に間違われたなんて……流石に我慢できなかった。
妹に知られたくなかったけど、言わなければずっと聞いてくるのがわかっているから、仕方なく理由を告げた。
高校生に間違われた、そう言った途端、千鶴だけでなく長瀬さんまでが固まっていた。
「えっ? お兄ちゃんが、高校生に、ってこと?」
「ああ。失礼だよな。空港では警官に家出少年に間違われて危うく補導されそうになってさ。こっちに来る電車の中では女子高生に同級生だと間違われて、透也と社会人と高校生のカップルだと勘違いされて、透也が犯罪者みたいに思われてさ。いい迷惑だよ。ちゃんと見たら高校生に見えるなんてありえないだろう?」
お兄ちゃんが、高校生? 無理無理! もうアラサーだよ。それは流石にありえないよ。
千鶴はそう言って笑い飛ばすと思っていた。でも、俺の予想は大きく外れてしまったようだ。
「ああ……それは、仕方ないね」
「はっ? なんで?」
「だって、ねぇ……理人さん」
千鶴は困ったように長瀬さんに視線を向けると、長瀬さんも困ったように頷いていた。
「大智さんは、その……すごく可愛らしいので、私服だと高校生に見られてもおかしくないと言いますか……。スーツでもおそらく透也さんの後輩に見られるかと……」
「えっ? こう、はい?」
嘘だろ……。それは流石に俺を揶揄ってると思ったけど、長瀬さんも千鶴も本気の表情をしている。
俺ってそんなに若く見えるわけ? しかも、日本で?
突きつけられた現実にがっかりしていると、
「わ、私もよく大学生くらいに見られるし、お兄ちゃんと同じだよ。若く見られていいじゃない! ねっ」
と千鶴が慰めてくれる。
そりゃあ千鶴は長瀬さんより若く見られた方が嬉しいだろうけど、俺は同じ男だし若く見られても嬉しくはない。
しかもそっちは大学生。俺は高校生だぞ! せめて大人に間違われたい……。
でも千鶴や長瀬さんまでそう言ってくるなら、本当にそんな見た目なんだろう。
なんとかできるならそうしたいけどな……。はぁーーっ。もうため息しか出ない。
長瀬さんの店で、俺たちの好きなあのブレンドコーヒーを淹れてもらう。
透也が淹れてくれるコーヒーはもちろん最高に美味しいけれど、やっぱり目の前で調合し、挽きたての豆で淹れるコーヒーは格別。しかもそれが妹の旦那だというのだから思いもひとしおだ。
あれほど辛い思いをした千鶴がこんなにも笑顔でいられるのは、心から愛し支えてくれる存在がいるからこそだ。
本当に長瀬さんに出会えてよかったと思う。
そんな感慨深い気持ちでコーヒーを飲んでいると、千鶴の飲んでいるものが気になった。
オリジナルブレンドはその人にピッタリ合うものを作っていて、その好みがぴったり同じな人が運命の相手だと聞いていた。俺が透也のために作られたオリジナルブレンドが好みだったように、千鶴もまた長瀬さんのためのオリジナルブレンドを気に入った。
でも本当にそんなにも違うんだろうか? それがずっと気になっていた。
元々コーヒーが得意ではない千鶴が美味しそうに飲むくらいだから味は間違いないのはわかっているけれど、俺の飲んでいるものとそんなに違うのか?
そんな疑問が湧き上がると確かめずにはいられなくて、千鶴が飲んでいるものを一口もらうことにした。
千鶴は喜んでカップを交換し、千鶴もまた興味深そうに俺のコーヒーに口をつけた。
香りは悪くない。いや、いい香りだと感じる。でも、一口飲んでわかった。コレジャナイ、と。
本当に運命の味だったんだなと確認できて満足していると、透也と長瀬さんが俺たちに驚きの表情を向けていたことに気がついた。
どうやら俺たちがカップを交換して飲み合っていたことに驚いたらしい。
兄妹だし、家族だし特に問題はないだろうと思ったけれど、自分の家の常識が他の家で非常識となる場合はよくある。
透也にもお兄さんがいるが、もしかしたら一口ちょうだいなんてことはしない家なのかもしれない。
まぁ、考えてみたら大会社の経営一族だ。俺たちの常識なんて会わないで当然なのだろう。
透也だけでなく長瀬さんも驚いているところを見ると、これが常識ではないのかもしれないし、今日それがわかっただけでもよかった。これから気をつけると言ったけれど、気にしないでいいと返された。
本気で嫌そうならやめようと思ったけれど、そう言ってくれるならいいのかな。
安心して、コーヒーを飲みながら、お土産に買ってきたアップルパイを頬張っていると、千鶴にどうして機嫌が悪かったのかと尋ねられた。
最初に聞かれた以降、何も言ってこなかったからもう聞いてこないかと思ったけど、やっぱり気になっていたのか。
俺だって、普段ならあれくらい我慢できた。でも空港に引き続き電車でもあんなことを言われて、透也の隣が不釣り合いだと言われているみたいでショックだった。透也と初めて出会った時に、大学生に間違えられたからソレからは俺なりに年相応に見られるように気を付けていたはずだったのに……今度は未成年、しかも高校生に間違われたなんて……流石に我慢できなかった。
妹に知られたくなかったけど、言わなければずっと聞いてくるのがわかっているから、仕方なく理由を告げた。
高校生に間違われた、そう言った途端、千鶴だけでなく長瀬さんまでが固まっていた。
「えっ? お兄ちゃんが、高校生に、ってこと?」
「ああ。失礼だよな。空港では警官に家出少年に間違われて危うく補導されそうになってさ。こっちに来る電車の中では女子高生に同級生だと間違われて、透也と社会人と高校生のカップルだと勘違いされて、透也が犯罪者みたいに思われてさ。いい迷惑だよ。ちゃんと見たら高校生に見えるなんてありえないだろう?」
お兄ちゃんが、高校生? 無理無理! もうアラサーだよ。それは流石にありえないよ。
千鶴はそう言って笑い飛ばすと思っていた。でも、俺の予想は大きく外れてしまったようだ。
「ああ……それは、仕方ないね」
「はっ? なんで?」
「だって、ねぇ……理人さん」
千鶴は困ったように長瀬さんに視線を向けると、長瀬さんも困ったように頷いていた。
「大智さんは、その……すごく可愛らしいので、私服だと高校生に見られてもおかしくないと言いますか……。スーツでもおそらく透也さんの後輩に見られるかと……」
「えっ? こう、はい?」
嘘だろ……。それは流石に俺を揶揄ってると思ったけど、長瀬さんも千鶴も本気の表情をしている。
俺ってそんなに若く見えるわけ? しかも、日本で?
突きつけられた現実にがっかりしていると、
「わ、私もよく大学生くらいに見られるし、お兄ちゃんと同じだよ。若く見られていいじゃない! ねっ」
と千鶴が慰めてくれる。
そりゃあ千鶴は長瀬さんより若く見られた方が嬉しいだろうけど、俺は同じ男だし若く見られても嬉しくはない。
しかもそっちは大学生。俺は高校生だぞ! せめて大人に間違われたい……。
でも千鶴や長瀬さんまでそう言ってくるなら、本当にそんな見た目なんだろう。
なんとかできるならそうしたいけどな……。はぁーーっ。もうため息しか出ない。
あなたにおすすめの小説
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。