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番外編
千鶴たちとの対面 7
「お兄ちゃんでしょ」
「うそっ、だって……」
鏡に映るのはどう見たって女性。しかも結構綺麗だ。自分の顔より確かに大人っぽいかもしれない。
「これなら、どう見ても高校生には見えないよ」
「確かに……そう、かも」
「だから、私がお兄ちゃんよりも上に見えるのはメイクのおかげだってわかった?」
「わかった、かも……」
千鶴と会話をしながらも、俺は鏡に映る自分の姿が信じられないでいた。
「何? メイク、気に入っちゃった?」
「えっ? いや、そうじゃなくて……これなら、日本でも透也と並んで歩いてもおかしな目で見られることはないんだろうなって思っただけだよ」
L.Aではもう隠すこともなく歩いていて、周りから好奇な目で見られることも全然ないっていうか、むしろ好意的な目で見てもらえてると思うけど、やっぱり日本に来てからはあまりベタベタしすぎるのは良くないんだろうなって思った。
いや、男女のカップルも人前でイチャイチャベタベタすることはないんだろうけど。さっき、駅で千鶴と長瀬さんが自然に腕を絡めて歩いているのはちょっと羨ましいなって思った。
「ねぇ、お兄ちゃん。せっかくだからメイクだけじゃなくて完璧に女装しちゃう?」
「えっ? 完璧ってどういうことだ?」
「だから、私の持ってるウイッグとか洋服とか着て女の子の格好しちゃおうよってこと」
「そ、それは流石にやばくないか? 透也も引くだろうし……」
「大丈夫だって。こんなに綺麗なんだよ。ね、こんな機会ないよ。普段はアメリカにいるんだし、誰も知っている人には会わないからいいじゃない。ね、そうしよう」
こうやって言い合いになった時に、言葉で千鶴に勝てたことは一度もない。
結局俺は押し切られて試してみることになった。
でも、本気で嫌がらなかったのは、俺の中にもちょっとくらいやってみたい気持ちがあったのかもしれない。言葉にはしないけど。
「それで、ウイッグってどんなのがあるんだ? っていうか、そんなの持ってたんだな」
「まぁね。ずっと髪を長くしていると髪を切ってみたいなとか思うこともあるけど、社会人だといきなりイメチェンは難しいでしょう? 失恋したのかとかいろいろ詮索してくる人もいるし」
「まだそんなことを聞いてくる奴がいるのか? うちならすぐにセクハラでコンプラ違反だぞ」
「うん。ベルンシュトルフはそういうところの教育はしっかりしてそうだもんね」
「今は特に透也が目を光らせてるからな。透也は本当にすごいんだよ」
透也のおかげで今までよりもさらに働きやすくなったという声が上がっている。本当に透也は人の上に立つ立場が似合ってる。
「お兄ちゃんが私相手にも惚気るなんてね」
「そんなこと……っ」
「はいはい。ごちそうさま。それでどのウイッグにしようか?」
仕事を辞めてしまうまではバリキャリだった千鶴はメイクや髪型も結構気を使っていたようで、いろんな長さのウイッグを持っていたから悩んでしまうけれど、やっぱりあんまり長いのは慣れないというと、顎の長さくらいのウイッグを付けさせてくれた。
「このショートボブなら今より少し長いくらいだし。お兄ちゃん、小顔だから似合うよ」
「あ、これ。自然でいいかも」
「でしょう? じゃあ、これにしよう。洋服はどうする?」
「これじゃダメか? ボーイッシュな格好してる女の子もいるだろう?」
「ボーイッシュって言ってもちゃんと女性物着てるんだよ。これだと男性の服着てるって丸わかりだし。せっかくなら洋服も変えた方がいいよ」
そんなにみただけでわかる物なのか? それもよくわからない。
「こっちにあるのは私が買った服だから好きなのを選んでいいよ」
「あっちにたくさんかかっているのはなんだ?」
「あれは全部理人さんが買ってくれた物だから、いくらお兄ちゃんでも理人さんが嫌がるかなって……ほら、さっきもコーヒー飲み合ってたらびっくりしてたでしょう?」
「あー。そうだな、やめておいた方がいいな。じゃあ、千鶴が選んでくれたらいいよ。あ、でもサイズ……流石に千鶴のじゃ小さいんじゃないか?」
「大丈夫。気にならないものを選ぶから」
千鶴はなぜか楽しそうに洋服を選び始めた。
「うーん、やっぱりこれかな。よし、これに決定! お兄ちゃん、決まったよ」
笑顔の千鶴が見せてくれたのは、緑っぽい黄色のノースリーブのロングワンピースと丈の短いベージュのカーディガンの組み合わせ。色味は爽やかで可愛いと思う。俺に似合うかどうかは別だけど。
「このライムイエローのワンピース、絶対にお兄ちゃんに似合うと思うんだよね。じゃあ、着替えてみようか」
手渡されてドキドキしつつも、俺は千鶴が選んでくれた服を着ることにした。
「うそっ、だって……」
鏡に映るのはどう見たって女性。しかも結構綺麗だ。自分の顔より確かに大人っぽいかもしれない。
「これなら、どう見ても高校生には見えないよ」
「確かに……そう、かも」
「だから、私がお兄ちゃんよりも上に見えるのはメイクのおかげだってわかった?」
「わかった、かも……」
千鶴と会話をしながらも、俺は鏡に映る自分の姿が信じられないでいた。
「何? メイク、気に入っちゃった?」
「えっ? いや、そうじゃなくて……これなら、日本でも透也と並んで歩いてもおかしな目で見られることはないんだろうなって思っただけだよ」
L.Aではもう隠すこともなく歩いていて、周りから好奇な目で見られることも全然ないっていうか、むしろ好意的な目で見てもらえてると思うけど、やっぱり日本に来てからはあまりベタベタしすぎるのは良くないんだろうなって思った。
いや、男女のカップルも人前でイチャイチャベタベタすることはないんだろうけど。さっき、駅で千鶴と長瀬さんが自然に腕を絡めて歩いているのはちょっと羨ましいなって思った。
「ねぇ、お兄ちゃん。せっかくだからメイクだけじゃなくて完璧に女装しちゃう?」
「えっ? 完璧ってどういうことだ?」
「だから、私の持ってるウイッグとか洋服とか着て女の子の格好しちゃおうよってこと」
「そ、それは流石にやばくないか? 透也も引くだろうし……」
「大丈夫だって。こんなに綺麗なんだよ。ね、こんな機会ないよ。普段はアメリカにいるんだし、誰も知っている人には会わないからいいじゃない。ね、そうしよう」
こうやって言い合いになった時に、言葉で千鶴に勝てたことは一度もない。
結局俺は押し切られて試してみることになった。
でも、本気で嫌がらなかったのは、俺の中にもちょっとくらいやってみたい気持ちがあったのかもしれない。言葉にはしないけど。
「それで、ウイッグってどんなのがあるんだ? っていうか、そんなの持ってたんだな」
「まぁね。ずっと髪を長くしていると髪を切ってみたいなとか思うこともあるけど、社会人だといきなりイメチェンは難しいでしょう? 失恋したのかとかいろいろ詮索してくる人もいるし」
「まだそんなことを聞いてくる奴がいるのか? うちならすぐにセクハラでコンプラ違反だぞ」
「うん。ベルンシュトルフはそういうところの教育はしっかりしてそうだもんね」
「今は特に透也が目を光らせてるからな。透也は本当にすごいんだよ」
透也のおかげで今までよりもさらに働きやすくなったという声が上がっている。本当に透也は人の上に立つ立場が似合ってる。
「お兄ちゃんが私相手にも惚気るなんてね」
「そんなこと……っ」
「はいはい。ごちそうさま。それでどのウイッグにしようか?」
仕事を辞めてしまうまではバリキャリだった千鶴はメイクや髪型も結構気を使っていたようで、いろんな長さのウイッグを持っていたから悩んでしまうけれど、やっぱりあんまり長いのは慣れないというと、顎の長さくらいのウイッグを付けさせてくれた。
「このショートボブなら今より少し長いくらいだし。お兄ちゃん、小顔だから似合うよ」
「あ、これ。自然でいいかも」
「でしょう? じゃあ、これにしよう。洋服はどうする?」
「これじゃダメか? ボーイッシュな格好してる女の子もいるだろう?」
「ボーイッシュって言ってもちゃんと女性物着てるんだよ。これだと男性の服着てるって丸わかりだし。せっかくなら洋服も変えた方がいいよ」
そんなにみただけでわかる物なのか? それもよくわからない。
「こっちにあるのは私が買った服だから好きなのを選んでいいよ」
「あっちにたくさんかかっているのはなんだ?」
「あれは全部理人さんが買ってくれた物だから、いくらお兄ちゃんでも理人さんが嫌がるかなって……ほら、さっきもコーヒー飲み合ってたらびっくりしてたでしょう?」
「あー。そうだな、やめておいた方がいいな。じゃあ、千鶴が選んでくれたらいいよ。あ、でもサイズ……流石に千鶴のじゃ小さいんじゃないか?」
「大丈夫。気にならないものを選ぶから」
千鶴はなぜか楽しそうに洋服を選び始めた。
「うーん、やっぱりこれかな。よし、これに決定! お兄ちゃん、決まったよ」
笑顔の千鶴が見せてくれたのは、緑っぽい黄色のノースリーブのロングワンピースと丈の短いベージュのカーディガンの組み合わせ。色味は爽やかで可愛いと思う。俺に似合うかどうかは別だけど。
「このライムイエローのワンピース、絶対にお兄ちゃんに似合うと思うんだよね。じゃあ、着替えてみようか」
手渡されてドキドキしつつも、俺は千鶴が選んでくれた服を着ることにした。
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