年下イケメンに甘やかされすぎて困ってます

波木真帆

文字の大きさ
121 / 137
番外編

夢か現実か 3

「主任?」

「えっ、あ、そうだな。いいよ」

「本当ですか? やった!」

悩んでいたのに、いいという言葉がつい出てしまった。

だって、大学生の透也に会ってみたいと思ってしまったんだ。
それが一番の理由かもしれない。

それにいますぐに会うとは限らない。
その時には自分がいた頃に戻っているのかも。

いや、でもちょっと待った。そうなったら二十五歳の俺が透也と会うってことで……。
自分がゲイだと自覚している俺は透也を気に入っても、ノンケだとわかっている透也には心を開かないかもしれない。
せっかく出会ってもそこから恋愛に発展しなければそこで終わり……。

そんな対面をした数年後に、アメリカで偶然会うことがあってもあんなふうに仲良くなれないかもしれない。それは困る。

「あっ、や――」

やっぱりやめとこうか。
そう言おうとしたけれど、宇佐美くんはすでにスマホを手に透也にメッセージを送ってしまっていた。

「主任! みてください! 速攻で返事が返ってきましたよ」

宇佐美くんが見せてくれたスマホの画面には

<やった! じゃあ早速今日の終業後に会社近くのカフェで待ってるよ! 敦己、サンキューな!>

と文章からでもわかるほど嬉しそうな返事が書いてあった。

こんなに喜んでくれているのに今更やめとこうとか言えるはずない。
でも本当に会ってしまって大丈夫なのか?

ここは未来のことも考えてどういう対応をしたらいいんだろう……。

浮かれる宇佐美くんの横で俺は透也と会うことで頭がいっぱいになっていた。

そこからどう過ごしたのかもよく覚えていない。
大事な会議や取引先との約束が入っていなかっただけ幸いだった。

「主任! 仕事終わりましたか?」

「えっ、ああ、うん。大丈夫」

一瞬まだ仕事が……と言おうと思ったけれど、優秀な宇佐美くんが手伝ってくれるなんていい出したら取り立てて急ぎの仕事もないことがすぐにバレてしまう。

結局断ることもできず、宇佐美くんと共に待ち合わせのカフェに向かった。

「従兄弟、透也っていうんですけど、もうカフェに着いているみたいです」

「そ、そうか」

なんだかやけに緊張する。
いつもは可愛いなんて言ってくれる透也も、大学生から見たら二十五歳なんてかなり年上に見えるだろう。
どんな印象を持たれるのか不安で仕方がない。

足取りが重くなるが、宇佐美くんに変に思われても困る。

気が進まないが、カフェに到着してしまった。

「透也はどこかな……あっ! あそこだ」

宇佐美くんの言葉にドキドキしながら視線を向けると、透也の姿はない。
代わりに女性たちが集まっているテーブルが見える。

その中に座っている人物がちらちら見えるくらいだ。

「透也と待ち合わせするといつもあんな感じなんですぐにわかるんですよ」

大学生でもあのかっこよさは変わらないってことか……。
でも女性に囲まれている透也の姿は昔であってもあんまり見たいものではないな。

もしかしたらその中の一人といい感じになってたりするかもしれないし……。

近づきたくない。
でもスタスタと近づいていく宇佐美くんを放っておくわけにもいかなくて、俺も少しだけ離れて後に続いた。

「ごめん、待たせた?」

「敦己。いや、大丈夫」

周りにいた女性は待ち合わせ相手が男だということにホッとしたのか、笑顔を向けているのが見える。

「ねぇ、お友達も一緒に食事に行こう。お姉さんが奢ってあげる」

「何言ってんの、おばさん! 私たちみたいな若い子と一緒に遊びたいに決まってるでしょ。ねぇ。一緒にカラオケ行こうよ」

すごいな、宇佐美くんもいるから余計に誘われてる。
年上にも年下にもモテるってさすがだな。

そんな中、俺……入りにくいな。

どうしようかと悩んでいると、座っていた透也が声を上げた。

「悪いけど、どっちの誘いにも乗らない。大切な予定が入ってるんで邪魔しないでもらえますか?」

キッパリと言い切ると、周りにいた女性たちは「何よ! せっかく誘ってあげたのに」と悪態をつきながらも離れていく。さーっと蜘蛛の子を散らすように女性たちが去った瞬間、座っていた透也と目が合ってしまった。

「あっ……」

俺が知っている透也よりやっぱり若い。
でも、どうしてだろう。
同じ目で俺を見てる、気がする。

どうしよう……顔が熱くなってきた。

見つめるだけでその場から動けずにいると、さっと立ち上がった透也がこっちにやってくる。
いつもの笑顔のままで……。それを見てどうしようもなく嬉しくなっている自分がいた。
感想 137

あなたにおすすめの小説

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。