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番外編
夢か現実か 6
ちょっと透也視点でも書きたくなっちゃいましたのでもう少し長くなりそうです。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side透也>
敦己の家は両親が海外生活をしていることもあってほとんど兄弟のように育てられた。
祖父が兄弟同士で正式には再従兄弟という関係だけれど、再従兄弟と言われてもピンとこない人が多く、更なる説明を求められるのが面倒くさいので従兄弟ということにしている。
その敦己はデカくて逞しい俺たち兄弟とは違って、おばさん譲りの綺麗な顔立ちと守ってあげたくなるような華奢な身体付きのおかげで祖父を含めて一族から溺愛されていた。そのことで俺が反発することもなく、敦己の方が年上にも関わらず守ってあげていた覚えがある。
そんな敦己が大学卒業後の進路を決めるとき、祖父は自分の目の届くところにいて欲しいと言い出し、敦己の教育係にいい社員はいないかという話になった時、話題に出たのが杉山大智という社員だった。
ベルンシュトルフホールディングスで営業成績は常にトップクラス。
上司からも部下からも信頼は厚く、悪い話を一切聞かない。
その彼に惚れ込んで、祖父は大事な敦己をそこに就職させた。
最初こそコネ入社を嫌がっていた敦己だったが、杉山さんの下で働くようになってから会うたびに杉山さんの話をしてくる。ここがすごいだの、そこが優しいだの、褒める言葉しか出てこない。
いつしか俺は杉山さんに会いたいという思いでいっぱいになっていた。
でも流石に仕事終わりに大学生の従兄弟にあってほしいなんてことを敦己が上司に頼めるはずがない。
それなら俺が大学を卒業して、自分の力で杉山さんに会えるようになるまで頑張るだけだ。
そう思っていた。
けれど、その日は突然やってきた。
早めに大学に行って勉強をしていたとき、敦己からメッセージが入った。
<透也! 喜べ! 杉山主任が会ってくれるって! 今日の終業後の時間あたりにうちの会社近くまで来れるか?>
えっ……会える??
敦己のメッセージを脳が理解した瞬間、
「やったっ!!!!」
俺の大声が図書館中に響き渡った。
大きな咳払いの音が聞こえて、慌てて荷物を持って図書館から飛び出し、震える手で敦己に返事を送った。
そしてすぐに兄貴にも連絡を入れた。
ーなんだ、こんな時間に。
仕込みの時間だから機嫌が悪いのも無理はない。でもこれは兄貴にしか頼めない。
ー忙しい時間に悪い! あのさ、今日の夜、個室を一つ用意してほしいんだ。敦己と杉山さんと三人で食事することになった。
ー杉山さんって、敦己がいつも話してる教育係の?
ーああ、俺が会いたいって話をしてくれたみたい。快く引き受けてくれたんだ。
ーそうか、わかった。それなら任せておけ。俺のお任せでコース料理を出すから。
ーサンキュー。近くのカフェで待ち合わせてから行くから向かう前に連絡するよ。
電話を切ってからも俺は夢見心地だった。
どうして顔も知らない相手がこんなにも気になるのかわからない。
だが、今までに感じたことのない感情なのは確かだ。
夕方までの時間が数年にも思えるくらいに長く感じた。
まだ終業時間には早いけれど、待ちきれない。
早々とカフェに着き待っていると、次々に声がかけられる。
遊びに行こうだの、ラブホ行こうだの、鬱陶しくて仕方がない。
「約束すっぽかされたんじゃないの? 私が遊んであげるよ」
「結構です。俺が早く来すぎただけなんで構わないでください」
何度、こんなやり取りを交わしただろう。
それでも俺は杉山さんに会えることで頭がいっぱいになっていた。
それからもひっきりなしに声がかけられる中、ようやく敦己が顔を出した。
すると周りの女たちは俺の待ち合わせが男だと知って目の色を変え、さらに声をかけてきたが俺はキッパリと断りを入れた。こんなところを杉山さんに見られてチャラいやつだと思われたくない。
ようやく去っていった女たちの奥に、俺を見つめる人がいた。
「――っ!!!」
その目に見つめられた瞬間、全身を雷に貫かれたような衝撃に襲われて胸のドキドキが止まらなかった。
すぐに駆け寄りたいのに、なかなか足が進まない。
すると突然杉山さんの背後にいた男が、杉山さんに声をかけて顔を近づける。
その距離の近さに杉山さんの表情が青ざめていくのが目に見えてわかった。
これは危ない!
危険を察知した途端、さっきまで動かなかった足が杉山さんに向かって駆け出した。
そして、杉山さんの腕をとり、彼の身体を俺の腕の中に閉じ込めた。
言い寄ってきた男は腕を捻り上げてやったらしょぼい捨て台詞を行って出ていったからどうでもいい。
杉山さんは怯えてないだろうかと不安だった。
「大丈夫ですか?」
できるだけ怯えさせないように優しく声をかけた。
すると、杉山さんが俺の腕にギュッと抱きつき、身体を震わせながら俺を見上げた。
「あ、うん。迷惑かけちゃってごめん」
心の底からほっとしたような表情で見つめられてドクンと心臓が震えた。
と同時に、顔と下半身に熱がこもっていくのがわかる。
なんだ、この人……めちゃくちゃ可愛い!!
「んっ? 透也? どうした?」
あまりの可愛すぎて呆然としていると、この上なく自然に俺の名前を呼んでくる。
この状況は一体なんなんだ?
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side透也>
敦己の家は両親が海外生活をしていることもあってほとんど兄弟のように育てられた。
祖父が兄弟同士で正式には再従兄弟という関係だけれど、再従兄弟と言われてもピンとこない人が多く、更なる説明を求められるのが面倒くさいので従兄弟ということにしている。
その敦己はデカくて逞しい俺たち兄弟とは違って、おばさん譲りの綺麗な顔立ちと守ってあげたくなるような華奢な身体付きのおかげで祖父を含めて一族から溺愛されていた。そのことで俺が反発することもなく、敦己の方が年上にも関わらず守ってあげていた覚えがある。
そんな敦己が大学卒業後の進路を決めるとき、祖父は自分の目の届くところにいて欲しいと言い出し、敦己の教育係にいい社員はいないかという話になった時、話題に出たのが杉山大智という社員だった。
ベルンシュトルフホールディングスで営業成績は常にトップクラス。
上司からも部下からも信頼は厚く、悪い話を一切聞かない。
その彼に惚れ込んで、祖父は大事な敦己をそこに就職させた。
最初こそコネ入社を嫌がっていた敦己だったが、杉山さんの下で働くようになってから会うたびに杉山さんの話をしてくる。ここがすごいだの、そこが優しいだの、褒める言葉しか出てこない。
いつしか俺は杉山さんに会いたいという思いでいっぱいになっていた。
でも流石に仕事終わりに大学生の従兄弟にあってほしいなんてことを敦己が上司に頼めるはずがない。
それなら俺が大学を卒業して、自分の力で杉山さんに会えるようになるまで頑張るだけだ。
そう思っていた。
けれど、その日は突然やってきた。
早めに大学に行って勉強をしていたとき、敦己からメッセージが入った。
<透也! 喜べ! 杉山主任が会ってくれるって! 今日の終業後の時間あたりにうちの会社近くまで来れるか?>
えっ……会える??
敦己のメッセージを脳が理解した瞬間、
「やったっ!!!!」
俺の大声が図書館中に響き渡った。
大きな咳払いの音が聞こえて、慌てて荷物を持って図書館から飛び出し、震える手で敦己に返事を送った。
そしてすぐに兄貴にも連絡を入れた。
ーなんだ、こんな時間に。
仕込みの時間だから機嫌が悪いのも無理はない。でもこれは兄貴にしか頼めない。
ー忙しい時間に悪い! あのさ、今日の夜、個室を一つ用意してほしいんだ。敦己と杉山さんと三人で食事することになった。
ー杉山さんって、敦己がいつも話してる教育係の?
ーああ、俺が会いたいって話をしてくれたみたい。快く引き受けてくれたんだ。
ーそうか、わかった。それなら任せておけ。俺のお任せでコース料理を出すから。
ーサンキュー。近くのカフェで待ち合わせてから行くから向かう前に連絡するよ。
電話を切ってからも俺は夢見心地だった。
どうして顔も知らない相手がこんなにも気になるのかわからない。
だが、今までに感じたことのない感情なのは確かだ。
夕方までの時間が数年にも思えるくらいに長く感じた。
まだ終業時間には早いけれど、待ちきれない。
早々とカフェに着き待っていると、次々に声がかけられる。
遊びに行こうだの、ラブホ行こうだの、鬱陶しくて仕方がない。
「約束すっぽかされたんじゃないの? 私が遊んであげるよ」
「結構です。俺が早く来すぎただけなんで構わないでください」
何度、こんなやり取りを交わしただろう。
それでも俺は杉山さんに会えることで頭がいっぱいになっていた。
それからもひっきりなしに声がかけられる中、ようやく敦己が顔を出した。
すると周りの女たちは俺の待ち合わせが男だと知って目の色を変え、さらに声をかけてきたが俺はキッパリと断りを入れた。こんなところを杉山さんに見られてチャラいやつだと思われたくない。
ようやく去っていった女たちの奥に、俺を見つめる人がいた。
「――っ!!!」
その目に見つめられた瞬間、全身を雷に貫かれたような衝撃に襲われて胸のドキドキが止まらなかった。
すぐに駆け寄りたいのに、なかなか足が進まない。
すると突然杉山さんの背後にいた男が、杉山さんに声をかけて顔を近づける。
その距離の近さに杉山さんの表情が青ざめていくのが目に見えてわかった。
これは危ない!
危険を察知した途端、さっきまで動かなかった足が杉山さんに向かって駆け出した。
そして、杉山さんの腕をとり、彼の身体を俺の腕の中に閉じ込めた。
言い寄ってきた男は腕を捻り上げてやったらしょぼい捨て台詞を行って出ていったからどうでもいい。
杉山さんは怯えてないだろうかと不安だった。
「大丈夫ですか?」
できるだけ怯えさせないように優しく声をかけた。
すると、杉山さんが俺の腕にギュッと抱きつき、身体を震わせながら俺を見上げた。
「あ、うん。迷惑かけちゃってごめん」
心の底からほっとしたような表情で見つめられてドクンと心臓が震えた。
と同時に、顔と下半身に熱がこもっていくのがわかる。
なんだ、この人……めちゃくちゃ可愛い!!
「んっ? 透也? どうした?」
あまりの可愛すぎて呆然としていると、この上なく自然に俺の名前を呼んでくる。
この状況は一体なんなんだ?
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