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番外編
夢か現実か 7
可愛い杉山さんになんて答えていいのかわからずにいると、俺の後ろから敦己が声をかけてきた。
杉山さんに夢中になっていて気づいていなかったけれど、さっきの騒ぎもあってかなり目立っているみたいだ。
焦ってほんのり頬を赤らめている杉山さんが可愛すぎて、店内の客はみんな目を奪われているのがわかる。
これ以上可愛い杉山さんを見せたくない!
そんな独占欲が自分の中に湧き上がってくる。
すぐ近くに兄が働いている店があるからと言って急いで杉山さんの手を取って店の外に出た。
俺たちの後ろから敦己も出てきたのを確認して、二人で杉山さんを挟むように店への道のりを進んで行った。
その間、せっかく繋いだ手を離すのも嫌で俺は何食わぬ顔をして手を繋ぎ続けた。
小さくて柔らかな手が俺の手にピッタリとフィットする。
まるで俺と手を繋ぐために存在しているような気にさえなってくる。
ずっと繋いでいたい。
そんなことを思ったのは今まで生きてきて初めてだ。
店までがもっと遠ければいい……そうしたらずっと繋いでいられるのに。
そんなことを思っていたけれど、あっという間に兄の店に到着してしまった。
兄が板前の修行をしているこの店は老舗の日本料理店。
五つ星を獲得している店で、祖父がここの常連だったことから幼い時からよく連れてきてもらっていた。
この味に惚れ込んだこともあって、兄はここで修行をすることに決めたんだ。
俺たちからしたら来なれた店だけれど、杉山さんはもしかしたら初めてなのもしれない。
「うわっ、すごいな」
無意識に心の声が漏れていそうなその表情も可愛くて仕方がない。
中に入ると、スタッフの高遠さんが俺たちを出迎えてくれる。
彼は大学生のアルバイトでここのスタッフの中でも勤続年数はかなり短い方だが、いろいろな配慮に長けた優秀なスタッフだ。と同時に、兄の恋人でもあるため、今日は兄に頼んで俺たちの部屋の専属にしてもらっている。
ここのオーナーは常連客である祖父と旧知の仲でもあるから、敦己が一緒の場合には割と融通を利かせてくれるから助かっている。
案内された部屋に入り、敦己が杉山さんを上座に案内する。
俺はすぐに杉山さんの向かいに腰を下ろした。
隣に座れないのだから正面の席だけは確保しておきたい。
だけど、それが失敗だったと悟ったのはそれからすぐだった。
なぜか、杉山さんが俺の顔をじっと見つめてくるからだ。
しかもその目の奥が俺を求めているような気がして、身体が熱くなってくる。
これ以上見ちゃダメだと脳が警鐘を鳴らしているけれど、杉山さんから目が離せない。
どうしていいかわからずにいると、俺を見つめていた杉山さんがふっと頬を緩めた。
「――っ!!
その可愛らしい表情に一気に落ちてしまったのが自分でもよくわかった。
それを杉山さんはもちろん、隣に座っている敦己にも、俺たちが注文をするのを待っている高遠さんにも知られたくない。
俺は緊張に声を震わせながら杉山さんに声をかけた。
「あ、あの……俺、いや、私の顔に何かついてますか?」
俺を求めている目なんて俺の勘違いだと自分に言い聞かせようとそんな質問を投げかけると、少し焦った様子で敦己と従兄弟なのに似ていないから見てしまったと言う答えが返ってきた。
なんだ、そういうことだったか。
俺のことを求めていると感じたのはやっぱり俺の勘違いだったみたいだ。
恥ずかしい。
「嫌な気にさせてしまったなら申し訳ない」
いやいや、俺の勘違いで杉山さんに謝らせてしまって俺の方が申し訳ない。
なんとか挽回しようと思って、口を開いたが、
「あの、好きなだけ、見てくださって構いませんから」
そんなことを口走ってしまった。
「えっ、好きなだけ?」
杉山さんに笑顔で聞き返されてしまって、もう穴があったら入りたい気分だ。
恥ずかしくてたまらない。
すると俺の不甲斐ない様子を見た敦己と高遠さんに大笑いされてしまう。
だからつい自分の思いが溢れてしまった。
「仕方ないだろう。ずっと会いたかった人が目の前にいるんだから……っ」
俺にこんなことを言われて、気持ち悪がられるかもしれない。
そう思ったけれど、杉山さんは嫌悪感を見せるどころか、顔を赤くしてボソリと呟いた。
「あの、それってどういう意味で……」
確かにそう聞こえた気がしたけれど、敦己と高遠さんの声にかき消されてはっきりとは聞こえなかった。
でも杉山さんの俺を見る表情がなんともいいたげでそれだけが気になって仕方がなかった。
とりあえずビールを頼もうという話になり、ようやく話題が逸れた。
「料理はどうする?」
杉山さんから尋ねられて兄がすでに用意してくれることを話すと、
「そうか、祥也さんのお任せならどれを食べても美味しそうだな」
と納得したような言葉が返ってきた。
えっ? 杉山さんは兄を、というか兄の料理を知っている?
でもここは初めてきた様子だったのに。
一体どういうことなんだ?
気になってたまらなくて杉山さんに兄を知っているのかと尋ねると、
「あ、いや、えっと……宇佐美くんが話してたんだよ。君のことを聞いたときにお兄さんの話も聞いたんだったかな。ねぇ、宇佐美くん」
と急にしどろもどろになって敦己に声をかけた。
「あー、確かにそんな話、したかも……」
敦己はそう返したけれど、俺にはわかる。
敦己がそんな話をしていないことは。
敦己の表情を見ればそれは本当のことか、そうじゃないかくらいすぐにわかる。
なんせ子どもの時から一緒に過ごしている仲なんだから。
でもどうして杉山さんはすぐにバレることを誤魔化したんだろう?
どうにも気になることでいっぱいだ。
杉山さんに夢中になっていて気づいていなかったけれど、さっきの騒ぎもあってかなり目立っているみたいだ。
焦ってほんのり頬を赤らめている杉山さんが可愛すぎて、店内の客はみんな目を奪われているのがわかる。
これ以上可愛い杉山さんを見せたくない!
そんな独占欲が自分の中に湧き上がってくる。
すぐ近くに兄が働いている店があるからと言って急いで杉山さんの手を取って店の外に出た。
俺たちの後ろから敦己も出てきたのを確認して、二人で杉山さんを挟むように店への道のりを進んで行った。
その間、せっかく繋いだ手を離すのも嫌で俺は何食わぬ顔をして手を繋ぎ続けた。
小さくて柔らかな手が俺の手にピッタリとフィットする。
まるで俺と手を繋ぐために存在しているような気にさえなってくる。
ずっと繋いでいたい。
そんなことを思ったのは今まで生きてきて初めてだ。
店までがもっと遠ければいい……そうしたらずっと繋いでいられるのに。
そんなことを思っていたけれど、あっという間に兄の店に到着してしまった。
兄が板前の修行をしているこの店は老舗の日本料理店。
五つ星を獲得している店で、祖父がここの常連だったことから幼い時からよく連れてきてもらっていた。
この味に惚れ込んだこともあって、兄はここで修行をすることに決めたんだ。
俺たちからしたら来なれた店だけれど、杉山さんはもしかしたら初めてなのもしれない。
「うわっ、すごいな」
無意識に心の声が漏れていそうなその表情も可愛くて仕方がない。
中に入ると、スタッフの高遠さんが俺たちを出迎えてくれる。
彼は大学生のアルバイトでここのスタッフの中でも勤続年数はかなり短い方だが、いろいろな配慮に長けた優秀なスタッフだ。と同時に、兄の恋人でもあるため、今日は兄に頼んで俺たちの部屋の専属にしてもらっている。
ここのオーナーは常連客である祖父と旧知の仲でもあるから、敦己が一緒の場合には割と融通を利かせてくれるから助かっている。
案内された部屋に入り、敦己が杉山さんを上座に案内する。
俺はすぐに杉山さんの向かいに腰を下ろした。
隣に座れないのだから正面の席だけは確保しておきたい。
だけど、それが失敗だったと悟ったのはそれからすぐだった。
なぜか、杉山さんが俺の顔をじっと見つめてくるからだ。
しかもその目の奥が俺を求めているような気がして、身体が熱くなってくる。
これ以上見ちゃダメだと脳が警鐘を鳴らしているけれど、杉山さんから目が離せない。
どうしていいかわからずにいると、俺を見つめていた杉山さんがふっと頬を緩めた。
「――っ!!
その可愛らしい表情に一気に落ちてしまったのが自分でもよくわかった。
それを杉山さんはもちろん、隣に座っている敦己にも、俺たちが注文をするのを待っている高遠さんにも知られたくない。
俺は緊張に声を震わせながら杉山さんに声をかけた。
「あ、あの……俺、いや、私の顔に何かついてますか?」
俺を求めている目なんて俺の勘違いだと自分に言い聞かせようとそんな質問を投げかけると、少し焦った様子で敦己と従兄弟なのに似ていないから見てしまったと言う答えが返ってきた。
なんだ、そういうことだったか。
俺のことを求めていると感じたのはやっぱり俺の勘違いだったみたいだ。
恥ずかしい。
「嫌な気にさせてしまったなら申し訳ない」
いやいや、俺の勘違いで杉山さんに謝らせてしまって俺の方が申し訳ない。
なんとか挽回しようと思って、口を開いたが、
「あの、好きなだけ、見てくださって構いませんから」
そんなことを口走ってしまった。
「えっ、好きなだけ?」
杉山さんに笑顔で聞き返されてしまって、もう穴があったら入りたい気分だ。
恥ずかしくてたまらない。
すると俺の不甲斐ない様子を見た敦己と高遠さんに大笑いされてしまう。
だからつい自分の思いが溢れてしまった。
「仕方ないだろう。ずっと会いたかった人が目の前にいるんだから……っ」
俺にこんなことを言われて、気持ち悪がられるかもしれない。
そう思ったけれど、杉山さんは嫌悪感を見せるどころか、顔を赤くしてボソリと呟いた。
「あの、それってどういう意味で……」
確かにそう聞こえた気がしたけれど、敦己と高遠さんの声にかき消されてはっきりとは聞こえなかった。
でも杉山さんの俺を見る表情がなんともいいたげでそれだけが気になって仕方がなかった。
とりあえずビールを頼もうという話になり、ようやく話題が逸れた。
「料理はどうする?」
杉山さんから尋ねられて兄がすでに用意してくれることを話すと、
「そうか、祥也さんのお任せならどれを食べても美味しそうだな」
と納得したような言葉が返ってきた。
えっ? 杉山さんは兄を、というか兄の料理を知っている?
でもここは初めてきた様子だったのに。
一体どういうことなんだ?
気になってたまらなくて杉山さんに兄を知っているのかと尋ねると、
「あ、いや、えっと……宇佐美くんが話してたんだよ。君のことを聞いたときにお兄さんの話も聞いたんだったかな。ねぇ、宇佐美くん」
と急にしどろもどろになって敦己に声をかけた。
「あー、確かにそんな話、したかも……」
敦己はそう返したけれど、俺にはわかる。
敦己がそんな話をしていないことは。
敦己の表情を見ればそれは本当のことか、そうじゃないかくらいすぐにわかる。
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でもどうして杉山さんはすぐにバレることを誤魔化したんだろう?
どうにも気になることでいっぱいだ。
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