ひとりぼっちのぼくが異世界で公爵さまに溺愛されています

波木真帆

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第四章 (王城 過去編)

閑話   ブルーノと騎士たち

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困ったことになった。
どうしたらいいのだ……。
とにかくアンドリューさまとフレデリックさまにすぐにご報告しなければ。

私は急いでお2人がいるであろう王城執務室へと向かった。

その途中で

「ブルーノさま」

と声をかけられ、顔を向けるとそこには王国騎士団団長のヒューバートさまがいらっしゃった。

「どちらへ行かれるのですか? 難しい表情をされて、何か問題でも?」

「いえ、すぐにアンドリューさまにご報告したい旨がございまして……」

すると、ヒューバートさまはスッと私に近づき、

「陛下なら、アルフレッドさまとご一緒にあの例の館にお忍びでご視察にいかれていますよ」

と耳元で囁かれた。

「えっ?! なんということだ!」

「どうなさったのですか?」

「実は、トーマさまがシュウさまと泳ぎたいと仰られて……」

「そ、それは……」

ヒューバートさまも困惑気味のご様子だ。
それはそうだろう。
あんなに美しいお2人が無防備な肌を晒して泳ぎなどとんでもない。

はぁ……。もう少しご自分方の魅力を理解してくだされば良いのだが……。

ヒューバートさまは『ふむ』と顎に手を当てて少し考えられて、

「陛下とアルフレッドさまは1時間ほど前にお発ちになり、長居はせずすぐに戻ると仰っていました。少し時間を引き延ばせれば、間に合うのでは?」

「なるほど……」

「陛下とアルフレッドさまが戻られたら、すぐに川辺の方に向かっていただくことに致しましょう。あの川辺なら一本道ですし、すぐに追いつけるはずです。私もブルーノさまに同行致します。部下も5人ほど連れて行けば不測の事態に対応できますし」

ヒューバートさまの提案に心が安堵していくのがわかった。

「ヒューバートさまがご一緒していただければ助かります。ですが、若い騎士たちにはくれぐれも注意なさってください。アンドリューさまとアルフレッドさまの奥方さまに対する溺愛と嫉妬は時に手がつけられませんから」

「はい。心得ております。すぐに騎士たちを連れて参ります」

それから私は急いで水遊びのための準備を始めた。

 ✳︎   ✳︎   ✳︎

トーマ王妃とシュウさまが水遊びか……。
これは間違いが起こってはとんでもないことになるな。

私の脳裏に先日の捕物劇の様子が思い出される。
トーマ王妃とシュウさまが男たちの手にかかっているのが目に入った瞬間、陛下とアルフレッドさまの怒りがピークに達せられ止めようがなかったからな。
騎士たちにはトーマ王妃とシュウさまに対してよからぬ気持ちを持たぬよう注意しておかなければ。

私は騎士の休憩室へと急ぎ足で向かった。

「入るぞ」

と扉を開けると10人ほどの騎士たちがいたが、ちょうどこの前の捕物劇の時にいた騎士たちが5人ほどいる。
あいつらなら陛下とアルフレッドさまの怒りを近くで見ているからよからぬ気持ちなど起こさないだろう。

「今からトーマ王妃とシュウさまがお出掛けになられる。お前たち、警備に同行してくれ」

そう言うと、くだんの騎士たちは顔を引き攣らせ、必死に横に振った。

『イヤです! 怖いです! 無理です!』

必死にそう言い続ける騎士たちにこれ以上ついてこいとは言えなかった。
たしかにあの時の陛下たちは怖かったからな……。
よほど頭に残っているらしい。

「先輩方が行かれないなら我々が行きますよ!
なっ!」

あの捕物劇を知らない若い騎士たちがトーマ王妃たちと出かけられると嬉しそうにはしゃいでいるが、どうするか……。

まぁ、あいつらがついていけないなら仕方がない。

「よし。ついてこい。但し、よく聞いておけ!
命が惜しかったら、トーマ王妃とシュウさまには無闇に触れるな。お2人の姿もできるだけ目に入れるな。お2人の会話も聞かぬよう注意しろ。いいな!」

若い騎士たちは不可解そうな表情をしながらも
元気よく『はい』と答えた。

私は5人の若い騎士を連れ、ブルーノさまの元へと戻った。

準備を終え、大きな荷物を持ったブルーノさまと中庭の入り口で落ち合い、東屋でお待ちになっているトーマ王妃とシュウさまの元へと急いだ。

遠くからでもお2人の姿は輝いていて、あそこだけ天界のようだ。

その様子にさっきの注意を忘れているのか若い騎士たちがニヤけている。
これ以上近寄ったら危ないと思い、我々はここで止まり、ブルーノさまだけお2人の傍に近づいて行った。

早く陛下とアルフレッドさまがお戻りになるようにと心の中で必死で願いながら、その場に立ち続けていた。
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