ひとりぼっちのぼくが異世界で公爵さまに溺愛されています

波木真帆

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第四章 (王城 過去編)

花村 柊   38−1

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目を覚まして今日もまたフレッドの腕の中に包まれていることに幸せを感じながら、
『フレッド……』と声をかけると、フレッドの目がゆっくりと開いた。
フレッドの綺麗な淡い水色の瞳に自分の顔が写っている。
今日フレッドが初めて見たものがぼく……そう思うだけで嬉しくなる自分がいる。

フレッドが完全に起き出す前に、

「フレッド、おはよう」

と声をかけ少しだけ身体を動かして目の前にあるフレッドの唇にちゅっとキスすると、フレッドは満面の笑みを浮かべ、
『シュウ、おはよう』とキスを返してくれた。

「身体の具合はどうだ?」

「うん、昨日よりは痛みが少なくなっているかも。フレッドが薬を塗ってくれたおか――あっ!」

「んっ? どうした?」

フレッドにお世話してもらったお礼を言おうとして、とんでもないことを思い出してしまった。
昨日フレッドが薬を塗ってくれていただけだったのに、ぼくったら……は、発情しちゃってフレッドに、その……シテ・・もらっちゃったんだよね。

ゔーっ、恥ずかしいこと思い出して、顔が赤くなってきちゃったよ。

あの時フレッドは気にしなくていいって言ってくれてたけどやっぱり気にしちゃうよ。

「シュウ? どこか痛いのか?」

「あ、やっ……ううん。違う、そうじゃ、なくて……あの、ね……昨日のことなんだけど……」

「昨日のこと?」

「うん、ぼく……その、フレッドに薬塗ってもらってる時に……ね、その、シテ・・もらったでしょ?」

「んっ? 何を?」

「えっ、だから……その、」

「シュウ、どうした? はっきり言ってくれないか?」

フレッドはぼくを心配そうな表情でぼくを見つめている。
ちゃんと話さなきゃダメだよね。

「だ、だから……その、ぼくのお……ちん、ちん……触って、その蜜を……」

ぼくが必死にそういうと、フレッドは『ああっ』とようやく思い出したようで、

「ふふっ。シュウはまだあれを気にしていたのか。気にしなくていいと言ったろう?
あんなふうに元気になるのはシュウの身体が良くなってきているという証拠だし、それに出さないほうが帰って病気になるんだからな。私が手伝えてよかったんだよ」

と頭を優しく撫でながらそう言ってくれた。

そっか。
フレッドが気にしなくていいって言ってくれたのは、あんな勝手に発情しちゃったぼくを慰めるつもりじゃなくて身体にとって本当に大事な意味があったんだ。
なんだ、安心した。
あ、でもちょっと待って……。

「ねぇ、あれって……毎日でも出したほうがいいの?」

「ああ、そうだな。毎日出すべきだし、健康なら出したくなるものなんだよ。ほら、だから私たちは毎日愛し合っていただろう? だからシュウの身体のことは私に任せてくれたらいい」

「じゃあ、フレッドはどうしたの?」

「えっ?」

「ぼくがお手伝いできない間、どうしてたの? 毎日出したほうがいいんだよね?
もしかしてぼくが一緒にできないせいで、フレッドが病気になっちゃう? ぼく今からお手伝いしようか?」

急にフレッドの身体が心配になってフレッドを見つめると、
『ぐぅ――っ』と苦しげな声をあげ、ぼくをぎゅっと抱きしめた。

「シュウは今は身体を早く治すことだけ考えてくれたらいいんだ。その気持ちだけで私は嬉しいよ」

「でも……フレッドが病気になるのは、やだ……」

「くっ――! だ、だがシュウはまだ身体も万全じゃないだろう?
私はシュウがちゃんと治るまではちゃんと待っているから」

「でも……」

ぼくはフレッドが病気になってしまったらと思うと心配でたまらなくなる。

「フレッドぉ……」

悲しくなってきてフレッドを見つめると、フレッドは『はぁーーっ』と大きなため息を吐いて

「その、自分でシタ・・……から大丈夫だ。だから心配しないでいい」

と顔を赤らめながら教えてくれた。

フレッドが自分で……うそっ!!
そっか、そうだったんだ。

でも身体のためには大事なことなんだもんね。
とりあえずフレッドが病気になることがないってわかってぼくはホッとした。
でも……

「そ、そうだったんだ。ごめんね、1人でさせちゃって……。
あの、ぼく……痛みがなくなったらフレッドと前みたいにできるようになるから、待っててね」

「ああーっ、もう! シュウはどこまで可愛いんだ!!!」

フレッドは急に興奮してぼくを抱きしめると、

「また今日も薬を塗ってやるから楽しみにしていてくれ」

と耳元で囁いた。

もしかしたら今日も……は、発情しちゃうのかな、ぼく。


ぼくが真っ赤な顔で悶えていると、フレッドは『ふふっ』と笑って、

「元気そうなら少し食事でもしようか」

と言ってくれて、ぼくが頷くと『少しだけ待っていてくれ』とベッドから下り寝室を出ていった。

フレッドって本当に優しいんだよね。
あ、アレ……とかさ、それにトイレも……。
嫌な顔どころかなんでもすごく丁寧にやってくれるし、僕はお世話されるばっかりで申し訳ない気がしてしまう。

別にフレッドに怪我してほしいとか、体調悪くなってほしいとは思わないけど、でも……この身体の痛みが治ったらぼくにお世話させてもらえるように頼んでみようかな。
元気な時にお世話の方法を学んでおいたら、フレッドが本当にお世話が必要な時にすぐに役に立てそうだし!

うん! そうだよ、それ!

フレッドが戻ってきたらお世話させてもらえるようにお願いしてみよう!

ふふっ。なんだか楽しくなってきた。
フレッド、早く戻ってこないかなぁ。

「シュウ、ブルーノに頼んできた。シュウの食べやすいスープと果物を用意してくれているそうだよ」

「わぁ、嬉しいっ! なんか聞いたらお腹空いてきた」

「ふふっ。身体が元気になってきている証拠だな。よかった。食事をしたら薬を飲んで、塗り薬もつけておこうか」

フレッドがそんなつもりじゃなく言っているのはわかっているのに、塗り薬のことを思い出すだけでフレッドにシテもらったことを思い出しちゃうな。

だめだ、だめだ。
違うことを考えなきゃ!

必死にあのことを頭から追い出そうとしている間に、寝室の扉がトントントンと叩かれ、

「お食事をお持ちいたしました」

とブルーノさんの声が聞こえた。

「ああ、入れ」

フレッドが返事をすると、ブルーノさんはまずテーブルを持って入ってきた。

フレッドはぼくの身体を痛みが出ないようにゆっくりと起こし、ヘッドボードとぼくの身体の間にふわふわのクッションをいくつも挟んで『痛くないか?』と確認しながら座らせてくれた。

そしてブルーノさんはぼくが座った目の前に持ってきたテーブルをセットし、そのテーブルに温かなスープと美味しそうなフルーツを並べてくれた。

「美味しそう! ブルーノさん、ありがとう」

「シュウさま。本当にお元気になられてようございました。スープはお熱うございますのでフレデリックさまによく冷ましていただいてお召し上がりくださいませ」

「うん、ありがとう」

ブルーノさんの目が少し潤んでいて、心配かけちゃったんだなって改めて思った。

「あの、ブルーノさん!」

「シュウさま、どうかなさいましたか?」

心配そうにぼくの近くへと寄ってきてくれるブルーノさんに、

「あの……ぼく、早く良くなるから! だから、心配しないで。治ったらまた画室でおしゃべりに付き合ってね」

というと、ブルーノさんは『――っ!』と一瞬息を呑んで、

「……はい。楽しみに、お待ちしていますね」

と少し俯きながらスッと寝室を出ていった。

「シュウ? どうした?」

「ううん、ブルーノさん……なんか様子がおかしかったからぼく変なことを言っちゃったかなと思って……」

「ああ、違うよ。ブルーノはシュウが目覚めるまでずっと神に祈っていてくれたんだ。シュウが目覚めたと聞いて涙を流して喜んでいたよ。だから、シュウにあんなふうに言われて感極まってしまったんだ。許してやってくれ」

「そんな……許すだなんて! ブルーノさん、ぼくのことそんなに心配してくれてたんだ。
申し訳ない気持ちでいっぱいだけど……でも、なんか嬉しい」

「嬉しい?」

「うん。ぼくが無事だって聞いて涙流して喜んでくれる人がフレッド以外にもいるなんて嬉しいんだ。
僕はずっと1人だったから……。この世界に来て、大切な人が増えて、そしてぼくのことを大切に思ってくれる人も増えてぼく嬉しいんだ」

「ふふっ。そうだな。シュウはひとりぼっちなんかじゃないよ。みんながシュウのことを大切に思っている。
その中でも私は別格だがな」

「ふふっ」

得意げな顔を見せるフレッドに思わず笑ってしまった。
ああ、本当にぼくは幸せ者だ。

それからフレッドに温かいスープをフーフーと冷ましてもらいながら全て平らげ、甘くて美味しいフルーツも全部ぼくのお腹に収まった。

「ふぅ、お腹いっぱい」

「シュウは本当に元気になってきてよかった。あとは痛みが取れるように薬をちゃんと塗らないとな」

「うん、そ、そうだね……フレッド、お願いね」

「ああ、任せておいてくれ」

やっぱりフレッドはぼくのお世話が嬉しそうだ。
本当に優しいんだよね。
発情しちゃうかと思うと恥ずかしいけど、でも身体のために大事なことだって言ってたから頑張らないとな。

ちょっと思ったけど、薬を塗ってもらっている間、違うこと考えてたら気が紛れて発情しなくなるかもね。
そうだ! フレッドのお世話の話でもしてたらいけるかも!

よし、あとで薬塗ってもらう時その話をしてみようっと!

「シュウ、食事も終わったし薬を塗ろうか」

「う、うん。お願い」

フレッドはいそいそとテーブルとお皿を寝室の外に運び、ぼくの服を脱がせにかかった。

ゔーっ、やっぱりちょっと恥ずかしいな。

「シュウ、寒くないか?」

「うん、大丈夫だよ」

フレッドの前に全裸を晒して恥ずかしさのあまりちょっと震えてしまったのを勘違いされてしまったのかも。

塗り薬をたっぷりとつけたフレッドの大きな手がぼくの身体を滑っていく。
痛みよりもその心地よさに悶えてしまう。

このままじゃ本当に今日も発情しちゃうかも。

「あ、あの……フレッド」

「んっ? どうした? どこか痛かったか?」

「ううん。フレッドの塗り方とっても上手だよ」

「そうか、なら良かった」

「あのね、ぼく……ずっとフレッドにお世話してもらってるでしょ? 今回だけじゃなくて今までも何度か……」

「ああ。そうだな。だが、それは大切な伴侶なのだから私が世話をするのは当然なのだぞ。
シュウは気にしなくていいんだ。それとも、嫌……だったか?」

あっ、ぼくの言い方が悪かったせいでフレッドが違うふうに勘違いしちゃってる!

「違う、違うっ! 嫌なんかじゃなくて、むしろお世話されて嬉しいっていうか、フレッドにしかお世話して欲しくないっていうか……」

「そうか! シュウは私に世話されて嬉しいか!
それに私にしか世話して欲しくないとは……ああ、もちろん私がずっと世話するからな」

なんだかいつものフレッドよりもずっとずっと嬉しそうにウキウキしている。
こんなテンション高いフレッド見るのあんまりないからなんかすっごくレアだな。

「ふふっ。うん、よろしくね。あ、あのね、それで……言いたかったことなんだけど、ぼくはいつもフレッドにお世話してもらうばっかりだから、一度くらいフレッドのお世話を練習しておかないとなって」

「シュウが……私の世話を、練習……?」

「うん。ほら、練習しておかないと、もしフレッドが怪我しちゃったり風邪ひいちゃったりしてお世話したい時に、うまくできないかもしれないでしょう?」

「それで……シュウが、練習……」

「うん。だめ、かな……?」

フレッドはなんだか驚いたような顔をしてじっとぼくを見つめている。
薬を塗ってくれていた手も腕に触れたまま止まっている。

「あ、あの……フレッド? やっぱダメかな?」

「あ、ああ。シュウ。いや、ダメなんかじゃないっ! 良いに決まっているだろう! 
シュウが私のために練習したいと言ってくれるだなんて、嬉しすぎておかしくなってただけだ。
そんな嬉しい提案、私の方からお願いするよ!」

「ふふっ。そうなんだ。良かった。じゃあ、治ったら今度はぼくにお世話させてね。
食事だって、お風呂だって、トイレだって……あの、それにアレ・・も、ねっ」

「うぐ――っ! シュウが、私の食事も風呂もトイレも、それにアレ・・まで?
私は理性が保てるだろうか……」

「んっ? どうしたの?」

急にぼくから顔を背けて、何かブツブツ話していたけれど、ぼくの耳には全く届かなくて、何を言っているのかすらわからなかった。
なんだろう? ぼく、変なこと言ったのかな?

「い、いや、なんでもない。シュウが私のためにやってくれることなら全部お願いするよ」

「うん、任せて!! ぼく、早く治してお世話頑張るからね!!」

フレッドはその後、なぜか口数が減って黙々とぼくの身体に薬を塗ってくれて、あっという間に服を着せられた。

うん、良かった。今日は発情せずに済んで。ふふっ。

「あれ、そういえば、今日の着替えはローブじゃないんだね」

「ああ。シュウの体調が良さそうだから陛下とトーマ王妃、それからジュリアン王太子もお呼びしようと思っていたのだが、どうだ? 疲れているか?」

「ああ、そっか。大丈夫。フレッドのお世話のおかげで全然疲れてないよ」

「それなら、ソファーに移動しよう。準備するからちょっと待っていてくれ」

フレッドはそういうと寝室を出て、部屋の外にいる騎士さんにブルーノさんを呼ぶように声をかけた。

急いでやってきたブルーノさんに何か指示をすると、フレッドだけ寝室に戻ってきた。

「どうしたの?」

「シュウの身体が辛くないように頼んだんだ」

ぼくの身体が辛くないように?
一体どういうことだろう?

そう思っていると、ものの数分で
『ご用意ができました』と声がかかった。

「じゃあ、シュウ行こうか」

とブランケットに包まれ
寝室を出ると、リビングにあったソファーにクッションやら布団やらが用意されていて、まるで大きなベッドになっていた。

フレッドはその真ん中にぼくをゆっくりと横たわらせると、

「どうだ? 痛くはないか?」

と尋ねてくる。

「うん、寝心地いいよ。ありがとう。ブルーノさんもありがとう」

「いいえ、シュウさまがこんなにもお元気になられて嬉しい限りでございます」

嬉しそうな笑顔を見せてくれるブルーノさんにホッとする。
ああ、喜んでくれて本当に嬉しいな。

「ブルーノ、陛下とトーマ王妃、そしてジュリアン王太子にお声がけしてくれ」

「畏まりました」

ブルーノさんはそういうと静かに部屋を出ていった。
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