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番外編
持ちつ持たれつ
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「どうした? 浮かない顔だな」
久しぶりにカフェで待ち合わせをしたユウさんに会って早々、そんな言葉をかけられた。
この人に隠し通せるわけもない。
それに、彼にはこの話を共有しておかないと大変なことになる。
それがわかっているから、今日この場を設けたんだ。
「実は……」
俺はブラックのアイスコーヒーを一口飲んでから、ユウさんに話をした。
「伊月が、リハビリで知り合った谷垣くんに卒業旅行に誘われて行くことになったんですよ」
「彼と? 二人で?」
さすがのユウさんも驚きを隠せない様子だ。
「最初はそのつもりのようでしたよ。しかも、場所はどこだと思います? イタリアですよ、イタリア」
「……」
旅先を聞いて、あまりの衝撃を隠せないようだ。
こんなユウさんの表情はそうそう見られるものじゃない。
「それで、お前はどうしたんだ?」
「もちろん、ついていくに決まってるじゃないですか」
「やっぱり旅行自体をなくすことはできなかったか……」
愛しい相手が行きたいと望むならば、それに応えたいと思うのが当然だ。
伊月にとっては旅行自体がほぼないのだから、せっかく友人に誘われた旅行を奪いたくない。
「でも伊月との初めての旅行を谷垣くんに取られたくないので、その前に一度二人で温泉旅行にでも行こうと思ってます」
「ははっ。そうだな。それがいい。旅行の楽しさもわかるだろうし」
あのあと、伊月のパスポートやらを揃える時間や、授業や試験の日程も考慮して、11月下旬から12月の初めに旅行に行くことになった。
冬休みでも……と伊月は言っていたが、イタリアも含めてヨーロッパでは年末には完全に休業する飲食店や施設は少なくない。せっかく行ったのに、どこも空いていないという事態に陥ることもある。
その点、11月の下旬からは各地でクリスマスの準備が始まり、街が非常に活気づく。
そのため、どこに行ってもクリスマスの雰囲気を味わえる。
「それで今日、ユウさんを呼び出した理由ですが……」
「なんとなくもう察してるよ。その旅行に真琴が誘われないように対策を、だろう?」
さすがユウさんだな。
「そうです。今のところ、真琴くんの話は出さないようにしていますが、来週真琴くんがうちに来て課題をやることになっているので、その前に確実な計画を立てておいた方がいいですよ」
「そうだな。前もって教えてくれて助かるよ」
多分俺と別れたらすぐに真琴くんとの旅行を計画することだろう。
俺としてはユウさんが旅行についてきてくれた方が、たった一人で伊月と谷垣くんを護衛するよりは遥かに楽になるが、ユウさんの真琴くんへのあの溺愛っぷりを考えたらそんな危険な旅行に参加させるわけがない。
それがわかっているから、俺は無理にユウさんに一緒に来てもらうように説得したりしない。
むしろ、ユウさんに情報を流して守ったほうがこれからの俺たちの仕事にも支障をきたさない。
俺たちは持ちつ持たれつの関係が一番いい。
「旅行を無事に終えられるようにいろんな道具を渡すから好きに言ってくれ」
「ありがとうございます。こっちも助かりますよ」
そう言って、今日の話は終わった。
それからはしばらく仕事の話はなかった。きっと俺を気遣ってくれているのだろう。
その間に旅行に必要なものも全て準備し、谷垣くんとの旅行を前に完全予約制の温泉旅館で伊月とのラブラブな時間も作れた。
そうして、あっという間に11月下旬。
旅行を翌日に控えて、伊月は嬉しそうに俺に甘えてきた。
「明日からイタリアですね。すっごく楽しみです」
俺はしばらく伊月と激しく愛し合えないことを覚悟していたが、イタリア観光の雑誌をいくつも読み、谷垣くんと行きたい場所をしっかりと頭に入れていた伊月は待ち遠しくてたまらない様子。
まぁ、そんな姿も可愛いと思えるのだからどうしようもない。
「旅行中は俺から絶対に離れるなよ」
「はい! 大丈夫です!」
素直に返事をしてくれる可愛い伊月をギュッと胸に抱きしめて、俺はもう一度気合いを入れ直した。
久しぶりにカフェで待ち合わせをしたユウさんに会って早々、そんな言葉をかけられた。
この人に隠し通せるわけもない。
それに、彼にはこの話を共有しておかないと大変なことになる。
それがわかっているから、今日この場を設けたんだ。
「実は……」
俺はブラックのアイスコーヒーを一口飲んでから、ユウさんに話をした。
「伊月が、リハビリで知り合った谷垣くんに卒業旅行に誘われて行くことになったんですよ」
「彼と? 二人で?」
さすがのユウさんも驚きを隠せない様子だ。
「最初はそのつもりのようでしたよ。しかも、場所はどこだと思います? イタリアですよ、イタリア」
「……」
旅先を聞いて、あまりの衝撃を隠せないようだ。
こんなユウさんの表情はそうそう見られるものじゃない。
「それで、お前はどうしたんだ?」
「もちろん、ついていくに決まってるじゃないですか」
「やっぱり旅行自体をなくすことはできなかったか……」
愛しい相手が行きたいと望むならば、それに応えたいと思うのが当然だ。
伊月にとっては旅行自体がほぼないのだから、せっかく友人に誘われた旅行を奪いたくない。
「でも伊月との初めての旅行を谷垣くんに取られたくないので、その前に一度二人で温泉旅行にでも行こうと思ってます」
「ははっ。そうだな。それがいい。旅行の楽しさもわかるだろうし」
あのあと、伊月のパスポートやらを揃える時間や、授業や試験の日程も考慮して、11月下旬から12月の初めに旅行に行くことになった。
冬休みでも……と伊月は言っていたが、イタリアも含めてヨーロッパでは年末には完全に休業する飲食店や施設は少なくない。せっかく行ったのに、どこも空いていないという事態に陥ることもある。
その点、11月の下旬からは各地でクリスマスの準備が始まり、街が非常に活気づく。
そのため、どこに行ってもクリスマスの雰囲気を味わえる。
「それで今日、ユウさんを呼び出した理由ですが……」
「なんとなくもう察してるよ。その旅行に真琴が誘われないように対策を、だろう?」
さすがユウさんだな。
「そうです。今のところ、真琴くんの話は出さないようにしていますが、来週真琴くんがうちに来て課題をやることになっているので、その前に確実な計画を立てておいた方がいいですよ」
「そうだな。前もって教えてくれて助かるよ」
多分俺と別れたらすぐに真琴くんとの旅行を計画することだろう。
俺としてはユウさんが旅行についてきてくれた方が、たった一人で伊月と谷垣くんを護衛するよりは遥かに楽になるが、ユウさんの真琴くんへのあの溺愛っぷりを考えたらそんな危険な旅行に参加させるわけがない。
それがわかっているから、俺は無理にユウさんに一緒に来てもらうように説得したりしない。
むしろ、ユウさんに情報を流して守ったほうがこれからの俺たちの仕事にも支障をきたさない。
俺たちは持ちつ持たれつの関係が一番いい。
「旅行を無事に終えられるようにいろんな道具を渡すから好きに言ってくれ」
「ありがとうございます。こっちも助かりますよ」
そう言って、今日の話は終わった。
それからはしばらく仕事の話はなかった。きっと俺を気遣ってくれているのだろう。
その間に旅行に必要なものも全て準備し、谷垣くんとの旅行を前に完全予約制の温泉旅館で伊月とのラブラブな時間も作れた。
そうして、あっという間に11月下旬。
旅行を翌日に控えて、伊月は嬉しそうに俺に甘えてきた。
「明日からイタリアですね。すっごく楽しみです」
俺はしばらく伊月と激しく愛し合えないことを覚悟していたが、イタリア観光の雑誌をいくつも読み、谷垣くんと行きたい場所をしっかりと頭に入れていた伊月は待ち遠しくてたまらない様子。
まぁ、そんな姿も可愛いと思えるのだからどうしようもない。
「旅行中は俺から絶対に離れるなよ」
「はい! 大丈夫です!」
素直に返事をしてくれる可愛い伊月をギュッと胸に抱きしめて、俺はもう一度気合いを入れ直した。
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四葩さま。コメントありがとうございます!
ふふ🤭国内ならまだしも、まさかの海外。しかもイタリア!
これはかなり大変ですよ〜。
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でも可愛いニャンコたちを狙う狼があちらこちらにいるので大変ですね。
せっかくイタリアが出てくるんであの彼らと合流させても楽しそうですが。
そうしたら警備も少しは楽になりそうですけどね。
今度外で真琴に抱っこをねだらせてみましょうか。
ゆーちーが大喜びして、もう下さなくなるかもしれないですね(笑)
いぬぞ〜さま。コメントありがとうございます!
ヨーロッパはお店でもちゃんとお休み取るので、時期は考えないと大変ですね。
真琴はもうすでにゆーちーと一緒じゃないと旅行には行かないと植え付けられてそうですが(笑)
念の為、いっくんたちが旅行に行っている間は何か予定を入れておいた方がいいかもですね。
>真琴くんを完全に護れる状況下であって初めて行動に移す
これ、めちゃくちゃゆーちーっぽい。
かなり大変な旅行になりそうですし、最優先は真琴の安全ですからね。
二人だけのしっぽり温泉旅行。
シンは理性が飛んでずっと部屋から出なかったかも(笑)
NOGAMIさま。コメントありがとうございます!
しかもこのかわい子ちゃん、無防備で自分がモテるとは一ミリも思ってないですからね。
大変なことこの上なし(笑)