有能な調査員は健気で不憫なかわい子ちゃんを甘やかしたい!

波木真帆

文字の大きさ
16 / 45

恋人だから……

しおりを挟む
「さぁ、食事の準備をしようか」

この家での初めての食事は、伊月くんの退院パーティー。
伊月くんが食べたいと言っていた<ミモザ>のミックスフライは昨日のうちに準備しておいたからあとは揚げるだけだ。

ご飯とパンとどちらにしようかと悩んだが、今日はとことん伊月くんの好きなものにしてあげたいと思って、小さなオムライスとコーンスープを作る予定だ。伊月くんはいつも砂川くんと美味しそうにオムライスを食べているから、<ミモザ>のミックスフライと一緒に俺のオムライスも食べて欲しいと思ったんだ。

ミモザのオムライスはとろとろ卵のものと、薄い卵を巻いたものとどちらも頼むことができるが、伊月くんの好みはもうすでに知っている。きっと喜んでくれるだろう。

伊月くんが夕食の手伝いをしてくれると言ってくれたが、今日は伊月くんが主役。
カトラリーだけ用意してもらい、あとは俺が料理をしてみるのを見ていてもらうことにした。

自炊なら手慣れているが、伊月くんが見てくれていると思うだけで俄然やる気が出る。スープとチキンライスをさっと仕上げ、ミックスフライを揚げる準備を整える。

ミックスフライを揚げながら、俺はフライパンに卵を薄く焼いた。そこにチキンライスを乗せて手早く巻いた。

同じタイミングでミックスフライも揚げ終わり、レタスを乗せた皿に盛りつける。これで完成だ。


「はい。伊月くん。どうぞ」

「――っ!! すごいっ!! ミックスフライだ!! それにオムライスも!!」

目を輝かせてくれる伊月くんが可愛くて仕方がない。

「これ……僕が、本当に食べていいんですか?」

「もちろんだよ。伊月くんのためだけに作ったんだから。退院おめでとう。二ヶ月間もよく頑張ったね」

「――っ、ありがとうございます! 慎一さん!!」

「揚げたてで熱いから、火傷しないようにね」

「はい!」

二人だし、向かい合わせに座ろうと思ったけれど、やっぱり隣に料理を並べて正解だったのかもしれない。
伊月くんと並んで座ると、伊月くんは嬉しそうにミックスフライのエビフライをフォークで刺して口に運んだ。少し大きめにしておいたエビフライは伊月くんの口にはちょっと大きかったみたいだが、パクリと先端を食べていた。

「んんっ!!」

熱かったかと心配したがその表情を見るに、きっと美味しかったんだろうと推測できた。

「このエビフライ!! すっごく美味しいです!!」

もぐもぐしてごくんと飲み込んでからキラキラと目を輝かせて言ってくれる伊月くんが可愛い。

「そんなに喜んでもらえてよかったよ。オムライスも喜んでもらえるといいな。はい、あーん」

スプーンでチキンライスと卵を掬い、伊月くんの口の前に差し出すと

「えっ、あっ、はい」

少し戸惑いながらも口を開けてくれた。

「んっ! 美味しい!!」

「よかった」

「僕、この薄い卵で巻くオムライスが好きなんです」

「知ってる」

「えっ? 僕、前に言いました?」

「いや、でも伊月くんのことならなんでも知ってるよ。俺は伊月くんの恋人だからね」

こんなことを言うと怖がられるかもしれないと思ったが、伊月くんはほんのりと頬を染めながら嬉しそうに笑ってくれた。

「僕も、慎一さんのこと……何でも知りたいです……恋人、ですから……」

「――っ、伊月くん!!」

「わっ!!」

食事中だと言うのに伊月くんへの想いが止められずに、抱きしめてしまった。

ああ、なんていい子が俺の恋人になってくれたんだろう。もう幸せすぎて怖いくらいだな。

その後も嬉しそうに俺の作ったご飯を食べる伊月くんを見ながら食事を済ませ、片付けを手伝ってくれるという伊月くんにボウルや鍋といった大物を拭きあげてもらっている間に全ての食器を食洗機にセットしてあっという間に片付けを終わらせた。

食後のデザートの手作りプリンを持って、ソファーに腰を下ろし、明日のことを話すことにした。

「明日は、これからこの家で暮らすにあたって必要なものを買いに行こう」

「必要なもの、ですか?」

「うん。当分は学校も休みだし、家で過ごす時間が多いからね」

「えっ、でも部屋には十分すぎるくらい本も勉強道具も揃ってましたよ。これ以上買ってもらうなんて……」

ああ、こういう子なんだよな、伊月くんは。無欲で自分から欲しがったりしない。

「ごめん、ちょっとカッコつけた」

「えっ?」

「恋人になった伊月くんと買い物に託けてデートしたいだけなんだ」

「――っ!!」

「一緒に、出かけてくれる?」

お願いするように見つめると伊月くんは顔を真っ赤にして

「はい。僕も、慎一さんとデート、したいです……」

といってくれた。ああ、もう!! 本当に可愛すぎる!!!

でもこれで怪しまれず、ユウさんと砂川くんとの食事会に伊月くんを連れて行けるな。
驚く顔を見るのが楽しみだ。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話

日向汐
BL
「好きです」 「…手離せよ」 「いやだ、」 じっと見つめてくる眼力に気圧される。 ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26) 閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、 一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨ 短期でサクッと読める完結作です♡ ぜひぜひ ゆるりとお楽しみください☻* ・───────────・ 🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧 ❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21 ・───────────・ 応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪) なにとぞ、よしなに♡ ・───────────・

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(2024.10.21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

処理中です...