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天国から地獄
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「真守。君は今日からおじさんの子だよ」
優しい笑顔を見せながら差し伸べてくれたおじさんの手の温もりを僕は一生忘れないだろう。
会社経営をしていた父さんと専業主婦の母さんと3人暮らしだった僕・高原真守は、幸せな日々を過ごしていた。
次の連休に久しぶりに旅行に行こうか、いい温泉旅館の予約が取れたんだよ。
毎日仕事で忙しい父さんの嬉しい誘いに、僕たちは父さんの運転する車で片道3時間の旅に出かけた。
サービスエリアで美味しいソフトクリームを食べたり、車の中で父さんの大好きな海外アーティストの曲を聴きながら珍しく父さんの歌を聞いたり、到着した温泉旅館で男同士で温泉を楽しんで背中を流しっこしたり、料理も最高に美味しかった。
一泊二日の短い旅行だったけれど、父さんがいつも以上に饒舌だったのは、久しぶりの家族水入らずの時間を心から楽しんでくれていたからかもしれない。
あっという間に楽しかった旅行も終わり、高速を降りればもうすぐ家だというところまで帰ってきた時、対向車線を走っていた居眠り運転の車が突然僕たちの車に向かってきた。
父さんは僕たちを守るために正面衝突を避けようとして咄嗟にハンドルを切ったんだろう。
そこそこのスピードを出していた僕たちの車はものすごい勢いで反対側の壁にぶつかって止まったようだ。
そんな話を後に病院で警察から聞かされたけれど、後部座席でうつらうつらしていた僕は事故の瞬間を何も知らない。
僕が知っているのは、突然とんでもない衝撃と痛みに襲われて、正面を向くと血まみれの両親の姿があったこと。
「父さんっ、母さんっ!」
そう叫んだけど、両親は微動だにしなかったのは鮮明に覚えている。
すぐに救急車が呼ばれたけれどおそらく父さんと母さんは即死だったのだろうと思う。
そう思ってしまうくらい、両親は動きもしなかった。
僕は後部座席で抱きしめて持っていた大きなぬいぐるみが衝突の勢いを弱めてくれたようで、身体中を打撲したくらいで助かった。
病院で警察からそんな事故の詳細を父さんと母さんの死亡とともに聞かされた時は目の前が真っ暗になって、これからどうしたらいいのかわからなくなっていた。
とりあえず、父さんの秘書をしてくれていた人が率先してお葬式や、親族への連絡などを引き受けてくれた。
交通事故でたった一人奇跡的に助かった僕は、両親の棺を前になす術もなくただただ座り込むことしかできなかった。
こんなはずじゃなかったのに。
楽しい家族旅行の素敵な思い出になるはずだったのに。
なんで僕は一人だけ生き残ってしまったんだろう。
なんで僕だけ……。
あの日、サービスエリアで父さんが買ってくれた大きなクマのぬいぐるみが僕の命を助けたんだ。
まるであんな事故が起こるのを予期していたように。
あの事故から、告別式、火葬を終えた今日までの記憶があまりない。
今は、父さんと母さんの遺骨を前に何もする気にもならなかった。
ぼーっと座り込む僕の後ろでは集まってくれた親族が今後のことを話し合っている声が聞こえる。
今後のことというよりは僕を誰が引き取るかということの話がメインみたいだ。
てっきりたらい回しにされるのかと思っていたけれど、なぜかみんなして僕を引き取りたいと言い出している。
「うちが真守くんを引き取るわよ」
「何言っているの! うちの方がいいに決まってるわ! 同じ年の息子もいるんだし、あんたのところは女の子ばっかりで真守くんも居心地悪いでしょ!」
「いいや、うちが引き取る! 俺はなんと言っても真守の叔父なんだからな」
「そんなこと言ってお前は兄さんの遺産目当てだろう!」
「お前だってそうじゃないか!」
「真守くんは全ての遺産を受け継ぐたった一人の相続人だものね。引き取って自分たちが使う気なんでしょ? 義兄さんの会社、火の車だって話だものね」
「なんだよ、お前だってそういう狙いだろ! 金でもなきゃ誰が面倒くさい高校生の男なんか引き取るかよ!」
「ほら、本音が出た。やっぱりうちで面倒見るわ。真守くんだって同じ年の伸吾がいる方が安心でしょうし。ねぇ、真守くん!」
叔母さんの後ろでニヤニヤと笑っている従兄弟の伸吾。
正直、あいつと一緒に暮らすなんて嫌だ。
小さい頃から何故か僕の身体に触れたがって嫌だったけど意味がわからなくて放置してた。
でも最近になって、それが性的に触れられてるってわかって一気に鳥肌が立ったんだ。
伸吾の気持ちに気づいてからは極力会わないようにしていたのに。
一緒に暮らしたりしたらもう逃げ場がなくなってしまう。
伸吾と一緒に暮らすくらいなら、ここで一人で過ごした方がよっぽどいい。
「僕……もう15ですから一人で暮らします。だから、心配しないでください」
必死に思いを告げたけれど、
「何言ってんの! 15で一人暮らしなんて無理に決まってるでしょう! まだ子どものくせに!」
と一蹴されてしまう。
伸吾と一緒に住むなんて絶対嫌だし、でも正直言ってそんなに面識もない叔父さんたちのところに行くのも嫌だ。
でもこのままじゃ……。
一体どうしたらいいんだろう。
正直に言って今は何も考えたくなかった。
ただゆっくりと父さんや母さんとの別れの時間を過ごしたかったんだ。
すると、突然そこにいた大人達を窘めるような声が僕の耳に飛び込んできた。
「それをいうなら大人のくせに、なんていう話を傷心の子どもに聴かせているんですか! 最低ですね」
「だ、誰だ!!」
突然の声に叔父さんが顔を真っ赤にしながら、声のする方に向かって叫ぶと、スラリと長身の男性がもう一人長身の男性を伴って現れた。
優しい笑顔を見せながら差し伸べてくれたおじさんの手の温もりを僕は一生忘れないだろう。
会社経営をしていた父さんと専業主婦の母さんと3人暮らしだった僕・高原真守は、幸せな日々を過ごしていた。
次の連休に久しぶりに旅行に行こうか、いい温泉旅館の予約が取れたんだよ。
毎日仕事で忙しい父さんの嬉しい誘いに、僕たちは父さんの運転する車で片道3時間の旅に出かけた。
サービスエリアで美味しいソフトクリームを食べたり、車の中で父さんの大好きな海外アーティストの曲を聴きながら珍しく父さんの歌を聞いたり、到着した温泉旅館で男同士で温泉を楽しんで背中を流しっこしたり、料理も最高に美味しかった。
一泊二日の短い旅行だったけれど、父さんがいつも以上に饒舌だったのは、久しぶりの家族水入らずの時間を心から楽しんでくれていたからかもしれない。
あっという間に楽しかった旅行も終わり、高速を降りればもうすぐ家だというところまで帰ってきた時、対向車線を走っていた居眠り運転の車が突然僕たちの車に向かってきた。
父さんは僕たちを守るために正面衝突を避けようとして咄嗟にハンドルを切ったんだろう。
そこそこのスピードを出していた僕たちの車はものすごい勢いで反対側の壁にぶつかって止まったようだ。
そんな話を後に病院で警察から聞かされたけれど、後部座席でうつらうつらしていた僕は事故の瞬間を何も知らない。
僕が知っているのは、突然とんでもない衝撃と痛みに襲われて、正面を向くと血まみれの両親の姿があったこと。
「父さんっ、母さんっ!」
そう叫んだけど、両親は微動だにしなかったのは鮮明に覚えている。
すぐに救急車が呼ばれたけれどおそらく父さんと母さんは即死だったのだろうと思う。
そう思ってしまうくらい、両親は動きもしなかった。
僕は後部座席で抱きしめて持っていた大きなぬいぐるみが衝突の勢いを弱めてくれたようで、身体中を打撲したくらいで助かった。
病院で警察からそんな事故の詳細を父さんと母さんの死亡とともに聞かされた時は目の前が真っ暗になって、これからどうしたらいいのかわからなくなっていた。
とりあえず、父さんの秘書をしてくれていた人が率先してお葬式や、親族への連絡などを引き受けてくれた。
交通事故でたった一人奇跡的に助かった僕は、両親の棺を前になす術もなくただただ座り込むことしかできなかった。
こんなはずじゃなかったのに。
楽しい家族旅行の素敵な思い出になるはずだったのに。
なんで僕は一人だけ生き残ってしまったんだろう。
なんで僕だけ……。
あの日、サービスエリアで父さんが買ってくれた大きなクマのぬいぐるみが僕の命を助けたんだ。
まるであんな事故が起こるのを予期していたように。
あの事故から、告別式、火葬を終えた今日までの記憶があまりない。
今は、父さんと母さんの遺骨を前に何もする気にもならなかった。
ぼーっと座り込む僕の後ろでは集まってくれた親族が今後のことを話し合っている声が聞こえる。
今後のことというよりは僕を誰が引き取るかということの話がメインみたいだ。
てっきりたらい回しにされるのかと思っていたけれど、なぜかみんなして僕を引き取りたいと言い出している。
「うちが真守くんを引き取るわよ」
「何言っているの! うちの方がいいに決まってるわ! 同じ年の息子もいるんだし、あんたのところは女の子ばっかりで真守くんも居心地悪いでしょ!」
「いいや、うちが引き取る! 俺はなんと言っても真守の叔父なんだからな」
「そんなこと言ってお前は兄さんの遺産目当てだろう!」
「お前だってそうじゃないか!」
「真守くんは全ての遺産を受け継ぐたった一人の相続人だものね。引き取って自分たちが使う気なんでしょ? 義兄さんの会社、火の車だって話だものね」
「なんだよ、お前だってそういう狙いだろ! 金でもなきゃ誰が面倒くさい高校生の男なんか引き取るかよ!」
「ほら、本音が出た。やっぱりうちで面倒見るわ。真守くんだって同じ年の伸吾がいる方が安心でしょうし。ねぇ、真守くん!」
叔母さんの後ろでニヤニヤと笑っている従兄弟の伸吾。
正直、あいつと一緒に暮らすなんて嫌だ。
小さい頃から何故か僕の身体に触れたがって嫌だったけど意味がわからなくて放置してた。
でも最近になって、それが性的に触れられてるってわかって一気に鳥肌が立ったんだ。
伸吾の気持ちに気づいてからは極力会わないようにしていたのに。
一緒に暮らしたりしたらもう逃げ場がなくなってしまう。
伸吾と一緒に暮らすくらいなら、ここで一人で過ごした方がよっぽどいい。
「僕……もう15ですから一人で暮らします。だから、心配しないでください」
必死に思いを告げたけれど、
「何言ってんの! 15で一人暮らしなんて無理に決まってるでしょう! まだ子どものくせに!」
と一蹴されてしまう。
伸吾と一緒に住むなんて絶対嫌だし、でも正直言ってそんなに面識もない叔父さんたちのところに行くのも嫌だ。
でもこのままじゃ……。
一体どうしたらいいんだろう。
正直に言って今は何も考えたくなかった。
ただゆっくりと父さんや母さんとの別れの時間を過ごしたかったんだ。
すると、突然そこにいた大人達を窘めるような声が僕の耳に飛び込んできた。
「それをいうなら大人のくせに、なんていう話を傷心の子どもに聴かせているんですか! 最低ですね」
「だ、誰だ!!」
突然の声に叔父さんが顔を真っ赤にしながら、声のする方に向かって叫ぶと、スラリと長身の男性がもう一人長身の男性を伴って現れた。
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