健気な美少年は大富豪に愛される

波木真帆

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絶対に守ってみせる

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<sideセオドア>

ラミロの見つけた席はパフォーマンスを見る特等席。
そこが偶然空いているわけがない。

そもそも今日のデートはラミロの発案。
ラミロは最初からここでマモルにストリートパフォーマンスを見せるために席を取っておいたのだ。
だが、マモルはきっとそんなことを望まないだろう。
だからこそ、こっそりと偶然を装ったんだ。

ラミロもだいぶマモルのことがわかってきたと見える。

それでこそ私の友人だ。

心の中で感心しつつ、マモルをラミロとの間に座らせる。
これで、もしどこかから何かマモルに手出ししようとしても守ることができる。

予定されているストリートパフォーマーは全部で10人。
美しい音を奏でるピアノやアコーディオン、そしてヴァイオリン奏者の演奏から、アクロバティックなパフォーマンスまで多岐に渡る。

マモルはどれも初めてだと何度も言いながら目を輝かせ目の前のパフォーマンスに魅入っている。
その横顔を見ているだけでここに連れてくることができてよかったと思う。

同じようにマモルの楽しそうな横顔を見て嬉しそうにしているラミロに笑顔を見せると、ラミロからも笑みを返してきた。
きっと自分の考えたプランを喜んでくれているのが嬉しくてたまらないのだろう。
今までにそんなことしたことなかっただろうからな。

それがわかるのも私も同じだからだ。
今日ラミロと出会うまでに何をしようかと考えてサンドイッチを食べさせてみようと思いつき、それをマモルが喜んでくれた時は今のラミロ同様に嬉しかった。
愛しい人が喜んでくれるのを見るだけで幸せになるなんて……マモルと出会うまでは考えもつかなかったな。

ああ、この時間がたまらなく幸せだ。

そう思っていると、スマホに振動を感じた。

デート中にスマホに目をやるのはマナー違反だと思いつつも、なんとなく嫌な予感がしてマモルに気づかれないようにそっとスマホを取り出した。

画面表示を見ると、アキラからのメッセージ。
その表示に尚更嫌な予感が増した。

私がラミロとマモルを二人っきりにするはずがないと思ってくれているはずのアキラが、マモルの目の前でスマホに注意を向けさせるようなことをするわけがない。

とすれば、どうしても私に伝えたいことがあるということだ。

すぐにメッセージを開き、中身を確認すると

<危険人物がマモルを狙っています。その場所に注意してください>

という内容が書かれていた。

その簡潔な内容にこれが真実だと告げている。
その場所・・・・と言っているということは、アキラにはマモルの居場所も、そしてその危険人物の居場所もわかっているということだ。

わかっているならなぜ今捕まえないのか……。
それはきっと、マモルを狙っているという確証が欲しいのだ。
確実にその危険人物を捕まえるために。

それならば、それに乗ってやるまでだ。
決してマモルには手出しさせない。

私は急いでそのメッセージをコピーしてラミロに送った。
ラミロもすぐにその振動に気づき、マモルに気づかれないように表示を確認して、驚いたように私を見た。
私が小さく頷くとラミロはメッセージを確認した後で、ラミロも頷いてみせた。

さて、マモルを狙う危険人物とやら。

私たちが相手になってやる。


10人のストリートパフォーマンスが終わり、狙いはここではなかったかと思っていると突然11人目のパフォーマーが現れた。

誰も人数など数えてもいないのだから、奴が出てきたことに誰も違和感を感じていないようだが、私にはわかる。

これがマモルを狙う危険人物だと。
常軌を逸したその表情、そしてマモルを見つけた時の悍ましい笑み。

そのどれもが奴が犯人だとわかった。

マモルを見つけて一目散に駆け寄ってきた奴の手には小さなナイフ。
マモルもその異様な雰囲気に気づいたようで大声をあげた。

私は咄嗟にマモルを抱きしめ、その場からさっと離れた。
奴はラミロに任せれば問題ない。

私の腕の中で恐怖に怯えるマモルを安心させるように大丈夫だと伝え、強く抱きしめる。
その背後ではラミロが簡単に奴を取り押さえていた。

何が何だかわからないと言った様子のマモルに不審者を取り押さえたと話をすると、

『どこにいるんですか?』

と聞いてきたが、マモルに奴を見せる気は一切ない。
奴の記憶などほんの少しでも残したくないのだ。

取り押さえられたと知って安心したのか、私の腕の中から下りると言い出したが、そんなことさせるわけがない。
まだ仲間がいないとも限らないし、何よりようやくマモルを腕に抱けたのだ。

もうしばらくはこのままでいてもいいだろう。

素直にその思いを伝えると、マモルは真っ赤な顔をしながらも私の腕の中にとどまってくれた。
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