健気な美少年は大富豪に愛される

波木真帆

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驚きの話

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すみません、予約投稿時間を間違えてました(汗)


  *   *   *



<side真守>

『アロン、彼は?』

『マモルの両親の担当弁護士さんだったナルセさんって、覚えてる?』

『うん。すっごく良くしてもらったよ』

『彼は、その彼の恋人さんなんだって。ねっ』

『は、はい。僕……砂川すながわ真琴まことと言います。今日は突然お邪魔してすみません』

『えっ、あの成瀬さんの恋人? あ、あの僕は、和倉わくら真守まもるです。彼はアロン。あの、でもどうしてここに?』

あまりにも突然の出来事に驚くしかなかった。

『優一さんが和倉さんに頼まれたお仕事でここに来ることになってついてきたんです。それで仕事をしている間、真守くんたちと一緒に待ってて欲しいって言われて……でも突然で驚かせてしまいましたよね』

『明さんが成瀬さんに? お父さんたちのことかな?』

『仕事内容はあまり話せないんですけど……』

『ああ、そうですよね。あの、じゃあよかったらここで一緒におしゃべりしましょう。こっちにどうぞ』

僕の隣に案内するとちょこちょこと来て座ってくれた。
ああ、なんだかすごくかわいいな。

『ねぇ、マコトはいくつなの?』

『あ、僕は22歳です』

『『ええーーっ!!』』

てっきり僕と同じくらいだと思っていたのに、4つも年上で僕もアロンも驚いてしまった。

『そんなにびっくりしますか? 真守くんはいくつ?』

『あ、ごめんなさい。僕、18です。てっきり同じ年くらいだと思って』

『ああ、今日はちょっと子どもっぽい格好をしてしまったからかも。こう見えても普段はちゃんと年相応に見えるんだよ』

そう言いつつも、少し拗ねた様子がなんだかかわいいと思ってしまった。


『ねぇ、成瀬さんって優しい?』

『えっ?』

『いや、お仕事でしか会ったことがないからあまりわからなくて……』

『ふふっ。すごく優しいよ。僕だけに優しいっていつも言われてるけど』

『へぇ、そうなんだ。いいなぁ』

『真守くんには恋人はいないの?』

『恋人っていうか……』

その言葉に頭に浮かんだのはセオドアさまのこと。
でも恋人なんて……まだ言えるような立場じゃないよね。

『ふふっ。気になる人はいるんだよね?』

『もうアロンったら』

『ええー、その話もっと聞きたい!』

真琴くんの言葉になんだか楽しくなって、気づけばみんなでいろんなことを話し始めていた。


<sideセオドア>

『彼は、智春さんが高校時代に付き合った彼女との間に生まれた子どもです。同級生だった彼女は妊娠の事実を隠し、家族ともども突然智春さんの前からいなくなったそうで、智春さんは佐山くんの存在を知らずに、私の妹・雪乃と結婚し、真守が生まれたんです』

『そんなことが……』

『佐山くんが父親である智春さんの存在を知ったのは、母親が亡くなる間際。父親の名前だけを告げて亡くなったそうで、彼はその名前を頼りに智春さんの元を訪ねたんです。話を聞いて、智春さんは佐山くんと出会えたことを喜びつつも、多感な年頃だった真守には何も伝えずに、雪乃にだけその事実を告げていました』

『アキラはマモルの父からその話を聞いたのか?』

『私は妹の雪乃からその事実を聞いたんです。智春さんは佐山くんと彼女に辛い思いをさせたことを悔やんでいたようですね。だから自分に何かあった時には家や財産は真守に、そして、会社は佐山くんに継がせるようにしたんですよ』

『なるほど。そういうことか』

少し彼に言葉をかけてみようか……そう思った時、私の隣にいたラミロが先に声をかけた。

『その、君は……マモルの父親に対して憎しみは抱かなかったのか? 母親と二人で辛い思いをしたこともあったのではないか? それなのに、どうしてマモルを守ろうと思えたのだ?』

彼はその質問をじっと聞きながら、ラミロを見つめてはっきりと答えた。

『母は父……智春さんを利用したんです』

『えっ? それどういう意味だ?』

『母は高校を卒業したら両親の借金のカタとして、無理やり結婚させられることが決まっていたそうです。そんな男に処女を奪われるくらいなら自分の好きな相手と経験したい。そう思って、智春さんに相談があると持ちかけて誘惑したんです。ですが、その一度の行為で妊娠してしまった。両親に知られて、中絶させられそうになったので逃げたんです。母はどうしても智春さんとの子どもを産みたくて、田舎に逃げ僕を産みました。それからは二人っきりの生活でしたけど、楽しかったですよ。父親がいなくて寂しいと思いましたけど、母からずっとお父さんはすごく優しくていい人だったって聞かされてましたから父親への憎しみなんてありませんでした。まさかその父が生きてるなんて思わなかったので、嬉しくて探してしまったんですが、普通なら、突然あなたの息子ですなんて言っても信じてもらえないですよね。でも、智春さんは信じてくれたんです。母の面影があると、急にいなくなってずっと気になっていたと、そう言ってくれたんです』

その時のことを思い出しているのだろう。
彼の目に涙が溢れている。

『僕を信じてくれた智春さんのために一生捧げていけたらって、そう思えたんです。まさか、智春さんがあんなに早く亡くなるとは思っていませんでしたが、今度は智春さんの分まで残された真守くんを大事に守ろうと思ったんです』

『そうだったのか……。だが、マモルなら其方が母親違いとはいえ、兄弟だと知れば喜ぶのではないか?』

『いえ、そんなことまで願ったら贅沢すぎます。僕はこれからも真守くんのそばで見守ることができたら、それだけでいいんです。僕が実は兄弟だったなんて……そんなこと烏滸がましすぎます』

そう話す彼は少し寂しそうに見えた。
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