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番外編
パインラムネと天使 6
「すごい、すごーい!」
俺がオムレツの形を整えるたびに、真琴から歓声が上がる。
「ゆーくん、とってもじょーずー!」
「ははっ。ありがとう」
素直に褒められるのがこんなに嬉しく感じるのは、相手が真琴だからだろう。
あっという間にオムレツを仕上げて、サラダを盛り付けた皿に載せる。
温めたパンとスープ、そしてデザートのマンゴーをトレイに載せて、テーブルに運んだ。
「みて、にぃにぃ。おいしそーだよ」
「本当、おいしそうだね。真琴はゆーくんに食べさせてもらう?」
「たべさせてもらうー!」
可愛い返事に笑いながら、悠真さんが俺に真琴を渡してくれた。
「じゃあ、お願いしますね」
「ええ。喜んで」
小さな真琴を腕に抱く。その温もりが愛おしい。
「真琴、食べようか」
「はーい。いただきまーす!」
胸の前で可愛らしく手を合わせる姿は、いつもの真琴と変わらない仕草。
昔から変わらない仕草に、思わず顔が綻ぶ。
「真琴、どれから食べる?」
「オムレツー!」
どうやら俺のオムレツをよほど気に入ってくれたようだ。
スプーンで小さくオムレツを掬い、ふぅ、と息を吹きかける。
「はい。真琴、あーん」
「あーん!」
パクリと口に入れた瞬間、真琴の表情がぱっと明るくなる。
「おいしー!」
その一言で、胸の奥がじんわりと温かくなった。
「もっと、たべるー!」
ねだるように口を開けるのが可愛い。
俺はまたオムレツを掬い、真琴の口に運んだ。
「あーん」
「あーん!」
嬉しそうに食べる真琴を腕の中に抱きながら、何度もそれを繰り返す。
その様子を、向かいに座る悠真さんが優しい目で見守っていた。
「真琴、すっかり甘えてる」
「成瀬のことを本能で覚えているんだろうな」
「ははっ。そうなら嬉しいよ」
俺のことを忘れていても、真琴にとって安心できる存在と思われているならそれでいい。
「ゆーくん、つぎー! ぱん、たべるー!」
「はいはい」
指でちぎって口に運ぶと、真琴の小さな口が俺の指をパクリと咥えた。
その感触に身体がピクリと反応する。
当の真琴は、俺の反応に笑う。
「あー、ゆーくんのおてて、たべちゃったー」
天使のような笑顔を見せられて、思わず言葉に詰まる。
「それは、困ったな」
どうにか平静を装ってそう返すと、真琴は楽しそうにくすくすと笑った。
「じゃあ、まことのおててもたべていーよ」
そう言って、小さな指を俺の口元に持ってくる。
チラリと安慶名に視線を向けると、意味深な笑みを浮かべている。
俺がどんな反応をするか、楽しんでいるんだろう。
俺はそっと真琴の手を包み込む。
小さくて柔らかい指に笑みが溢れる。
そのまま、真琴の指先にそっと唇を当てた。
「ぱくってして、いいのにー」
俺のその対応に不満そうに頬を膨らませる真琴がなんとも可愛い。
「なくなったら困るからな。真琴は大事にしたいんだ」
「だいじ?」
「ああ、大切なものは簡単に食べたりしないんだ」
そういうと真琴は少しだけ考えるように首を傾げる。
そして、嬉しそうに笑った。
「そっかー。じゃあ、まこと、たいせつなんだねー」
「ああ、そうだよ」
迷いなく頷くと真琴は嬉しそうに身体を寄せてくる。
「ゆーくん、だいすきー!」
その言葉に、ほんの一瞬だけ息が止まった。
記憶がなくても、こうして名前を呼んで、好きだと言ってくれる。
それだけで十分過ぎるほど満たされる。
「俺も、真琴が大好きだよ」
小さくそう呟いて、もう一度その身体を抱き寄せた。
「本当に、随分と変わったな」
不意に、横からそんな声が落ちてきた。
視線を向けると、安慶名がコーヒーを片手にこちらを見ていた。
「真琴くんの姿が変わっても、記憶がなくなってもお前の愛情は変わらないんだな」
「まぁな、安慶名だって悠真さんが同じ立場になれば変わらないだろう」
「それはもちろん。だが、昔の成瀬を知っているから驚いただけだ。本当、人間らしくなったもんだな」
確かに真琴と出会う前の俺は、誰かに愛情を抱くなんて考えたこともなかった。
その頃を知っている安慶名からみれば、今の俺の姿は信じられないだろう。
「いや。俺は、変わってないよ」
「えっ?」
「やっと、そうなれただけだ」
その言葉に、安慶名は一瞬驚きの表情を見せたが、
「なるほどな」
納得したように、静かに笑った。
俺がオムレツの形を整えるたびに、真琴から歓声が上がる。
「ゆーくん、とってもじょーずー!」
「ははっ。ありがとう」
素直に褒められるのがこんなに嬉しく感じるのは、相手が真琴だからだろう。
あっという間にオムレツを仕上げて、サラダを盛り付けた皿に載せる。
温めたパンとスープ、そしてデザートのマンゴーをトレイに載せて、テーブルに運んだ。
「みて、にぃにぃ。おいしそーだよ」
「本当、おいしそうだね。真琴はゆーくんに食べさせてもらう?」
「たべさせてもらうー!」
可愛い返事に笑いながら、悠真さんが俺に真琴を渡してくれた。
「じゃあ、お願いしますね」
「ええ。喜んで」
小さな真琴を腕に抱く。その温もりが愛おしい。
「真琴、食べようか」
「はーい。いただきまーす!」
胸の前で可愛らしく手を合わせる姿は、いつもの真琴と変わらない仕草。
昔から変わらない仕草に、思わず顔が綻ぶ。
「真琴、どれから食べる?」
「オムレツー!」
どうやら俺のオムレツをよほど気に入ってくれたようだ。
スプーンで小さくオムレツを掬い、ふぅ、と息を吹きかける。
「はい。真琴、あーん」
「あーん!」
パクリと口に入れた瞬間、真琴の表情がぱっと明るくなる。
「おいしー!」
その一言で、胸の奥がじんわりと温かくなった。
「もっと、たべるー!」
ねだるように口を開けるのが可愛い。
俺はまたオムレツを掬い、真琴の口に運んだ。
「あーん」
「あーん!」
嬉しそうに食べる真琴を腕の中に抱きながら、何度もそれを繰り返す。
その様子を、向かいに座る悠真さんが優しい目で見守っていた。
「真琴、すっかり甘えてる」
「成瀬のことを本能で覚えているんだろうな」
「ははっ。そうなら嬉しいよ」
俺のことを忘れていても、真琴にとって安心できる存在と思われているならそれでいい。
「ゆーくん、つぎー! ぱん、たべるー!」
「はいはい」
指でちぎって口に運ぶと、真琴の小さな口が俺の指をパクリと咥えた。
その感触に身体がピクリと反応する。
当の真琴は、俺の反応に笑う。
「あー、ゆーくんのおてて、たべちゃったー」
天使のような笑顔を見せられて、思わず言葉に詰まる。
「それは、困ったな」
どうにか平静を装ってそう返すと、真琴は楽しそうにくすくすと笑った。
「じゃあ、まことのおててもたべていーよ」
そう言って、小さな指を俺の口元に持ってくる。
チラリと安慶名に視線を向けると、意味深な笑みを浮かべている。
俺がどんな反応をするか、楽しんでいるんだろう。
俺はそっと真琴の手を包み込む。
小さくて柔らかい指に笑みが溢れる。
そのまま、真琴の指先にそっと唇を当てた。
「ぱくってして、いいのにー」
俺のその対応に不満そうに頬を膨らませる真琴がなんとも可愛い。
「なくなったら困るからな。真琴は大事にしたいんだ」
「だいじ?」
「ああ、大切なものは簡単に食べたりしないんだ」
そういうと真琴は少しだけ考えるように首を傾げる。
そして、嬉しそうに笑った。
「そっかー。じゃあ、まこと、たいせつなんだねー」
「ああ、そうだよ」
迷いなく頷くと真琴は嬉しそうに身体を寄せてくる。
「ゆーくん、だいすきー!」
その言葉に、ほんの一瞬だけ息が止まった。
記憶がなくても、こうして名前を呼んで、好きだと言ってくれる。
それだけで十分過ぎるほど満たされる。
「俺も、真琴が大好きだよ」
小さくそう呟いて、もう一度その身体を抱き寄せた。
「本当に、随分と変わったな」
不意に、横からそんな声が落ちてきた。
視線を向けると、安慶名がコーヒーを片手にこちらを見ていた。
「真琴くんの姿が変わっても、記憶がなくなってもお前の愛情は変わらないんだな」
「まぁな、安慶名だって悠真さんが同じ立場になれば変わらないだろう」
「それはもちろん。だが、昔の成瀬を知っているから驚いただけだ。本当、人間らしくなったもんだな」
確かに真琴と出会う前の俺は、誰かに愛情を抱くなんて考えたこともなかった。
その頃を知っている安慶名からみれば、今の俺の姿は信じられないだろう。
「いや。俺は、変わってないよ」
「えっ?」
「やっと、そうなれただけだ」
その言葉に、安慶名は一瞬驚きの表情を見せたが、
「なるほどな」
納得したように、静かに笑った。
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