27 / 95
一緒にいたい
しおりを挟む
「真琴……このまま、ここにずっといて欲しい」
「えっ? それって、どういう意味ですか?」
「真琴には遠回しなことを言って勘違いはさせたくないからはっきり言うよ。ここで一緒に暮らして欲しいんだ。怪我しているからとかそういうことじゃなくて、もうほんの少しの間も真琴と離れていたくないし、それに何より……あの部屋に帰したくないんだ」
「あの部屋に? どうして、ですか?」
「あの男に家を知られているだろう? 今はまだ警察にいるから大丈夫だとは思うが、あいつの仲間がもしかして襲ってくるかもしれない。私は真琴をもう二度と危険な目に遭わせたくないんだ」
ああ、そうか。
いろんなことがありすぎてすっかり頭から消え去っていた……というか、あまりにも嫌な思い出すぎて記憶から抹消してしまいたかったのかもしれない。
一気に恐怖が甦ってきて、身体が震える。
やっぱり僕、まだ怖かったんだ。
「ごめん、怖がらせるつもりはなかったんだが……」
そう言って抱きしめながら、優しく背中を撫でてくれる。
優一さんの手の温もりに震えがおさまっていく。
「優一さん……ありがとうございます。僕……優一さんがいなかったら今頃あの部屋で恐怖に怯えていたかもしれません。これからずっとあの部屋で怯えながら暮らすのは怖いです。でも……」
「でも?」
「あの部屋は兄さんの会社の社長さんがご厚意で貸してくださった部屋なので……すぐにそこを出るのは難しいかもしれないです。それに今度、兄さんが出張で上京してくるんですけど、出張の時は毎回あの部屋に一緒に泊まることになっているので、もしあの部屋に泊まれないとなると、今から部屋も探さないといけないだろうし……兄さんを困らせたくないんです」
「真琴は優しいな」
「そんなこと……」
「いや、優しいよ。あんなに怖い思いをしたのに、自分のことより周りのことばかり心配している。それは素晴らしいことだと思うけれど、今は怪我もしているんだ。もう少し自分のことを優先して考えてもいいんじゃないかな?」
優一さんの言葉は正しい。
だけど、僕はやっぱり兄さんたちを困らせたくない……。
でも、一人であの部屋に住むのは怖い……。
どうしたらいいんだろう。
「真琴……このままあの部屋に住み続けたとして……もし、お兄さんが奴に襲われて怪我でもしてしまったらどうするんだ?」
「――っ、そんな――っ」
「ごめん、酷いことを言ったな。でも、それくらい心配なんだ。ああいった暴力に走る人間は相手が真琴かどうかなんて確認もせずに感情で襲ってくることがある。私は今までそういった人間を何百人も見てきているんだ。だから、本当に心配なんだよ。ここで私が真琴を守るという事は、同時にお兄さんを危険から守るということにならないか?」
「あ――っ」
確かにそうだ。
もし、僕のせいで兄さんが怪我をして……いや、もしかしたら怪我以上のことになったりしたら……僕はきっと自分を許せない。
一生悔やんでも悔やみきれない罪を背負って生きていくことになるんだ。
そんなことにならないように優一さんは言ってくれているんだな……。
今まですごく良くしてくれた倉橋さんには申し訳ないけれど、兄さんを守るためになら、僕の答えはただひとつ。
「あの、僕……ここでお世話になりたいです」
「そうか、決めてくれるか」
「はい。ご迷惑かけちゃうかもしれないですけど……でも、僕……優一さんと一緒にいたいです」
「ああっ、真琴っ!!」
優一さんにギュッと抱きしめられて、そんなにも心配してくれていたのだなと申し訳ない以上に嬉しさが込み上げる。
「じゃあ、とりあえずお兄さんに部屋を出ることにしたと話をしようか?」
「えっ、あ、はい。そう、ですね……あ、でも……部屋を出る理由をどうやって伝えたらいいか……」
「そうだな……。なら、私がお兄さんに直接連絡しようか」
「えっ、でも……」
「大丈夫、悪いようにはしないから」
にっこりと微笑む優一さんに一瞬ドキっとしたけれど、優一さんならうまく話してくれるだろう……そう思って、お願いすることにした。
僕の番号からの方が安心するだろうからと言うのでスマホを渡し、
「後で真琴に変わるからね」
と言いながら、電話をかけ始めた。
――恐れ入ります、私……真琴さんとお付き合いをさせていただいております成瀬と申しますが――
優一さんの第一声にドキドキして、思わず布団を被ってしまった。
優一さん……僕とお付き合いしてるってちゃんと話してくれた……。
それだけで胸が熱くなってくる。
わぁー、わぁーっ!
今度兄さんに会った時、どんな顔をすればいいんだろう。
布団の中でバタバタと身悶えていると、
「真琴、真琴」
と優一さんの声が聞こえた。
慌てて布団から顔を出すと、
「お兄さんだよ」
とスマホを差し出された。
ええっ、なんて話したらいいんだろう……。
ドキドキしながら受け取り、恐る恐る耳に当てながら
――もしもし、兄さん?
そう声をかけると、至って冷静な兄さんの声が聞こえた。
「えっ? それって、どういう意味ですか?」
「真琴には遠回しなことを言って勘違いはさせたくないからはっきり言うよ。ここで一緒に暮らして欲しいんだ。怪我しているからとかそういうことじゃなくて、もうほんの少しの間も真琴と離れていたくないし、それに何より……あの部屋に帰したくないんだ」
「あの部屋に? どうして、ですか?」
「あの男に家を知られているだろう? 今はまだ警察にいるから大丈夫だとは思うが、あいつの仲間がもしかして襲ってくるかもしれない。私は真琴をもう二度と危険な目に遭わせたくないんだ」
ああ、そうか。
いろんなことがありすぎてすっかり頭から消え去っていた……というか、あまりにも嫌な思い出すぎて記憶から抹消してしまいたかったのかもしれない。
一気に恐怖が甦ってきて、身体が震える。
やっぱり僕、まだ怖かったんだ。
「ごめん、怖がらせるつもりはなかったんだが……」
そう言って抱きしめながら、優しく背中を撫でてくれる。
優一さんの手の温もりに震えがおさまっていく。
「優一さん……ありがとうございます。僕……優一さんがいなかったら今頃あの部屋で恐怖に怯えていたかもしれません。これからずっとあの部屋で怯えながら暮らすのは怖いです。でも……」
「でも?」
「あの部屋は兄さんの会社の社長さんがご厚意で貸してくださった部屋なので……すぐにそこを出るのは難しいかもしれないです。それに今度、兄さんが出張で上京してくるんですけど、出張の時は毎回あの部屋に一緒に泊まることになっているので、もしあの部屋に泊まれないとなると、今から部屋も探さないといけないだろうし……兄さんを困らせたくないんです」
「真琴は優しいな」
「そんなこと……」
「いや、優しいよ。あんなに怖い思いをしたのに、自分のことより周りのことばかり心配している。それは素晴らしいことだと思うけれど、今は怪我もしているんだ。もう少し自分のことを優先して考えてもいいんじゃないかな?」
優一さんの言葉は正しい。
だけど、僕はやっぱり兄さんたちを困らせたくない……。
でも、一人であの部屋に住むのは怖い……。
どうしたらいいんだろう。
「真琴……このままあの部屋に住み続けたとして……もし、お兄さんが奴に襲われて怪我でもしてしまったらどうするんだ?」
「――っ、そんな――っ」
「ごめん、酷いことを言ったな。でも、それくらい心配なんだ。ああいった暴力に走る人間は相手が真琴かどうかなんて確認もせずに感情で襲ってくることがある。私は今までそういった人間を何百人も見てきているんだ。だから、本当に心配なんだよ。ここで私が真琴を守るという事は、同時にお兄さんを危険から守るということにならないか?」
「あ――っ」
確かにそうだ。
もし、僕のせいで兄さんが怪我をして……いや、もしかしたら怪我以上のことになったりしたら……僕はきっと自分を許せない。
一生悔やんでも悔やみきれない罪を背負って生きていくことになるんだ。
そんなことにならないように優一さんは言ってくれているんだな……。
今まですごく良くしてくれた倉橋さんには申し訳ないけれど、兄さんを守るためになら、僕の答えはただひとつ。
「あの、僕……ここでお世話になりたいです」
「そうか、決めてくれるか」
「はい。ご迷惑かけちゃうかもしれないですけど……でも、僕……優一さんと一緒にいたいです」
「ああっ、真琴っ!!」
優一さんにギュッと抱きしめられて、そんなにも心配してくれていたのだなと申し訳ない以上に嬉しさが込み上げる。
「じゃあ、とりあえずお兄さんに部屋を出ることにしたと話をしようか?」
「えっ、あ、はい。そう、ですね……あ、でも……部屋を出る理由をどうやって伝えたらいいか……」
「そうだな……。なら、私がお兄さんに直接連絡しようか」
「えっ、でも……」
「大丈夫、悪いようにはしないから」
にっこりと微笑む優一さんに一瞬ドキっとしたけれど、優一さんならうまく話してくれるだろう……そう思って、お願いすることにした。
僕の番号からの方が安心するだろうからと言うのでスマホを渡し、
「後で真琴に変わるからね」
と言いながら、電話をかけ始めた。
――恐れ入ります、私……真琴さんとお付き合いをさせていただいております成瀬と申しますが――
優一さんの第一声にドキドキして、思わず布団を被ってしまった。
優一さん……僕とお付き合いしてるってちゃんと話してくれた……。
それだけで胸が熱くなってくる。
わぁー、わぁーっ!
今度兄さんに会った時、どんな顔をすればいいんだろう。
布団の中でバタバタと身悶えていると、
「真琴、真琴」
と優一さんの声が聞こえた。
慌てて布団から顔を出すと、
「お兄さんだよ」
とスマホを差し出された。
ええっ、なんて話したらいいんだろう……。
ドキドキしながら受け取り、恐る恐る耳に当てながら
――もしもし、兄さん?
そう声をかけると、至って冷静な兄さんの声が聞こえた。
486
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
的中率100%の占い師ですが、運命の相手を追い返そうとしたら不器用な軍人がやってきました
水凪しおん
BL
煌都の裏路地でひっそりと恋愛相談専門の占い所を営む青年・紫苑。
彼は的中率百パーセントの腕を持つが、実はオメガであり、運命や本能に縛られる人生を深く憎んでいた。
ある日、自らの運命の相手が訪れるという予言を見た紫苑は店を閉めようとするが、間一髪で軍の青年将校・李翔が訪れてしまう。
李翔は幼い頃に出会った「忘れられない人」を探していた。
運命から逃れるために冷たく突き放す紫苑。
だが、李翔の誠実さと不器用な優しさに触れるうち、紫苑の頑なだった心は少しずつ溶かされていく。
過去の記憶が交差する中、紫苑は李翔の命の危機を救うため、自ら忌み嫌っていた運命に立ち向かう決意をする。
東洋の情緒漂う架空の巨大都市を舞台に、運命に抗いながらも惹かれ合う二人を描く中華風オメガバース・ファンタジー。
目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた
木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。
自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。
しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。
ユエ×フォラン
(ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)
騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!
楠ノ木雫
恋愛
朝目が覚めたら、自分の隣に知らない男が寝ていた。
テレシアは、男爵令嬢でありつつも騎士団員の道を選び日々精進していた。
「お前との婚約は破棄だ」
ある日王城で開かれたガーデンパーティーの警備中婚約者に婚約破棄を言い出された。テレシアは承諾したが、それを目撃していた先輩方が見かねて城下町に連れていきお酒を奢った。そのせいでテレシアはべろんべろんに酔っ払い、次の日ベッドに一糸まとわぬ姿の自分と知らない男性が横たわっていた。朝の鍛錬の時間が迫っていたため眠っていた男性を放置して鍛錬場に向かったのだが、ちらりと見えた男性の服の一枚。それ、もしかして超エリート騎士団である近衛騎士団の制服では……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
※この作品は短編を新たに作り直しました。設定などが変わっている部分があります。(旧題:無慈悲な悪魔の騎士団長に迫られて困ってます!〜下っ端騎士団員(男爵令嬢)クビの危機!〜)
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる