南国特有のスコールが初恋を連れてきてくれました

波木真帆

文字の大きさ
25 / 79

愛おしくてたまらない※

しおりを挟む
「片付けは私がやります」

「朝食も一緒に作りましたし、片付けも一緒にしましょうか」

悠真の申し出にそう答えると悠真は嬉しそうに微笑んだ。

キッチンに二人で並んで、私が洗った食器を悠真が嬉しそうに拭き上げていく。朝食作りに引き続いての共同作業が、まるで新婚生活を彷彿とさせ幸せを感じずにはいられない。それどころか楽しすぎてあっという間に作業を終えてしまい、寂しさすら感じてしまう。

「伊織さん、お疲れさまでした」

蛇口レバーを下げ水を止めたタイミングでさっとタオルが差し出される。
悠真とのそんな阿吽の呼吸が嬉しくてたまらないのだ。

悠真にお礼を言い、手を拭きながら尋ねた。

「さて、せっかく夏季休暇を頂きましたからどこかへ行きますか?」

「伊織さんはどこか行きたい場所はありますか?」

「私は……悠真といられるならどこへでも着いて行きますよ」

そう、それが本心だ。
東京へ帰ればそう簡単には会えなくなるのだ。
このまま悠真の自宅で過ごしてもいい、悠真が出かけたいなら外にも行こう。
だから、ずっと悠真と一緒にいたい。私の願いはそれだけだ。

そこまで告げたら流石に重いと言われるかもしれないと心の中に留めるだけにしておいたが、私の思いはそれしかない。

「嬉しいです」

ああ、よかった。悠真が笑ってくれた。
私の重すぎる愛にもこうやって笑顔を向けてくれる。

「それなら、夕方まではこのままここで家で過ごしたいです。夕方になったら少し行きたい場所があるので一緒に来てもらえますか?」

「もちろんですよ。どこにつれて行ってくれるのですか?」

「まだ秘密です」

笑顔でそう答える悠真がどれだけ可愛いか、もう言葉にすることすらできない。私は自分の理性が飛びそうになるのを必死に抑えながら、

「楽しみですね」

と答えるのが精一杯だった。

しかし、悠真は私のそんな状況に気づいているのかいないのか、突然私を見上げた。

「あの、伊織さん……出かけるまで、その……寝室に、行きませんか?」

可愛らしく頬をピンクに染めて誘ってくる。
悠真に誘われたという事実が信じられなくて思わず言葉に詰まると、悠真はピンク色の肌を真っ赤に染め上げた。

「あっ、いえ……いいんです。ごめんなさ――わっ!」

慌てて謝ろうとする悠真を急いで抱き上げる。

「すみません。誤解をさせてしまって……違うんです! 悠真が誘ってくれたのが嬉しくて昇天してしまいました。本当です!」

悠真は驚きの表情から一転、嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「よかったです。私からお誘いするなんてはしたないと思われるかと……」

まだほんのりと赤い顔でホッとしたように言ったが、はしたないなんて思うはずがない。こんなにも可愛くて純粋な悠真が誘ってくれたことが幸せでしかないのに。

あまりの嬉しさに昇天してしまったせいで悠真を一瞬でも寂しがらせてしまった。そんな思いをさせた償いはしないといけないな。

これから夕方までいっぱい悠真に幸せを与えるとしよう。
悠真の方から誘ってくれたのだから、少しくらい激しくしてもいいだろうか。
もし、夕方歩けなければ私が抱いてつれて行けばいい。
そうだな、そうしよう。

頭の中でさっと考えをまとめると、私は悠真を抱きかかえたまますぐに寝室に戻った。

悠真のみずみずしく滑らかな肌に触れるのも好きなのだが、私のTシャツを着ただけの悠真も捨て難い。脱がすのは勿体無いか。

私は悠真の服はそのままにしてベッドに寝かせた。
そのまま私の悠真の隣に身を滑らせる。

「悠真……」

優しく囁くと、悠真はゆっくりと目を閉じた。
悠真が私とのキスを望んでいる。それがわかるだけで私は嬉しかった。

ゆっくりと悠真の柔らかな唇に自分のそれを重ね合わせると、ほんのりと香る甘いマンゴーの香りが、いつものキスよりもずっと刺激的で官能的にしてくれる気がする。下唇にチュッと吸い付くと、悠真の唇が開き私の舌を中に導いてくれた。

ゆっくり味わおうと思っていたくせに、悠真に誘われるがままに悠真の口内を舐め尽くしていく。
何度も角度を変え悠真の口内を貪って長い長いキスを終え唇を離すと、どちらのものともわからない唾液が私の唇の端から垂れていく感覚があった。

悠真はそれを恍惚とした表情でそっと自分の舌で舐め取っていく。

「おいしぃ……」

ああ、もうだめだ。
私は悠真のその嬉しそうな顔を見た瞬間、自分の理性が飛んだのがわかった。
それから激しく私の愛をぶつけ、悠真が散々喘がせ続け何度目かの白濁を吐き出したところで私はようやく我に返った。

時計を見ると昼を疾うに過ぎている。
少なくとも五時間はしていたことになる。

悠真はきっと疲れてしまったのだろう。
今は私の腕の中ですやすやと眠っている。
私はまた己の欲望のままに悠真を貪ってしまった。

悠真を疲れさせてしまったことへの後悔はあるが、悠真にここまで深い愛をぶつけたことはなんの後悔もない。
信頼しきった表情で私に寝顔を見せてくれる愛おしい悠真を腕の中に抱ける喜びをひしひしと感じながらも、今はまだ考えたくもない悠真と離れる日のことがふと頭をよぎって心が苦しくなる。

本当にこのまま抱いてつれて帰れたら……。
何度その思いがよぎったか知れやしない。

この数日で数年過ごしたような濃密な時間が悠真との別れをより離れ難いものにしている。
悠真……悠真……。

自分がこんなにも恋に溺れる人間だとは思いもしなかった。
自分の命を投げ打ってでも守りたい、愛おしいと思う存在ができるなんて……。
悠真との出会いは本当に奇跡だったな。しかも沖縄でなんて……。

愛してる、愛してる、愛してる……。

何度言葉にしても足りないほどの愛を悠真に捧げよう。
私の愛は今までもこれからも全て悠真だけだ。

その誓いの証として、私は寝ている悠真の左胸に花弁を散らした。


しばらく経って悠真が目を覚まし、一緒にお風呂に向かった。
昼間の風呂場は夜とは雰囲気を変えていたが、明るい光の下で悠真を愛でることができる最高の時間だった。

あまりにも明るい風呂に悠真は恥ずかしがっていたが、足に力が入らず一人では入れないと知って私に全てを委ねてくれた。
手加減もできずに貪ってしまった私のせいだが、悠真は私を責める言葉などは一切言わず、ほんのりと頬を染めながら私に身体を洗わせてくれた。

ほかほかになった悠真をバスタオルで包み、私はバスタオルを腰に巻いたまま悠真を抱き上げ寝室に戻った。

これ以上、悠真の裸体を見ていると夕方出かけられなくなる。
今日の服を選んで欲しいと言われ悠真のクローゼットから今日のコーディネートを選び、悠真に服を着せた。

私も悠真の格好に合うような服に着替え、リビングに連れていった。
まだ疲れている悠真に昼食を作らせるどころか働かせるわけにはいかない。
遅くなった昼食を軽く作りながら、寝室の汚れ物の洗濯を始めた。

食事を終え、ソファーに座っている悠真に見守られながら洗濯物を干した。
沖縄の太陽の浴びながら、横を見ると悠真がこちらを見ている。
そんな姿が見られるだけで喜びが込み上げる。

ああ……そうだ、いつかこうやっていつでも悠真の姿を感じられるような家を建てよう。

その日は近い将来必ずやってくる。
だって私たちは一生を共に過ごすのだから。

これからの長い人生の中で離れて暮らす時期などほんの数年だ。

だからその時間を寂しいと思うよりも今一緒に過ごせること、そして未来永劫一緒に過ごせることを楽しむ方がいい。

私は洗濯物を干しながら、悠真との将来を想像して幸せに満ち溢れた時間を過ごした。
しおりを挟む
感想 59

あなたにおすすめの小説

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

処理中です...