74 / 79
番外編
楽しい夜 <前編>
祐悟がロレーヌ総帥にプレゼントしたほろ酔い状態になる薬。
その薬を試して感想を聞かせて欲しいと持ちかけられた伊織視点のお話。
すでに悠真と伊織は西表島の新居に移り住み、甘い新婚生活を過ごしています。
楽しんでいただけると嬉しいです。
* * *
<side伊織>
美味しいステーキ肉をもらったからと、悠真と過ごす西表の自宅に倉橋さんが届けてくれた。
もちろん倉橋さんのいるところ、藤乃くんありというわけで、二人は一緒に我が家にやってきた。
せっかくだから一緒に食事をと誘い、夕食を共にすることになった。
料理人として働いていることもあって、自宅のキッチンにはかなりこだわって作ってもらった。
設計士の方とも何度も意見交換をして、一切の妥協もない満足いく仕上がりになったと思う。
おかげで毎日の料理が楽しくてたまらない。
それはきっと悠真のために作るからというのもあるのだろうが。
ステーキにはガーリックライスが合うが、お互いに夜は愛しい人との甘い夜を過ごすことは決まっている。
だから、愛しい人がキスを拒んだりしないように暗黙の了解でそれはやめておいた。
それを抜きにしても美味しい料理を作ることができる。
いや、料理人として作らなければいけない。
美味しい料理の傍にはこれまた最高のワイン。
それも倉橋さんからのお土産だ。
私たちは食べる場所を提供するだけというのも申し訳ないが、倉橋さんにとっては微々たるものらしいから気にしなくて良いのだろう。
和やかな雰囲気で食事会が始まり、藤乃くんを除いて三人でワインを楽しみ、藤乃くんだけは葡萄ジュースを楽しんでいた。彼はお酒にかなり弱い。強い酒なら多分グラスの半分も飲めないうちに酔って眠ってしまうだろう。
その点、悠真は酒豪が多くて有名な宮古島出身ということもあって、そして酒に強い家系に生まれたこともあって、顔こそ赤くなるがほとんど酔うことはない。
悠真の弟、真琴くんはあの家系には珍しく酒に弱い。
ほんの少しの酒でもすぐに酔ってしまうのだから、兄弟でこうも違うものかと思ってしまう。
しかも顔が真っ赤になる悠真と違って、顔は全く変わらないのに酔っているのだから不思議なものだ。
成瀬は一緒に晩酌ができるのは楽しそうで羨ましいと言ってくれる。
もちろん私もそれは嬉しい。
だが、以前宮古島の実家に一緒に帰省した時に、真琴くんが酔って成瀬に甘えて積極的になる姿を見たことがある。
それが少し羨ましかった。
一度でいいから悠真のあんな姿を見てみたい。
結局のところ、私も成瀬もないものねだりなのだが、いつもと違う恋人の姿が見てみたいと思うのは当然のことかもしれない。
そんなことを考えながら、楽しい夕食の時間は終わった。
「藤乃くん。美味しいケーキがあるんですが一緒に食べませんか?」
「わぁー! 食べたいです!!」
今日イリゼホテルで新作のケーキの試食をした残りを持ち帰ってきたのだが、二人で食べるには少し多いと思っていたから藤乃くんが食べてくれて助かる。
私と倉橋さんは兄弟のように仲のいい二人を愛でながら、少し離れた場所で見守っていた。
美味しい! と嬉しそうに食べる藤乃くんと、それを嬉しそうにみながらケーキを食べる悠真の姿に癒される。
そんな時、倉橋さんがそっと胸ポケットに手を入れたと思ったら小さな瓶を取り出して、私の手にそっと載せた。
「これは?」
悠真に気づかれないようにそっと尋ねれば、倉橋さんは視線だけ藤乃くんをみながら静かに説明をしてくれた。
「これは、一時的にほろ酔い状態にさせる薬です。臨床試験も終えて問題ない状態になっていますが、それを何人か試してもらって感想を聞かせてもらいたいと思ってるんです。ほら、うちは航が酒に弱いから意味がなくて」
「ほろ酔い状態に? どうしてそんなことを?」
「航もだが、酒に弱い子たちが酒に酔うと普段とは違う姿を見せてくれるんですよ。だが酒に強いパートナー相手だとそれは叶わないでしょう? だからこの薬でほろ酔い状態にさせれば、楽しい姿を見られるんじゃないかと思って作ってみたんです。意外と需要はありそうでしょう?」
倉橋さんが何もなしで作るわけがない。
おそらく需要を見越して開発したに決まっている。
そして、私たちに渡すのは試作といえどももう全て完璧な状態になっているはずだ。
これを飲めば、真琴くんと同じような状態に悠真がなるということだ。
それは試さない手はない。
「そうですね。ぜひ使わせていただいて感想をお伝えしますよ。それで私たち以外にも誰に感想をいただくつもりですか?」
「松川くんのところと、周平さんのところ、あとは何人か後輩にも感想をもらおうかと思ってますよ」
名嘉村くんと浅香さんか。
確かに彼らなら悠真と同じく酒も強い。
愛しい相手の可愛い姿が見られるなら協力するだろうな。
「なるほど。彼らなら効果が分かりそうですね。早速今夜にでも使わせてもらいますよ」
明日は悠真も私も休み。
今夜は楽しい夜になりそうだ。
その薬を試して感想を聞かせて欲しいと持ちかけられた伊織視点のお話。
すでに悠真と伊織は西表島の新居に移り住み、甘い新婚生活を過ごしています。
楽しんでいただけると嬉しいです。
* * *
<side伊織>
美味しいステーキ肉をもらったからと、悠真と過ごす西表の自宅に倉橋さんが届けてくれた。
もちろん倉橋さんのいるところ、藤乃くんありというわけで、二人は一緒に我が家にやってきた。
せっかくだから一緒に食事をと誘い、夕食を共にすることになった。
料理人として働いていることもあって、自宅のキッチンにはかなりこだわって作ってもらった。
設計士の方とも何度も意見交換をして、一切の妥協もない満足いく仕上がりになったと思う。
おかげで毎日の料理が楽しくてたまらない。
それはきっと悠真のために作るからというのもあるのだろうが。
ステーキにはガーリックライスが合うが、お互いに夜は愛しい人との甘い夜を過ごすことは決まっている。
だから、愛しい人がキスを拒んだりしないように暗黙の了解でそれはやめておいた。
それを抜きにしても美味しい料理を作ることができる。
いや、料理人として作らなければいけない。
美味しい料理の傍にはこれまた最高のワイン。
それも倉橋さんからのお土産だ。
私たちは食べる場所を提供するだけというのも申し訳ないが、倉橋さんにとっては微々たるものらしいから気にしなくて良いのだろう。
和やかな雰囲気で食事会が始まり、藤乃くんを除いて三人でワインを楽しみ、藤乃くんだけは葡萄ジュースを楽しんでいた。彼はお酒にかなり弱い。強い酒なら多分グラスの半分も飲めないうちに酔って眠ってしまうだろう。
その点、悠真は酒豪が多くて有名な宮古島出身ということもあって、そして酒に強い家系に生まれたこともあって、顔こそ赤くなるがほとんど酔うことはない。
悠真の弟、真琴くんはあの家系には珍しく酒に弱い。
ほんの少しの酒でもすぐに酔ってしまうのだから、兄弟でこうも違うものかと思ってしまう。
しかも顔が真っ赤になる悠真と違って、顔は全く変わらないのに酔っているのだから不思議なものだ。
成瀬は一緒に晩酌ができるのは楽しそうで羨ましいと言ってくれる。
もちろん私もそれは嬉しい。
だが、以前宮古島の実家に一緒に帰省した時に、真琴くんが酔って成瀬に甘えて積極的になる姿を見たことがある。
それが少し羨ましかった。
一度でいいから悠真のあんな姿を見てみたい。
結局のところ、私も成瀬もないものねだりなのだが、いつもと違う恋人の姿が見てみたいと思うのは当然のことかもしれない。
そんなことを考えながら、楽しい夕食の時間は終わった。
「藤乃くん。美味しいケーキがあるんですが一緒に食べませんか?」
「わぁー! 食べたいです!!」
今日イリゼホテルで新作のケーキの試食をした残りを持ち帰ってきたのだが、二人で食べるには少し多いと思っていたから藤乃くんが食べてくれて助かる。
私と倉橋さんは兄弟のように仲のいい二人を愛でながら、少し離れた場所で見守っていた。
美味しい! と嬉しそうに食べる藤乃くんと、それを嬉しそうにみながらケーキを食べる悠真の姿に癒される。
そんな時、倉橋さんがそっと胸ポケットに手を入れたと思ったら小さな瓶を取り出して、私の手にそっと載せた。
「これは?」
悠真に気づかれないようにそっと尋ねれば、倉橋さんは視線だけ藤乃くんをみながら静かに説明をしてくれた。
「これは、一時的にほろ酔い状態にさせる薬です。臨床試験も終えて問題ない状態になっていますが、それを何人か試してもらって感想を聞かせてもらいたいと思ってるんです。ほら、うちは航が酒に弱いから意味がなくて」
「ほろ酔い状態に? どうしてそんなことを?」
「航もだが、酒に弱い子たちが酒に酔うと普段とは違う姿を見せてくれるんですよ。だが酒に強いパートナー相手だとそれは叶わないでしょう? だからこの薬でほろ酔い状態にさせれば、楽しい姿を見られるんじゃないかと思って作ってみたんです。意外と需要はありそうでしょう?」
倉橋さんが何もなしで作るわけがない。
おそらく需要を見越して開発したに決まっている。
そして、私たちに渡すのは試作といえどももう全て完璧な状態になっているはずだ。
これを飲めば、真琴くんと同じような状態に悠真がなるということだ。
それは試さない手はない。
「そうですね。ぜひ使わせていただいて感想をお伝えしますよ。それで私たち以外にも誰に感想をいただくつもりですか?」
「松川くんのところと、周平さんのところ、あとは何人か後輩にも感想をもらおうかと思ってますよ」
名嘉村くんと浅香さんか。
確かに彼らなら悠真と同じく酒も強い。
愛しい相手の可愛い姿が見られるなら協力するだろうな。
「なるほど。彼らなら効果が分かりそうですね。早速今夜にでも使わせてもらいますよ」
明日は悠真も私も休み。
今夜は楽しい夜になりそうだ。
あなたにおすすめの小説
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
完結しました!ありがとうございました。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
様々な形での応援ありがとうございます!
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
【8話完結】いじめられっ子だった僕が、覚醒したら騎士団長に求愛されました
キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。
けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。
そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。
なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」
それが、すべての始まりだった。
あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。
僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。
だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。
過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。
これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。
全8話。