溺愛されまくりの会長令息が財閥イケメンスパダリ御曹司に見初められました

波木真帆

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可愛い天使

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生まれてすぐに誘拐されて、可哀想な日々を過ごしてきた一花がもし、誘拐されなかったら……?
そんな、IFの話を読んでみたいというリクエストで書いたお話なので、甘々溺愛しかありません。
楽しんでいただけたら嬉しいです♡


  *   *   *

<side一眞>

「パパーっ、おかえりなさい!」

玄関から飛び出し、愛くるしい笑顔で駆け寄ってきてくれる私の可愛い息子・一花いちか
四月から小学生になる、本当に可愛らしい天使のような子だ。

「ああ、ただいま」

この瞬間、私は櫻葉グループ会長という立場から、可愛い一花のパパに切り替わる。
駆け寄ってきてくれた一花を軽々と抱きかかえ、いつものように

「今日は何をして過ごしていたか、パパに教えてくれるか?」

と尋ねる。
春休み中の一花は毎日新しいことに挑戦しているようで、帰宅してからこうして尋ねるのが楽しみなのだ。

「うん。今日はねぇ、ママと一緒にクッキーを焼いたんだよ!」

「そうか、それはもちろんパパも食べられるんだろう?」

「ふふっ。パパ、食べたい?」

「ああ、一花と麻友子まゆこが作ったものだから食べたいよ」

「じゃあ、一花とママとどっちにあーんされたい?」

「うーん、それは難しいな。どっちか選ばないといけないのか?」

「難しい?」

「ああ、パパは一花も麻友子も大好きだからな」

私の答えに、一花は私の首に手を回して嬉しそうに抱きついてくれる。

「ふふっ。一花もパパが大好きだから、一花とママと二人であーんしてあげる」

「それは嬉しいな。じゃあ、早く中に入ろうか」

一花を抱きかかえたまま中に入ると、玄関先で妻の麻友子が微笑みを浮かべて立っている。

「お帰りなさい、一眞かずまさん」

「ああ、今帰ったよ。今日も出迎えありがとう」

そう言って、麻友子の唇に自分のそれを重ねる。

「パパー、一花も! 一花も!」

「ああ、今日も出迎えありがとう」

麻友子に先にただいまのキスをするのは我が家の決まり。
幼い一花もそのことはちゃんと理解してくれている。

そして、一花へのただいまのキスは唇ではなく、頬にする。
それも我が家の大事な決まりだ。

唇へのキスは結婚する相手だけ。
父親といえどもその権利を奪ってはいけない。

一花が愛する人と出会い、唇へのキスを体験するその日まで私はしっかりと守ってやろう。

私は櫻葉さくらば一眞かずま
日本では知らない者がいないと言われるほどの多くの傘下企業を持つ櫻葉グループの会長だ。

美しく聡明な妻・麻友子とはなかなか子宝に恵まれなかったが、結婚して十年を迎えようやく授かった。
麻友子にそっくりで天使のように愛しい息子・一花は私の宝物だ。
 
「パパー、見てみて!」

可愛らしいカゴに乗せられたクッキーは綺麗に整えられたものから、歪なものまで盛りだくさんだ。

「一花の作ったの、どれかわかる?」

「うーん、これかな? 一花みたいに小さくて可愛いぞ」

「わっ、当たった! パパ、すごーい!!」

「じゃあ、ご褒美に食べさせてくれ」

「ふふっ。お仕事お疲れさま」

そんな可愛いことを言いながら、一花の作った小さなクッキーが私の口に運ばれる。
手作り感たっぷりな香ばしいクッキーに目尻が下がる。

「パパー、どう? 美味しい?」

「ああ、美味しいな」

「ふふっ。よかった。ねぇー、ママもパパにあーんして! パパ、ママにもあーんして欲しいって」

「あらあら。一眞さん、そんなこと仰ったの?」

「ああ。一花と麻友子とどちらにも食べさせて欲しいからな」

私の言葉に麻友子は頬を赤らめる。
結婚して十数年経っても麻友子はまだまだ初々しいままだ。

細くて長い指でクッキーを摘み、私の口に運んでくれる。
わざと麻友子の指まで咥えると、

「あっ……」

と可愛らしい声が漏れた。

「あっ、パパ。ママの指まで食べちゃ、めっだよ」

私の悪戯をめざとく見つけた一花に怒られてしまう。
私が怒られているとは会社の者たちがみたら驚くだろうな。

「ああ、悪い悪い。つい、大きな口を開けてしまった」

「ふふっ。パパのお口、おっきぃもんね。狼さんみたい」

一花の頭の中にはきっと赤い頭巾を被ったあの子の物語がよぎっているのだろう。
ふふっ。私が狼か。
まぁ麻友子に対してはそうかもしれないな。

今夜もたっぷりと可愛がってやろう。
その前に一花をお風呂に入れなければな。

ああ、美しい妻と可愛い息子に囲まれて、私ほど幸せな者はいないだろうな。



ある日のこと、いつも来てもらっているシッターが急な体調不良で来られなくなってしまった。
幸い軽い風邪だそうだが、一花に移しては大変だということで休むことになった。
しかし、あいにく麻友子は今日から三日間の予定で旅行に行くことになっていた。

「申し訳ないけれど、旅行はお断りするわ」

「いや、当日キャンセルはさすがに悪いだろう」

「でも、一花を一人で置いていくわけにもいかないし、今日の旅館は未成年は入れないから連れて行けないもの」

今回の麻友子の旅行相手は貴船コンツェルン会長の奥さまの未知子みちこさん。
大人だけの優雅な時間を過ごしましょうと誘いを受けて、今回の旅行が決まったのだ。

元小児科医の未知子さんは、元々身体の弱い麻友子を心配してくださっていて、一花が生まれたばかりの頃は、我が家によく来てくださって一花を検診がてら、麻友子のことも診てくださっていた。

そんな未知子さんの存在には麻友子だけでなく、私も感謝していた。
一花もだいぶ手がかからなくなってようやく二人で旅行に行くと決まった旅行だったから、今回はなんとしてでも行かせてやりたい。

とはいえ、少し人見知りのある一花を初めてのシッターさんに頼むわけにもいかず、麻友子は諦めかけていた。

「一花のことは気にしないでいい。麻友子が旅行の間は私が責任を持って、一花の世話をするよ」

「でも、一眞さんはお仕事が……」

「何、気にすることはない。史紀もいるから仕事は任せられるし、会議の時は一緒に連れて行けばいい。一花はおとなしい子だから大丈夫だよ。それに会社のトップが育児を率先してやっている姿を見せるのはいいことだと思わないか?」

「ふふっ。一眞さんは十分やってくださっていますよ。でも、そう言ってくださるのは嬉しいです」

「麻友子は気にせずに楽しんでおいで」

「わかりました。ありがとうございます」

そんな話をしていると、一花が目を擦りながら起きてきた。

「んー、おはよう。パパ。ママ」

「ああ、一花。おはよう。よく眠れたか?」

「うん。パパがくれたおっきなぬいぐるみ抱っこして寝たら眠れたよ」

最近一花は、もうすぐ小学生になるのだから部屋で一人で寝ると言い出して、私たちのベッドから出て行ってしまった。
流石にまだ一人っきりで寝かせるのが心配で大きな抱きぐるみに一花を頼んでいる。
もちろん一花の部屋にはセキュリティーも万全だから、何かあれば私はすぐに起きて、一花の部屋に向かうことができる。

「そうか。それはよかった」

可愛い一花を抱き上げながら、大事なことを説明する。

「一花、今日はいつも来てくれているシッターの佐和さわさんが、体調が悪くて来られないんだそうだ」

「えっ……心配だね」

「ああ、だけど軽い風邪らしいからすぐに治るよ」

「そっかぁ。よかったぁ」

優しい一花を見て微笑ましく思いながら、

「それで、今日から麻友子も旅行でいなくなるだろう?」

と問いかけると一花は何かを察したように、

「大丈夫! 一花、一人でお留守番できるよ!! だから、ママはみちこちゃんとお出かけしていいんだよ!!」

と必死に言ってくれる。

「ねぇ、ママ。一花はいい子だから一人で大丈夫だもん。ママはみちこちゃんと旅行に行ってきて!!」

「一花……ありがとう。本当に一花は優しい子ね」

麻友子は私に抱っこされている一花を私も一緒に抱きしめる。
麻友子の目が潤んでいるのが見えて、私はさっとハンカチを手渡した。

「一眞さんもありがとう」

「気にしないでいい。一花、麻友子の旅行は無くならないから大丈夫だ」

「本当?」

「ああ、でも一花は一人でお留守番しなくていいよ。私と一緒に会社に行こう」

「えっ? パパと一緒? 一花が行ってもいいの?」

「ああ、パパは一花にずっとパパが仕事をしているところを見て欲しかったんだ。一花にもパパのお仕事を手伝ってもらいたいんだけどいいかな?」

「――っ!! うん!! 一花、パパのお手伝いする!!」

「そうか、嬉しいな」

可愛い一花を抱きしめると、一花も嬉しそうに抱きしめ返してくれた。

「というわけだ。麻友子は安心して旅行に行っておいで」

「そうそう、ママは旅行に行っておいで」

「まぁ、ふふっ」

私の真似をして麻友子に旅行を勧める一花に、涙ぐんでいた麻友子も思わず顔を綻ばせた。

「じゃあ、遠慮なく楽しんでくるわ。一花、美味しいお土産買ってくるからね」

「わーい。ママ、大好きっ!!」

「一花、パパは?」

「ふふっ。パパもだーいすきっ!!」

可愛い一花と麻友子を抱きしめて、私は幸せのひと時を味わっていた。

「じゃあ、行ってきます」

「いってらっしゃーいっ!!」

貴船邸からきた迎えの車に乗り込んだ麻友子を二人で見送り、会社に行く準備を始めた。
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