イケメン王子は運命のサクラと恋に落ちました

波木真帆

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甘い夜の始まり※

まだ数分にも満たないだろうが、私には永遠の時に感じられる。
息もできないほど長く苦しい時間が続く。

すると、私の手に柔らかな感触を覚えた。

「えっ!」

咄嗟にそれを握り、慌てて目を開ければ真っ赤な顔をしたサクラ殿が、私に手を握られどうしていいかわからない様子で私を見上げていた。

「――っ、サクラ、殿……こ、これは、その……私の、気持ちを受けてくださるということで、よ、宜しいのですか?」

声を震わせるなんて男らしくない。
そう思いながらも、震えずにはいられない。

必死に問いかけると、サクラ殿は小さく頷いた。

「あ、あの、すぐに子どもを産むのは怖いですけど……クラウス……と一緒には、いたいです……それでもよければ――っわぁ!!」

あまりにも嬉しい言葉に思わずサクラ殿を抱きしめた。

「――たっ!」

「あ――っ、申し訳ないっ! つい、嬉しすぎてバカ力で抱きしめてしまいました」

簡単に折れそうなほど細い身体を、私の並外れた力で抱きしめるなんてなんということだ!

「ふふっ。バカ力なんて。大丈夫です。少しだけ緩めてもらえたら、いっぱい抱きしめてください」

「サクラ殿!!」

自分の力すら加減できない私にどうしてこんなにも優しい言葉をかけてくれるのだろう。
サクラ殿の優しさが心に沁みる。

緊張に震えながら、私は彼の身体をそっと抱きしめた。

ああ、なんと柔らかで心地良い抱き心地だ。
ピッタリとくっついてまるで一人の人間になったような気すらしてくる。

「――っ!!」

彼の手がゆっくりと私の背中に回った。

それだけで、全てを許された気がして、私は思わず彼の唇に自分のそれを重ねた。

「んんっ……」

彼の甘い吐息におかしくなりそうだ。

何度も何度も角度を変えて、サクラ殿の柔らかくて小さな唇を喰む。

「んっ……んっ」

苦しげな声と共に、ほんの少し唇が開いた。
私はその隙を逃さぬように自分の舌をサクラ殿の口内に滑り込ませた。

「――っ!!!」

甘いっ!
なんて甘いんだろう!!
まるで極上の果物でも食べているような甘い唾液に蕩けてしまいそうだ。

こんな甘いキスを他の誰かも知っているのだろうか。
サクラ殿ほどの方が今まで何も経験がないとは思えない。
一生会うこともない相手に嫉妬するのはあまりにも馬鹿らしいが、サクラ殿の初めてを奪ったものの痕跡は全て消してやろう。

私は嫉妬に駆られたようにクチュクチュと舌を絡ませ、吸い付き、口内を貪って、サクラ殿の甘い唾液に酔いしれていた。

「んんっ!!」

胸元を子猫のような力でトントンと叩かれ、ハッと我に返った。

急いで唇を離せば

「はぁっ、はぁっ」

と荒々しい息遣いをしている。

「申し訳ない。つい調子に乗ってしまって……苦しかったですか?」

「すみ、ません……っ、キス……したことがなくて、やり方が、わからなくて……」

「――っ、サクラ殿……初めてだったのですか?」

「は、い……。だから、ゆっくり、教えてください」

「――っ、なんてことだっ!! ああ、あなたほど美しい人ならもうとっくにキスなど済ませたのだと、いもしない相手に嫉妬をしていたのです」

「そう、だったんですね……クラウス……なんでも正直に言ってくれるから、安心します」

「サクラ殿……」

「あの……クラウスは……」

「えっ?」

「あ、いえ。なんでもないです」

なんでもないという表情ではない。
私にもなんでも話してほしい。

「心に押し留めないでなんでも話してください。私たちは夫夫ふうふになるのですから……」

「――っ!! そう、ですね……。あ、あの……クラウスは、今までにどれくらいの方と、その……関係を……?」

「ご安心ください。私もサクラ殿と同じです。誰とも何も経験したことがないのですよ」

「そ、んなこと……だって、王子さまなのに……」

「この国に側室がいないと話をしたでしょう? いつか出会う伴侶のために清い身体でいることも次期国王として必要なことなのです。何より、私自身も運命の相手以外には欲望すら感じませんから」

「欲望って……あの、じゃあ、僕には……」

「初めてあのサクラの下で見かけた時から運命だと感じていたんです。サクラ殿以外とこれから一生触れ合うことなどありませんよ」

「クラウス……っ!!」

ああ、サクラ殿の方から抱きしめてくれた。

やはり私たちは運命なのだな。
あのサクラが私たちを引き合わせてくれたのだ。

「サクラ殿……これから、父上にも紹介します。そして、婚礼が終わったらあなたの全てが欲しい。それまで必死に我慢しますから……良いですか?」

「はい。クラウス……優しくしてください」

「――っ!!」

可愛らしいサクラ殿の言葉に、そのまま押し倒してしまいそうになった。

だが、婚礼が終わるまでは……。
完全に昂っている愚息に叱咤しながら、二週間死に物狂いで乗り切った。

そして、とうとう私たちは初夜を迎える。


  *   *   *


「大丈夫ですか? サクラ」

「は、はい」

無事に婚礼の儀を終えた私たちは、初夜を迎えるための寝室に篭った。

今、目の前には美しい婚礼衣装に身を包んだままのサクラがいる。
緊張に震えるサクラが愛おしくてたまらない。

私の手でサクラを一糸纏わぬ姿にしてから、我々の初夜が始まるのだ。

ああ……この二週間、必死に押さえつけていた欲望をようやく解放する時が来た。

「サクラ……これを」

私はベッド脇に置かれていた親指ほどの小さな瓶を桜に差し出した。

「あの、これは?」

「身体に子を宿す場所を作る薬です」

「――っ、子を宿す、場所を、作る?」

「はい。これを飲んで私の蜜を注ぎ込むと、体内に子を宿す場所が作られるのです。心配しなくても大丈夫ですよ、私も一緒に飲みますから」

「クラウスも……?」

「はい。薬を飲んで蜜を注ぎ、相手も薬を飲んで注がれることで初めて薬の効果が発揮されます。私が先に飲んでみせますね」

見たことのない薬を飲むことに抵抗があるのは当然だ。
だからこそ、私が率先して飲めばきっと安心してくれるはずだ。

私はサクラの手にある小瓶のコルク蓋を開けると、中には小指の爪ほどの大きさの薬がいくつか入っている。
その中から二つ取り出して一つを指で摘むと、サクラも同様に指で摘んだ。


「僕も、一緒に飲みます。僕たちはもう夫夫なんですから」

「サクラ……はい。そうしましょう」

サクラの気持ちが嬉しい。
こんなにも私はサクラに愛されているのか……。

水の入ったグラスを一緒に持ち、薬をゴクリと飲み干す。

薬が流れていくのがわかるほど、熱くなっているのがわかる。

「サクラ、大丈夫ですか?」

「はい。でも……」

「どうしました? どこか気分でも?」

「いえ、そうじゃなくて……ここが、すごくドキドキします」

「――っ!!」

サクラの手が私の手を掴み、そのまま胸に触れさせる。

衣装を通してでもわかるほど、鼓動が早いのがわかる。

「ドキドキ、してますね」

「はい。どうしたらいいですか?」

「大丈夫、私も同じですよ」

そう言ってサクラと同じように手を自分の胸に触れさせた。

「ふふっ。本当だ。お揃いですね」

「サクラっ!」

あまりにも可愛らしい笑顔で見上げられて、一瞬で理性が吹き飛んだ気がした。
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