ウブな子猫はゲイアプリで出会った理想の男性に愛されたくてたまらない!

波木真帆

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先生の匂い

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「それじゃあ行こうか」

「は、はい。あ、食事代……」

僕が持っている交通費だけで足りるかわからないけど、あんなに美味しいものを食べさせてもらったんだもん。
ちゃんと支払わないと!

「足りない分は後で返します」

財布から全財産を取り出そうとすると、先生はさっと僕の手を取った。

「私が勝手にここに連れてきたんだから、食事代は気にしないでいい」

「でも……」

「こういう場所では年長者に支払わせるものだから本当に気にしないでいいよ」

優しく頭を撫でて笑顔を見せてくれる。
ここは先生に甘えよう。

「ありがとうございます。本当に美味しかったです。ごちそうさまでした」

せめて自分の想いを伝えたくて丁寧にお礼を伝える。
先生は柔らかな笑顔で、僕の手を握ったままお店を出た。

助手席に乗ると、やっぱりドキドキしてしまう。
こんなかっこいい人と二人っきりになったことがないから、どこを見ていればいいかわからないんだ。

東京の景色を見る余裕もないまま、車は閑静な住宅街に入っていった。
そして、一際大きな家の前でゆっくりと止まった。

「えっ……ここが、先生のお家、ですか?」

一人暮らしとは思えないその広さ。
もしかしてご家族と一緒に住んでいたりするんだろうか。

それなら家に行きたいなんて言わないほうがよかったかな?

そんなことを考えている間に、先生は車の中で何かの操作をすると、家のガレージの門が開いた。

「ああ。元々実家だが、今は一人で暮らしているよ」

「え、あっ、そうなんですか?」

先生が一人暮らしだってことにホッとする。
だって、僕なんかが先生と一緒にいて、変なふうに思われたら嫌だから。

先生はさっと車から降り、助手席の扉を開けてくれる。

「この家には私たちだけだ。気楽にして寛いでくれたらいいよ」

そう言って、僕に手を差し出してくれる。
まるで王子さまにエスコートされているような気になってドキドキが止まらない。

地下の駐車場から家の中にはエレベーターで上がるみたいだ。
家にエレベーターがあるなんてすごい。
これって東京では普通のことなんだろうか?

「どうする? 先にシャワーを浴びようか? それともそのまま寝室がいい?」

二階でエレベータを降りると先生にそう尋ねられる。
こういう時ってどうするのが正しいんだろう?
考えてもわからない。

「えっ、えっと……普通はどうするのがいいんですか? 初めてだからわからなくて……」

面倒だと思われたくないけれど、変なこともしたくない。
正直に尋ねてみると、先生は好きなほうを選んでいいと言ってくれた。

それなら、僕はシャワーを浴びたい。
東京に来るまでに乗り換えに戸惑ったり、緊張したりして汗をかいてしまっているのはもちろんだけど、実家で暮らしていた自分を全て消しさって綺麗な身体を愛してもらいたいという気持ちが強かった。

先生はベッドがある部屋の奥にある扉の中に僕を連れていってくれた。

シャワールームだと説明されたから、浴槽がないということなんだろう。
こんな広い家だ。
お風呂とは別にシャワーだけの場所があっても不思議はない。

でもやっぱりすごいな。

シャンプーとボディーソープ、そしてバスローブまで出してくれる。
しかもそのバスローブは先生が使っているものらしい。

「大きいだろうけど、どうせ脱ぐから大丈夫だろう?」

そう尋ねられて、本当に先生とえっちするんだと実感して顔が熱くなってくる。

先生から全てを受け取ってシャワールームに一人になった。
一人暮らしとは思えないほど、掃除が行き届いていてすごく綺麗だ。
どこもシンプルだけど、使い勝手が良さそう。

あ、そんなことをしている場合じゃない。
僕は急いで服を脱いだ。

自分の持っている下着の中で一番良さそうなものを着てきたつもりだったけれど、綺麗なシャワールームでみると薄汚れてボロいのがわかる。

バスローブの下には下着をつけないでいいって言われて少し恥ずかしかったけれど、こんな汚い下着を見られるよりはよかったかも。

脱いだシャツの中に古ぼけた下着を隠して畳み、シャワールームの扉を開けた。

出してもらったボディソープを手に取るとすぐに泡がモコモコになった。
それを身体につけ洗い始めると、まるで全身を覆う皮膚が一枚剥けて新しく生まれ変わっていくような感じがしてすごく気持ちがいい。

さすが先生の家にあるボディソープだ。
僕はまるで赤ちゃんのようなもちもちの肌になって、お風呂を出た。

用意されていたバスタオルは今まで使ったこともないほどふわふわだ。
思わずタオルを顔に埋めると、ほんのり先生の匂いがした。

先生って、どうしてこんなにいい匂いがするんだろうな。

ドキドキしつつ、先生に貸してもらったバスローブを羽織る。
すると、先生に抱きしめられているような感覚がして、一気に興奮してしまう。

すぐにでも先生と抱き合いたい。
その衝動が抑えられずに僕は扉を開けた。
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