ウブな子猫はゲイアプリで出会った理想の男性に愛されたくてたまらない!

波木真帆

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もし、あの時待ち合わせ場所で警察に保護されていたら…… 1

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『エリート医師は偶然出会った可愛い子猫を囲い込んで離さない』の番外編
<もし、あの時ひかりと出会わずに待ち合わせ場所から離れていたら……>のひかりsideのお話です。
楽しんでいただけると嬉しいです♡



    *    *    *


とうとう約束の日。
僕は夜中のうちにこっそりと荷造りしておいたバッグを持って、人目につかない道を選んで駅に急いだ。
電車に乗り込んでも、まだ知り合いに見つかるかもしれない。
乗り換えの駅まで、ものすごく長く感じた。

なんとか誰にも声をかけられずに乗り換えを済ませた。
一人でこんなに遠くまで来たのは初めてかもしれない。
まだあと一回乗り換えをしなければいけないけれど、なんとか間違えずにはいけるはずだ。
見慣れない景色にドキドキしつつも、僕の頭の中はこれから会う予定になっている『タク』さんのことでいっぱいになっていた。

そうして、慣れないながらもなんとか待ち合わせ場所の駅に到着した。
鞄の底に十万円の封筒を入れた大きなバッグを斜めがけにして持ち、緊張に震えながら改札を出た。

『タク』さんが言っていたモニュメントが見える。
僕はそこに立ち、『タク』さんが来てくれるのを待った。

けれど、約束の時間が過ぎても僕に近づいてくる人はいない。
心配になってスマホを取り出し、いつも『タク』さんとやりとりをしていたチャットにメッセージを書き込んだ。

<あの、ライトです。約束のモニュメントの前にいます。大きなカバンを持っているので、到着したら声をかけてください>

このチャットはメッセージアプリと違って既読がつかないから、読んだかどうかはわからない。
連絡方法はこれしか知らないから待つしかない。

けれどそれから十五分経っても、誰も僕に声をかけてくる人はいなかった。

もしかしたら僕の顔を見て、嫌だと思って帰ってしまったのかもしれない。
それは十分にありうる。

僕を抱いてくれると言ってくれていたけれど、実際に顔を見たら抱けないと思ったんだろう。
今日にかけていたから辛い。

僕はどうしたらいいんだろう……

下を向くと涙が溢れてしまいそう。
必死に顔を上げようとした僕の前に、長身の男性がやってきた。

もしかして、『タク』さん?

「君、ライトくん、かな?」

「は、はい。そうです。あの、『タク』さん、ですか?」

ちょっと怖そうな雰囲気にビビりつつも、僕のハンドルネームを知っていたから『タク』さん本人に間違いないだろうと思っていた。けれど、彼の口から聞こえてきたのは、全く違う答えだった。

「驚かないで聞いてほしい。私は警察だ。君と少し話がしたい」

そう言って周りには見えないように、僕にだけ警察手帳を見せた。

「えっ、けい、さつ……?」

恐怖と驚きで何がなんだかわからなくなって、グルグル目が回って倒れそうになってしまった。

あ、地面に倒れる……

そう思った瞬間、目の前の警察の人が僕を支えてくれた。

「申し訳ない。少しあっちで休もうか」

僕はフラフラになりながら、すぐ近くに停められていた車の中に連れて行かれた。
パトカーとは違う、普通の車だ。

「これ、飲んで。大丈夫、未開封だから」

僕の目の前でカチッと音を立ててペットボトルの蓋を開け渡してくれる。

「あ、ありがとうございます」

そういえば、家を出てから何も飲んだり食べたりしてなかったことを思い出す。

もらったお茶をごくごくと半分ほど一気に飲むと、ようやく落ち着いた気がした。

「あの、これは本当に警察の車ですか?」

「パトカーじゃないから心配になるのも無理はないな。でも本当に警察の車だよ。安心して」

運転席にいた若い人も僕に警察手帳を見せてくれる。
偽物とは思えないからきっと本物なんだろう。

「それで、僕に聞きたいことって? 僕、待ち合わせしてるのであまり離れられないんですけど……」

「その待ち合わせの相手について聞きたいんだ。君が待ち合わせしているのは、『タク』という人物だろう?」

「は、はい。そうです。でもどうして……?」

尋ねると警察の人はじっと僕を見て、ゆっくりと口を開いた。

「『タク』は捕まったんだ。アプリで知り合った相手を言葉巧みに騙して金を奪っていた。君も騙されるところだったんだよ」

「そんな……っ」

思わぬ事実に、僕は思わず持っていたペットボトルを落としてしまった。

『タク』さんが、僕を騙していた?
手の震えが止まらない

僕は今日のこの日にかけていたのに……
騙されていたなんて……

「でも君は運がいい。まだお金は渡していないだろう?」

確かにお金は渡していない。
でも僕が一番ショックなのは、処女をもらってもらえる約束がなくなったことだ。

「お金なんて、どうでもよかった……」

そこまでいうと、涙が止まらなくなった。
警察の人に迷惑はかけられない。だから必死に止めようと思ったけれど、止められない。

「ごめんなさい……」

泣きながら謝るしかできない。
すると、車はゆっくりと動き始めた。

「あの、これからどこに?」

「申し訳ないが、警視庁で『タク』とのやりとりや詳細な内容を聞かせてほしい。親御さんにも連絡して迎えに――」

そう言われて僕はつい大声が出た。

「親はだめ! 呼ばないでください!」

今、見つかって家に戻ったら、そのまま学校は辞めさせられる。そしてそのまま結婚を……

そんなのは嫌だ!

必死に拒み続けると、とりあえず呼ばないことにしてくれたみたいだ。
これから先のこと、ちゃんと考えなくちゃ……
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