ウブな子猫はゲイアプリで出会った理想の男性に愛されたくてたまらない!

波木真帆

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IF

<閑話> 恋に落ちる瞬間 <前編>

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IFの裏側のお話を優一視点でお届けします。
長くなったので前後編になりましたが、楽しんでいただけると嬉しいです♡

   *   *   *


<side成瀬優一>

真壁から緊急事態だと連絡が来たのは、事務所の片付けをしていた時間。
手伝って欲しいと言われて仕方がなく、氷室と翼くんに真琴を頼み、急いで向かった。

数件の詐欺行為と強制性交の罪で逮捕した男のスマホを調べたところ、今日の十八時に新たな男性のターゲットと待ち合わせをしていることがわかったらしい。今までの詐欺行為と違って今回はターゲットのほうから「処女をもらってほしい」と持ちかけ、それに被疑者が反応。「それには金が必要」と言葉巧みに騙し、今日会う約束を取り付けたようだ。
その待ち合わせ場所に先回りしてターゲットを保護するつもりで真壁たちが急行したが、同じモニュメントが置かれた別の場所が存在することがわかり、その場所がうちの事務所から近いということで私にターゲットがいないかを確認させるための役として白羽の矢が立ったのだろう。

そのターゲットの写真はなく、名前もハンドルネーム『ライト』ということしかわからない。
ただ、今回の流れから察するに、ターゲットはかなり純朴な青年のようだ。
しかも大学生には大金とも言える十万円を所持している。
待ち合わせ場所でおどおどしている子がいれば、十中八九そのターゲットだろう。
そんな子が一人で人目につく場所に立っていたら、被疑者でなくても寄ってくる可能性がある。

正直くるか来ないかもわからない相手を探すのに行くのは骨が折れるが、何もなければそれでいい。
なんとなく真琴のようなそのターゲットを見過ごせず、私は急いでその場所に向かった。

駅すぐ横の駐車場に車を止め、目立たない場所に立って駅の出入り口を見つめる。

すると一人の少年が現れた。どうみても大学生には見えない。高校生に見えるかどうかと言った風貌の少年だ。
一般的に可愛らしいと言えるその姿に、一瞬で駅前の空気が変わった。
特に男たちがその少年に向ける目は、女性に向けるそれ以上に欲を孕んでいた。
けれど少年は自分に向けられている視線を気にすることなくゆっくりとモニュメントに近づいていく。
そして、彼はモニュメントの前でぴたりと止まった。

この子じゃなければいいと思ったが、どうやらやはりこの子が今回のターゲットらしい。

もし、真壁たちが逮捕していなければ、被疑者に会ったこの子がどうなっていたか……
想像するのも恐ろしい。

彼はスマホを持ち、何かを打ち込んでいるようだ。
きっと被疑者に到着の連絡を入れているのだろう。
だがすでに被疑者のスマホは真壁たち警察の手にある。

私はすぐに真壁にメッセージを送った。
もちろん、彼に近づく者がいないように思いっきり威圧を放ちながら。

<今、被疑者のスマホにターゲットからメッセージが来なかったか?>

<到着してモニュメントの前にいると連絡が来た>

<間違いない。彼は⚪︎⚪︎駅のモニュメント前にいる。すぐに来い! 想定よりも危ないぞ>

<危ない? どういうことだ?>

<被疑者以外にも狙われているということだ。それくらい目を惹く風貌をしている>

<わかった。もうすぐつくからそれまで何とか見張っていてくれ>

そう言ってメッセージのやり取りは終わった。

弁護士である私が突然声をかけるわけにはいかない。
ここで声をかけると、警戒されてしまうだろうからな。

真壁、早く来い!

そう願いつつ、必死に威圧を放ち続けた。

それから数分後、やっと到着した真壁たちに保護され少年は警視庁に連れて行かれたが、あの様子だと真壁に打ち明けたりはしないだろう。

やっぱり私がいくべきだろうな。

氷室にもう少しかかりそうだと連絡を入れ、私は後を追いかけるように自分の車で警視庁に向かった。

真壁にメッセージで自分も警視庁に向かっている旨を伝えていたから、すぐに部屋に案内された。
案内された部屋は、真壁と彼が入った部屋の隣。
マジックミラーで様子が全てわかることになっている。

「何か話はできましたか?」

「いえ、警視正が話しかけていますがまだ何も……」

真壁の部下も少し困っているようだ。

「わかりました。私が代わりましょう」

そうして部屋を出て真壁と交代することにした。

「私が彼と話をする。かなりセンシティブな話になりそうだから、話を聞くのは真壁だけにしておいてくれ」

「わかった」

そう約束を取り付け、私が中に入る。真壁は彼に私を紹介するとすぐに部屋を出ていった。
今頃隣の部屋から様子を見守っていることだろう。

私は不安げな彼から少し離れた席に腰を下ろした。

私が彼の味方だということ、弁護士には守秘義務があること、決して口外はしないこと。
それらを約束すると、彼は少しホッとした表情を見せた。

が、顔色がずいぶん悪い。

寝不足と食欲もないという彼に、持っていたチョコレートを渡す。
真琴にいつでもあげられるように持ち歩いているものだが、彼はその包みを嬉しそうに開けていた。

「おいしい……」

目を輝かせてポツリと呟く彼を見ていると、なんとなく真琴が頭に浮かんだ。

そのチョコレートが何かいい刺激を与えたのか、彼はぽつりぽつりと被疑者とのこれまでのやり取りを教えてくれた。
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