ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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クリスマスの奇跡

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<side昇>

直くんの演奏が始まった。俺は演奏も聴きつつ父さんたちにスマホを向けた。
俺はただ単純にばあちゃんが弾いていた曲を直くんがピアノで演奏してあげられたらじいちゃんたちが懐かしがって喜ぶだろうと思って提案しただけだった。

だから琴の楽譜をアプリでピアノの楽譜に変えて直くんに渡したわけだけど、直くんは一度琴の演奏を聴いてみたいと言い出した。
俺はすぐにスマホで琴の演奏を探し再生して直くんに聞かせた。
直くんはそれを数回じっくりと聞き、ピアノでその曲を弾いてくれたけれど「何か違う」と言って鍵盤の上で指を何度も動かし始めた。

その時の直くんが普段とは違う大人のような表情をしていて、ドキッとさせられた。
俺はじっと見守ることしかできなかったが、こっそりとその様子も動画に撮ってある。

数時間ピアノの前で試行錯誤していたが、不意に琴の音色が聞こえた。

「えっ?」

驚く俺に直くんはいつものような笑顔を見せた。

「これ、琴のように聞こえないですか?」

「すごい! 聞こえるよ!」

「じゃあ、これで弾けるように頑張ります」

なんてことないように言っているけれど、ピアノを琴のように弾くなんてとんでもない技じゃないか?
驚く俺をよそに直くんはさっきの技法を使ってピアノを弾いていく。
目を瞑っていると、本当にばあちゃんが弾いていた琴みたいだ。

懐かしい。

俺でもそう思うんだから、じいちゃんや父さん、それに伯父さんが聞いたら泣くほど喜ぶんじゃないか?
じいちゃんが泣いたのを初めて見たのは、ばあちゃんが亡くなった時。
葬式の間は声も出さずに涙だけ流していたけれど、俺は知っている。

通夜の間、片時もばあちゃんから離れずに夜中に何度もばあちゃんの名前を呼んで泣いていたのを。

いつも大きく見えるじいちゃんの背中がその時はすごく小さく見えて駆け寄ろうとした俺の手を、母さんがそっと掴んで首を横に振った。

――二人だけのお別れをさせてあげなさい。最後の夜だから……

俺にそう言った母さんの目も涙でいっぱいだった。
あれから十数年。

久しぶりに琴の音色を聴いたら、ばあちゃんを思い出して涙を見せるかもしれない。
じいちゃんだけじゃなく、父さんも伯父さんも。

その様子をしっかりと動画に収めたかった。

直くんの演奏が始まってすぐに、直くん越しにじいちゃんたちの表情を撮った。

すぐに気づいて驚きの表情を浮かべたじいちゃんたち。
演奏に聴き入って涙を流すじいちゃん。
口を押さえて必死に涙を堪えようとするけれど、我慢できない父さん。
そして、じっと直くんを見つめて静かに涙をこぼす伯父さん。
その傍らで見守る母さんと絢斗さん。

ラシード殿下はじいちゃんたちの空気を壊さないように、ただ黙って直くんを見つめていたけれど、直くんのお父さんが涙を流すのを見て、そっと涙を拭ってあげていた。

そして日下部さんと大おじさんは、直くんを見ながら誰かを思い出しているかのように微笑みながら優しく見つめていた。

そうして直くんの演奏が終わる。
言葉も何もなく、一気に拍手に包まれた。

そっと直くんにスマホを向けると、直くんの隣にうっすらと影が見えた。

もしかして、この影って……ばあちゃん?

ふわりとその影が動いて直くんの頭を撫でる。
その瞬間、直くんが隣に優しい笑顔を見せた。

ああ、やっぱりばあちゃんが来てくれたんだ。
直くんの演奏がばあちゃんを呼んだんだな。

これもクリスマスの奇跡なんだろうか。

今年のクリスマスは、ここにいる全ての人にとって最高の思い出になったみたいだ。
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