ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

文字の大きさ
617 / 754

着物を着てみよう

<side直>

父さんが僕に選んでくれた着物。
すごく可愛かった。
それに合わせて、自分で選んだ帯。
昇さんとパパ、可愛いって言ってくれるかな……

スタッフさんが着物と帯に合わせて他の小物も合わせておいてくれる。
それがすごく可愛くてうっとりしてしまう。

「あの、僕のこの着物の着方と、訪問着? の着方は同じですか?」

「はい。ほとんど同じですよ。一度着付けを覚えられるとどんな着物でもお召しになれます。ご試着されますか?」

「あ、どうしよう……」

ちらっとあやちゃんに視線を向けると、笑顔で頷かれる。

「保さんが着物を選んでいる間に直くんの着付けしようか。音葉屋さん。お手伝いお願いしていいかな?」

「承知いたしました」

スタッフさんは引き出しを開け、新品の着物用の下着を取り出した。

「それではまずこちらにお召し替えください」

「直くん。おいで」

あやちゃんに手を引かれ、カーテンの中にはいる。

「直。出てくるのを楽しみにしてるよ」

「うん。父さんも素敵な着物探してて」

そんな会話をして、試着ルームに入った。
一番最初に着物用の靴下、足袋を履く。
そして服を脱いで肌襦袢というのを着て、さらに上から長襦袢というのを着た。

そこまで着替えて外に出ると、すでに着付けの準備が整っていた。

あやちゃんが手を差し出すと、スタッフさんが着物から小さな紐など順番に渡して行ってくれる。
それを僕は鏡越しにしっかりと覚えた。
それは父さんの着替えのためだ。

父さんはカマル王国のお姫さまになっている。
着替えすらラシードさん以外に肌を晒しちゃいけないって言ってたから、こういう着替えもきっと知らない人にさせちゃいけないんだろう。

ただラシードさんは着物の着付けを知らないし、スタッフさんにやらせるわけにはいかない。
となると、僕とあやちゃんが父さんの着付けをするしかない。

あやちゃんは着付けはとっても上手だけど、順番通りに探すのが大変だから今、スタッフさんが手伝っているその場所を僕が担えるようにしないと!

幸い、着付けはほとんど同じだって言ってたし覚えてしまえば多分僕にも手伝えるはず。
僕は自分の姿が変わっていくのを見るのを忘れてスタッフさんの手の動きだけを集中して見つめていた。

「直くん、着付け終わったよ」

そう声をかけられて初めて気づいた僕は、鏡に映る自分の姿にびっくりした。

「これが、僕……?」

結婚式でドレスを着た時も自分だと信じられないくらいだったけれど、今回の着物も驚きの声しか出ない。
ドレスの時はカールアイロンというものでふわふわのパーマみたいにしてもらったけれど、着物の場合は僕のこのストレートの髪の毛でも似合っている気がする。

「すっごく可愛いよ。音葉屋さん。直くんに似合う少し大き目のかんざしとかないかな?」

「ちょうどお似合いになるものがございますよ」

そう言って出してくれたのは僕の手のひらくらいありそうな大きな花のかんざし。
白やピンク、オレンジに水色の、着物の色によく似た可愛い花がついていた。

「大きなお花のかんざしがショートの髪を引き立てていてすごく可愛らしくなりますよ」

さっと僕の左耳にかんざしをさしてくれて鏡で見ると本当に可愛い。

「いいね! これ。かんざしもセットでお願いするね」

「ありがとうございます」

スタッフさんが嬉しそうな笑顔を向ける。それ以上に僕は嬉しくてたまらなかった。

「直くん。保さんにもみせよう」

慣れない着物に転ばないようにあやちゃんに手を引いてもらって試着ルームを出る。
そのカーテンの音に父さんが気づいてこっちを向いた瞬間、目を丸くして僕を見た。

「父さん、どう?」

すると父さんはびっくりするほど大きなため息を吐いた。

「父さん?」

「ああ、ごめん。あまりにも似合ってて言葉が出なかったんだ。まるで日本人形みたいで可愛いよ」

自然に褒められてちょっと照れる。でも嬉しい。

「父さんも早く着てみよう。ラシードさんもきっと喜ぶよ」

「そうだね。殿下は絶対に期待しているよね」

僕の言葉にあやちゃんが賛同する。

「保さん。何か気に入ったものあった?」

「似合うかどうかわからないんですが、これ……」

ちょっと緊張した表情で父さんが見せてくれたファイルには、肩と裾に綺麗な花が描かれた、明るいグリーンの着物があった。

それを見て僕はふと気づいた。

「この着物の色、ラシードさんの瞳の色に似てる」

そう呟くと、さっと父さんのほっぺたが赤くなった。

「ああ、そっか。なるほど。だから保さん、この着物にしたんだ」

「いや、えっと……」

あやちゃんがいうとすごく照れていたけれど、それが父さんの本心だと伝わってきた。

「すごくいいと思う。ラシードさんも喜ぶよ」

そういうと、父さんは嬉しそうに笑っていた。
感想 1,420

あなたにおすすめの小説

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

一人、辺境の地に置いていかれたので、迎えが来るまで生き延びたいと思います

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
大きなスタンビートが来るため、領民全てを引き連れ避難する事になった。 しかし、着替えを手伝っていたメイドが別のメイドに駆り出された後、光を避けるためにクローゼットの奥に行き、朝早く起こされ、まだまだ眠かった僕はそのまま寝てしまった。用事を済ませたメイドが部屋に戻ってきた時、目に付く場所に僕が居なかったので先に行ったと思い、開けっ放しだったクローゼットを閉めて、メイドも急いで外へ向かった。 全員が揃ったと思った一行はそのまま領地を後にした。 クローゼットの中に幼い子供が一人、取り残されている事を知らないまま

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?