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着物を着てみよう
<side直>
父さんが僕に選んでくれた着物。
すごく可愛かった。
それに合わせて、自分で選んだ帯。
昇さんとパパ、可愛いって言ってくれるかな……
スタッフさんが着物と帯に合わせて他の小物も合わせておいてくれる。
それがすごく可愛くてうっとりしてしまう。
「あの、僕のこの着物の着方と、訪問着? の着方は同じですか?」
「はい。ほとんど同じですよ。一度着付けを覚えられるとどんな着物でもお召しになれます。ご試着されますか?」
「あ、どうしよう……」
ちらっとあやちゃんに視線を向けると、笑顔で頷かれる。
「保さんが着物を選んでいる間に直くんの着付けしようか。音葉屋さん。お手伝いお願いしていいかな?」
「承知いたしました」
スタッフさんは引き出しを開け、新品の着物用の下着を取り出した。
「それではまずこちらにお召し替えください」
「直くん。おいで」
あやちゃんに手を引かれ、カーテンの中にはいる。
「直。出てくるのを楽しみにしてるよ」
「うん。父さんも素敵な着物探してて」
そんな会話をして、試着ルームに入った。
一番最初に着物用の靴下、足袋を履く。
そして服を脱いで肌襦袢というのを着て、さらに上から長襦袢というのを着た。
そこまで着替えて外に出ると、すでに着付けの準備が整っていた。
あやちゃんが手を差し出すと、スタッフさんが着物から小さな紐など順番に渡して行ってくれる。
それを僕は鏡越しにしっかりと覚えた。
それは父さんの着替えのためだ。
父さんはカマル王国のお姫さまになっている。
着替えすらラシードさん以外に肌を晒しちゃいけないって言ってたから、こういう着替えもきっと知らない人にさせちゃいけないんだろう。
ただラシードさんは着物の着付けを知らないし、スタッフさんにやらせるわけにはいかない。
となると、僕とあやちゃんが父さんの着付けをするしかない。
あやちゃんは着付けはとっても上手だけど、順番通りに探すのが大変だから今、スタッフさんが手伝っているその場所を僕が担えるようにしないと!
幸い、着付けはほとんど同じだって言ってたし覚えてしまえば多分僕にも手伝えるはず。
僕は自分の姿が変わっていくのを見るのを忘れてスタッフさんの手の動きだけを集中して見つめていた。
「直くん、着付け終わったよ」
そう声をかけられて初めて気づいた僕は、鏡に映る自分の姿にびっくりした。
「これが、僕……?」
結婚式でドレスを着た時も自分だと信じられないくらいだったけれど、今回の着物も驚きの声しか出ない。
ドレスの時はカールアイロンというものでふわふわのパーマみたいにしてもらったけれど、着物の場合は僕のこのストレートの髪の毛でも似合っている気がする。
「すっごく可愛いよ。音葉屋さん。直くんに似合う少し大き目のかんざしとかないかな?」
「ちょうどお似合いになるものがございますよ」
そう言って出してくれたのは僕の手のひらくらいありそうな大きな花のかんざし。
白やピンク、オレンジに水色の、着物の色によく似た可愛い花がついていた。
「大きなお花のかんざしがショートの髪を引き立てていてすごく可愛らしくなりますよ」
さっと僕の左耳にかんざしをさしてくれて鏡で見ると本当に可愛い。
「いいね! これ。かんざしもセットでお願いするね」
「ありがとうございます」
スタッフさんが嬉しそうな笑顔を向ける。それ以上に僕は嬉しくてたまらなかった。
「直くん。保さんにもみせよう」
慣れない着物に転ばないようにあやちゃんに手を引いてもらって試着ルームを出る。
そのカーテンの音に父さんが気づいてこっちを向いた瞬間、目を丸くして僕を見た。
「父さん、どう?」
すると父さんはびっくりするほど大きなため息を吐いた。
「父さん?」
「ああ、ごめん。あまりにも似合ってて言葉が出なかったんだ。まるで日本人形みたいで可愛いよ」
自然に褒められてちょっと照れる。でも嬉しい。
「父さんも早く着てみよう。ラシードさんもきっと喜ぶよ」
「そうだね。殿下は絶対に期待しているよね」
僕の言葉にあやちゃんが賛同する。
「保さん。何か気に入ったものあった?」
「似合うかどうかわからないんですが、これ……」
ちょっと緊張した表情で父さんが見せてくれたファイルには、肩と裾に綺麗な花が描かれた、明るいグリーンの着物があった。
それを見て僕はふと気づいた。
「この着物の色、ラシードさんの瞳の色に似てる」
そう呟くと、さっと父さんのほっぺたが赤くなった。
「ああ、そっか。なるほど。だから保さん、この着物にしたんだ」
「いや、えっと……」
あやちゃんがいうとすごく照れていたけれど、それが父さんの本心だと伝わってきた。
「すごくいいと思う。ラシードさんも喜ぶよ」
そういうと、父さんは嬉しそうに笑っていた。
父さんが僕に選んでくれた着物。
すごく可愛かった。
それに合わせて、自分で選んだ帯。
昇さんとパパ、可愛いって言ってくれるかな……
スタッフさんが着物と帯に合わせて他の小物も合わせておいてくれる。
それがすごく可愛くてうっとりしてしまう。
「あの、僕のこの着物の着方と、訪問着? の着方は同じですか?」
「はい。ほとんど同じですよ。一度着付けを覚えられるとどんな着物でもお召しになれます。ご試着されますか?」
「あ、どうしよう……」
ちらっとあやちゃんに視線を向けると、笑顔で頷かれる。
「保さんが着物を選んでいる間に直くんの着付けしようか。音葉屋さん。お手伝いお願いしていいかな?」
「承知いたしました」
スタッフさんは引き出しを開け、新品の着物用の下着を取り出した。
「それではまずこちらにお召し替えください」
「直くん。おいで」
あやちゃんに手を引かれ、カーテンの中にはいる。
「直。出てくるのを楽しみにしてるよ」
「うん。父さんも素敵な着物探してて」
そんな会話をして、試着ルームに入った。
一番最初に着物用の靴下、足袋を履く。
そして服を脱いで肌襦袢というのを着て、さらに上から長襦袢というのを着た。
そこまで着替えて外に出ると、すでに着付けの準備が整っていた。
あやちゃんが手を差し出すと、スタッフさんが着物から小さな紐など順番に渡して行ってくれる。
それを僕は鏡越しにしっかりと覚えた。
それは父さんの着替えのためだ。
父さんはカマル王国のお姫さまになっている。
着替えすらラシードさん以外に肌を晒しちゃいけないって言ってたから、こういう着替えもきっと知らない人にさせちゃいけないんだろう。
ただラシードさんは着物の着付けを知らないし、スタッフさんにやらせるわけにはいかない。
となると、僕とあやちゃんが父さんの着付けをするしかない。
あやちゃんは着付けはとっても上手だけど、順番通りに探すのが大変だから今、スタッフさんが手伝っているその場所を僕が担えるようにしないと!
幸い、着付けはほとんど同じだって言ってたし覚えてしまえば多分僕にも手伝えるはず。
僕は自分の姿が変わっていくのを見るのを忘れてスタッフさんの手の動きだけを集中して見つめていた。
「直くん、着付け終わったよ」
そう声をかけられて初めて気づいた僕は、鏡に映る自分の姿にびっくりした。
「これが、僕……?」
結婚式でドレスを着た時も自分だと信じられないくらいだったけれど、今回の着物も驚きの声しか出ない。
ドレスの時はカールアイロンというものでふわふわのパーマみたいにしてもらったけれど、着物の場合は僕のこのストレートの髪の毛でも似合っている気がする。
「すっごく可愛いよ。音葉屋さん。直くんに似合う少し大き目のかんざしとかないかな?」
「ちょうどお似合いになるものがございますよ」
そう言って出してくれたのは僕の手のひらくらいありそうな大きな花のかんざし。
白やピンク、オレンジに水色の、着物の色によく似た可愛い花がついていた。
「大きなお花のかんざしがショートの髪を引き立てていてすごく可愛らしくなりますよ」
さっと僕の左耳にかんざしをさしてくれて鏡で見ると本当に可愛い。
「いいね! これ。かんざしもセットでお願いするね」
「ありがとうございます」
スタッフさんが嬉しそうな笑顔を向ける。それ以上に僕は嬉しくてたまらなかった。
「直くん。保さんにもみせよう」
慣れない着物に転ばないようにあやちゃんに手を引いてもらって試着ルームを出る。
そのカーテンの音に父さんが気づいてこっちを向いた瞬間、目を丸くして僕を見た。
「父さん、どう?」
すると父さんはびっくりするほど大きなため息を吐いた。
「父さん?」
「ああ、ごめん。あまりにも似合ってて言葉が出なかったんだ。まるで日本人形みたいで可愛いよ」
自然に褒められてちょっと照れる。でも嬉しい。
「父さんも早く着てみよう。ラシードさんもきっと喜ぶよ」
「そうだね。殿下は絶対に期待しているよね」
僕の言葉にあやちゃんが賛同する。
「保さん。何か気に入ったものあった?」
「似合うかどうかわからないんですが、これ……」
ちょっと緊張した表情で父さんが見せてくれたファイルには、肩と裾に綺麗な花が描かれた、明るいグリーンの着物があった。
それを見て僕はふと気づいた。
「この着物の色、ラシードさんの瞳の色に似てる」
そう呟くと、さっと父さんのほっぺたが赤くなった。
「ああ、そっか。なるほど。だから保さん、この着物にしたんだ」
「いや、えっと……」
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「すごくいいと思う。ラシードさんも喜ぶよ」
そういうと、父さんは嬉しそうに笑っていた。
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