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見守るということ
<side直>
パパと昇さん。
どんな反応してくれるかな。
ちょっと緊張しつつ、あやちゃんと父さんと一緒にパパたちのもとに戻ると、出迎えてくれた昇さんの姿に言葉が出なかった。
着物とはまた違う格好、あれは袴というものだったっけ。
いつもかっこいい昇さんだけど、それに輪をかけてかっこいい。
まるで武士みたいなその出立にドキドキが止まらない。
目が離せないまま、その場に立っていられなくなってきた。
あ、倒れそう……
それがわかったけれど、自分ではどうすることもできない。
抗えないまま、倒れるしかないと思ったその時、大きなものにさっと包み込まれた。
それが昇さんだってすぐにわかったのは安心する大好きな匂いだったから。
「大丈夫?」
僕を心から心配してくれる声に安心して、僕は力の抜けた腕で必死に抱きついた。
どうしても伝えたいことがあって、僕は昇さんの胸に抱きしめられたまま声を上げた。
「ぼく……はじめて、わかりました……」
僕の突然の言葉に昇さんは意味がわかっていないみたいだったけれど、どうしても伝えたかった。
以前、昇さんが言ってくれたあの言葉……
――直くんが可愛すぎて動けなくなっちゃうんだ……
そう言われた時、その言葉の意味がわかってるって思ってた。
でも、自分がそうなって初めてわかった。
あの時、ちゃんと理解できてなかったんだってことが。
だって、かっこいい昇さんをみて、言葉も出せない。動けない。目が離せない。
これが昇さんが言っていたことなんだってわかった。
それと同時に、昇さんも僕をみてそんなふうに思ってくれているってことも理解できて嬉しかった。
その気持ちが一気に込み上げてきて抑えられなかった。
「昇さん、大好き……」
気づけば、僕は昇さんに自分の思いを告げていた。
<side卓>
こちらにやってきた絢斗の姿に見惚れて駆け寄った時、視界の隅で直くんの身体が揺れたのが見えた。
咄嗟に手を伸ばそうとしたが、それよりも先に昇がさっと駆け寄って直くんを抱き止める。
その動きの速さに驚きつつも、ちゃんと直くんをみていたことにホッとした。
「昇くんの袴姿にドキッとしちゃったんじゃない?」
初々しい二人の姿を見て、絢斗が小声で私に囁く。
「そうかもしれないな。正直、私も驚いたよ。動きやすいかと思って袴を勧めたがあれほど似合うとは思ってなかった」
「そう? 私は思ってたよ」
「そうなのか?」
絢斗からの思わぬ言葉に驚いてしまった。
「だって、卓さんが高校生の時のアルバム見てるんだよ。私……」
「ああ、あれか……」
今は体育の選択授業で数種類の競技の中から選ぶことができるが、私が高校生の時は柔道か剣道の二択だった。
それで剣道を選んだんだった。
部活に入るほどではなかったが、剣道部の顧問から怪我をして出られなくなった生徒の代わりに試合に出てほしいと頼まれるくらいには強かったと思う。
「あの時の卓さん、すごくカッコ良かったから顔がそっくりな昇くんも似合うだろうなって思ってたよ」
昇が褒められるのはなんとなく嫉妬してしまうが、絢斗の根底に私がいるのならまぁ許そう。
そう自分を納得させていた私の耳に、直くんの嬉しそうな声が聞こえてきた。
「昇さん、大好き……」
その言葉に、私だけでなく隣にいたラシード殿下と保さんもぴくりと反応しているのがわかった。
「昇くん、嬉しそう。ね、卓さん」
「あ、ああ。そうだな」
「もう、ヤキモチ妬かないの!」
「そんなことは……」
ポツリと呟く私の声にラシード殿下が反応する。
『可愛い息子の恋愛を見守るというのは、なんとも複雑なものなのだな』
その言葉に私は思いっきり頷いたが、絢斗と保さんはなぜか楽しそうに笑っていた。
『ねぇ、卓さん。これから洋服を見に行きたいんだけど、いいかな?』
『絢斗の服か?』
『うーん、それはどっちでもいいんだけど観に行くのは保さんの服だよ』
『タモツの服?』
保さんの名前が出るだけですぐに殿下が反応する。
絢斗が初詣に出かけるときの流れを説明し、そのためにその日に着る服を準備しておきたいと伝えるとすぐに納得してくれた。
『初詣はあの小さな神社でいいのか? せっかくだからもっと有名なところに行っても……』
絢斗が初詣に行こうと考えていたのは私の実家のすぐ近くにある小さな神社。
地元の人しか集まらない場所だが、そこの露店はかなり美味しいと評判だ。
でも初めての初詣には物足りないのではないか。そんな心配がよぎった。
『ううん。そうなるとまた目立っちゃうかもしれないし、着物に慣れない直くんを疲れさせたくないから……』
確かに直くんのことを考えれば人混みよりは少ない神社の方が安心だろう。
『私もアヤト殿が勧める場所がいい。タモツによからぬものが近づくのは許せないからな』
殿下のその一言で初詣の場所が決まった。
後で父たちにも声をかけておくとしよう。
初詣……楽しくなりそうだな。
パパと昇さん。
どんな反応してくれるかな。
ちょっと緊張しつつ、あやちゃんと父さんと一緒にパパたちのもとに戻ると、出迎えてくれた昇さんの姿に言葉が出なかった。
着物とはまた違う格好、あれは袴というものだったっけ。
いつもかっこいい昇さんだけど、それに輪をかけてかっこいい。
まるで武士みたいなその出立にドキドキが止まらない。
目が離せないまま、その場に立っていられなくなってきた。
あ、倒れそう……
それがわかったけれど、自分ではどうすることもできない。
抗えないまま、倒れるしかないと思ったその時、大きなものにさっと包み込まれた。
それが昇さんだってすぐにわかったのは安心する大好きな匂いだったから。
「大丈夫?」
僕を心から心配してくれる声に安心して、僕は力の抜けた腕で必死に抱きついた。
どうしても伝えたいことがあって、僕は昇さんの胸に抱きしめられたまま声を上げた。
「ぼく……はじめて、わかりました……」
僕の突然の言葉に昇さんは意味がわかっていないみたいだったけれど、どうしても伝えたかった。
以前、昇さんが言ってくれたあの言葉……
――直くんが可愛すぎて動けなくなっちゃうんだ……
そう言われた時、その言葉の意味がわかってるって思ってた。
でも、自分がそうなって初めてわかった。
あの時、ちゃんと理解できてなかったんだってことが。
だって、かっこいい昇さんをみて、言葉も出せない。動けない。目が離せない。
これが昇さんが言っていたことなんだってわかった。
それと同時に、昇さんも僕をみてそんなふうに思ってくれているってことも理解できて嬉しかった。
その気持ちが一気に込み上げてきて抑えられなかった。
「昇さん、大好き……」
気づけば、僕は昇さんに自分の思いを告げていた。
<side卓>
こちらにやってきた絢斗の姿に見惚れて駆け寄った時、視界の隅で直くんの身体が揺れたのが見えた。
咄嗟に手を伸ばそうとしたが、それよりも先に昇がさっと駆け寄って直くんを抱き止める。
その動きの速さに驚きつつも、ちゃんと直くんをみていたことにホッとした。
「昇くんの袴姿にドキッとしちゃったんじゃない?」
初々しい二人の姿を見て、絢斗が小声で私に囁く。
「そうかもしれないな。正直、私も驚いたよ。動きやすいかと思って袴を勧めたがあれほど似合うとは思ってなかった」
「そう? 私は思ってたよ」
「そうなのか?」
絢斗からの思わぬ言葉に驚いてしまった。
「だって、卓さんが高校生の時のアルバム見てるんだよ。私……」
「ああ、あれか……」
今は体育の選択授業で数種類の競技の中から選ぶことができるが、私が高校生の時は柔道か剣道の二択だった。
それで剣道を選んだんだった。
部活に入るほどではなかったが、剣道部の顧問から怪我をして出られなくなった生徒の代わりに試合に出てほしいと頼まれるくらいには強かったと思う。
「あの時の卓さん、すごくカッコ良かったから顔がそっくりな昇くんも似合うだろうなって思ってたよ」
昇が褒められるのはなんとなく嫉妬してしまうが、絢斗の根底に私がいるのならまぁ許そう。
そう自分を納得させていた私の耳に、直くんの嬉しそうな声が聞こえてきた。
「昇さん、大好き……」
その言葉に、私だけでなく隣にいたラシード殿下と保さんもぴくりと反応しているのがわかった。
「昇くん、嬉しそう。ね、卓さん」
「あ、ああ。そうだな」
「もう、ヤキモチ妬かないの!」
「そんなことは……」
ポツリと呟く私の声にラシード殿下が反応する。
『可愛い息子の恋愛を見守るというのは、なんとも複雑なものなのだな』
その言葉に私は思いっきり頷いたが、絢斗と保さんはなぜか楽しそうに笑っていた。
『ねぇ、卓さん。これから洋服を見に行きたいんだけど、いいかな?』
『絢斗の服か?』
『うーん、それはどっちでもいいんだけど観に行くのは保さんの服だよ』
『タモツの服?』
保さんの名前が出るだけですぐに殿下が反応する。
絢斗が初詣に出かけるときの流れを説明し、そのためにその日に着る服を準備しておきたいと伝えるとすぐに納得してくれた。
『初詣はあの小さな神社でいいのか? せっかくだからもっと有名なところに行っても……』
絢斗が初詣に行こうと考えていたのは私の実家のすぐ近くにある小さな神社。
地元の人しか集まらない場所だが、そこの露店はかなり美味しいと評判だ。
でも初めての初詣には物足りないのではないか。そんな心配がよぎった。
『ううん。そうなるとまた目立っちゃうかもしれないし、着物に慣れない直くんを疲れさせたくないから……』
確かに直くんのことを考えれば人混みよりは少ない神社の方が安心だろう。
『私もアヤト殿が勧める場所がいい。タモツによからぬものが近づくのは許せないからな』
殿下のその一言で初詣の場所が決まった。
後で父たちにも声をかけておくとしよう。
初詣……楽しくなりそうだな。
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