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みんなで桜カフェに
<side昇>
――桜カフェはどうかな?
伯父さんに提案するのは、すごく緊張した。
でも、直くんと保さんが揃って桜カフェに行けるなんてこれを逃せばいつになるかわからない。
伯父さんに提案したら、櫻葉会長に連絡を取ってもしかしたらお店に来てくれるんじゃないかという期待もあった。
年末のこの時期、一花さんも一緒に来られたらいいと希望を持っていた。
会長から折り返しの電話が来て、伯父さんがお礼を言っているのが聞こえて俺の提案が受け入れられたと知った。
そうなればいいと思っていたけれど、まさかこんなにもスムーズに行くなんて想像してなかった。
「サプライズにしたいそうだから、櫻葉さんたちが来るのは内緒にしておくんだぞ」
電話を切った伯父さんからそう注意された。
サプライズにしたいと言ってきたということは、会長も一花さんも直くんと保さんに会いたいと思ってくれている証拠だ。
俺は桜カフェに行くのが楽しいでたまらなくなっていた。
そうして、あっという間に櫻葉グループの本社に到着した。
桜カフェ専用の駐車場に車を止め、俺と伯父さんはすぐに後部座席の扉を開けた。
「卓さん。桜カフェだね。久しぶりだから嬉しい」
「ああ。今日で年内の営業も終わりだから、ゆっくりしていこう」
伯父さんと絢斗さんがそんな会話をしている後ろからラシード殿下と保さんが降りてきた。
『ここは?』
『桜カフェです。保さんが勤めている櫻葉グループが経営しているカフェなんです』
『ほぉ、櫻葉グループの……』
ラシード殿下は興味深そうに店の外観を眺めていたけれど、保さんは少し緊張した表情に変わっていた。
このカフェが櫻葉会長の亡くなった奥さんの発案で出来たカフェだと言うことを知っているのかもしれない。
ラシード殿下はすぐ保さんの表情に気づき、耳元で何か話しているようだ。
大丈夫、と話しているの保さんの声がかすかに聞こえる。
緊張させてしまって悪いと思いつつも、今俺が話すわけにはいかない。
とりあえず何も言わずに、直くんを後部座席から降ろした。
「あの、ここ……桜カフェって……もしかして、一花さんの?」
どうやら話していた声が聞こえていたみたいだ。
「うん。そうだよ。一度直くんを連れてきたいと思っていたんだ。直くんが好きなスイーツもあるからゆっくりしよう」
直くんは嬉しそうだけど、お父さんのことが気に掛かっているみたいだ。
でも大丈夫。ちゃんと会って話したら緊張しなくなるよ。
そう言って安心させてやりたいけど、今は我慢だ。
『じゃあ中に入りましょうか』
伯父さんの声かけでみんなで中に入る。
ちょうど人が少ない時間帯だったのか、六人で入っても特に騒がれる様子はなかった。
「いらっしゃいませ。磯山先生。お久しぶりでございます」
「ああ、久しぶりだね」
さすが、伯父さん。
ここのスタッフさんとも知り合いか。
あの人、ここの店長っぽいけどそんな人が駆け寄ってくるんだから。すごいよな。
「お部屋をご用意しておりますので、こちらにどうぞ」
その人に案内された奥の個室は、和の雰囲気漂う座敷。
お茶をお持ちしますと言ってスタッフさんはすぐに部屋を出て行った。
直くんのコートを脱がせて、ハンガーに掛け、隣同士の席に座った。
『この部屋は実に雰囲気がいいな』
ラシード殿下はじいちゃんちにいる時から座敷が気に入ったようだった。
もしかしたらその話を聞いていた櫻葉会長が殿下のためにこの部屋を用意してくれたのかもしれない。
『保さん、直くん。スイーツのメニューはこっち。何にしようか?』
絢斗さんが早速メニューを手に二人に話しかける。
ここのは全て写真付きで、かかっているものも全て説明してあるから選びやすいだろう。
個室の扉を叩く音が聞こえて、お茶を持ってきてくれたと思ったけれど、開いた扉から入ってきたのは、櫻葉会長だった。
「えっ、会長……」
何も知らない保さんと、直くんも驚いている。
絢斗さんはそれで全てを察したのか、それともこの店にきた時点でなんとなく想像していたのか、嬉しそうな笑顔を見せている。
一瞬茫然としていた保さんだったけれど、すぐにその場に正座をして頭を下げた。
「会長。この度は突然のお願いにもかかわらず長くお休みをいただきましてありがとうございます」
「いやいや、休みを取るのは当然の権利だから気にしないでいい。それより家族団欒の場を邪魔して悪かったね」
「い、いえ。直接お話しできて光栄です」
「そう言ってくれて嬉しいよ。今日は迫田くんに紹介したい人がいて、連れてきたんだ」
「えっ、私に……?」
目を丸くする保さんの隣で不思議そうな表情をしているラシード殿下に櫻葉会長はもう一度英語で今の言葉を伝えた。
そして、扉の外に向かって「おいで」と声をかける。
その声に応じるように、貴船会長が一花さんを抱きかかえたまま部屋の中に入ってきた。
――桜カフェはどうかな?
伯父さんに提案するのは、すごく緊張した。
でも、直くんと保さんが揃って桜カフェに行けるなんてこれを逃せばいつになるかわからない。
伯父さんに提案したら、櫻葉会長に連絡を取ってもしかしたらお店に来てくれるんじゃないかという期待もあった。
年末のこの時期、一花さんも一緒に来られたらいいと希望を持っていた。
会長から折り返しの電話が来て、伯父さんがお礼を言っているのが聞こえて俺の提案が受け入れられたと知った。
そうなればいいと思っていたけれど、まさかこんなにもスムーズに行くなんて想像してなかった。
「サプライズにしたいそうだから、櫻葉さんたちが来るのは内緒にしておくんだぞ」
電話を切った伯父さんからそう注意された。
サプライズにしたいと言ってきたということは、会長も一花さんも直くんと保さんに会いたいと思ってくれている証拠だ。
俺は桜カフェに行くのが楽しいでたまらなくなっていた。
そうして、あっという間に櫻葉グループの本社に到着した。
桜カフェ専用の駐車場に車を止め、俺と伯父さんはすぐに後部座席の扉を開けた。
「卓さん。桜カフェだね。久しぶりだから嬉しい」
「ああ。今日で年内の営業も終わりだから、ゆっくりしていこう」
伯父さんと絢斗さんがそんな会話をしている後ろからラシード殿下と保さんが降りてきた。
『ここは?』
『桜カフェです。保さんが勤めている櫻葉グループが経営しているカフェなんです』
『ほぉ、櫻葉グループの……』
ラシード殿下は興味深そうに店の外観を眺めていたけれど、保さんは少し緊張した表情に変わっていた。
このカフェが櫻葉会長の亡くなった奥さんの発案で出来たカフェだと言うことを知っているのかもしれない。
ラシード殿下はすぐ保さんの表情に気づき、耳元で何か話しているようだ。
大丈夫、と話しているの保さんの声がかすかに聞こえる。
緊張させてしまって悪いと思いつつも、今俺が話すわけにはいかない。
とりあえず何も言わずに、直くんを後部座席から降ろした。
「あの、ここ……桜カフェって……もしかして、一花さんの?」
どうやら話していた声が聞こえていたみたいだ。
「うん。そうだよ。一度直くんを連れてきたいと思っていたんだ。直くんが好きなスイーツもあるからゆっくりしよう」
直くんは嬉しそうだけど、お父さんのことが気に掛かっているみたいだ。
でも大丈夫。ちゃんと会って話したら緊張しなくなるよ。
そう言って安心させてやりたいけど、今は我慢だ。
『じゃあ中に入りましょうか』
伯父さんの声かけでみんなで中に入る。
ちょうど人が少ない時間帯だったのか、六人で入っても特に騒がれる様子はなかった。
「いらっしゃいませ。磯山先生。お久しぶりでございます」
「ああ、久しぶりだね」
さすが、伯父さん。
ここのスタッフさんとも知り合いか。
あの人、ここの店長っぽいけどそんな人が駆け寄ってくるんだから。すごいよな。
「お部屋をご用意しておりますので、こちらにどうぞ」
その人に案内された奥の個室は、和の雰囲気漂う座敷。
お茶をお持ちしますと言ってスタッフさんはすぐに部屋を出て行った。
直くんのコートを脱がせて、ハンガーに掛け、隣同士の席に座った。
『この部屋は実に雰囲気がいいな』
ラシード殿下はじいちゃんちにいる時から座敷が気に入ったようだった。
もしかしたらその話を聞いていた櫻葉会長が殿下のためにこの部屋を用意してくれたのかもしれない。
『保さん、直くん。スイーツのメニューはこっち。何にしようか?』
絢斗さんが早速メニューを手に二人に話しかける。
ここのは全て写真付きで、かかっているものも全て説明してあるから選びやすいだろう。
個室の扉を叩く音が聞こえて、お茶を持ってきてくれたと思ったけれど、開いた扉から入ってきたのは、櫻葉会長だった。
「えっ、会長……」
何も知らない保さんと、直くんも驚いている。
絢斗さんはそれで全てを察したのか、それともこの店にきた時点でなんとなく想像していたのか、嬉しそうな笑顔を見せている。
一瞬茫然としていた保さんだったけれど、すぐにその場に正座をして頭を下げた。
「会長。この度は突然のお願いにもかかわらず長くお休みをいただきましてありがとうございます」
「いやいや、休みを取るのは当然の権利だから気にしないでいい。それより家族団欒の場を邪魔して悪かったね」
「い、いえ。直接お話しできて光栄です」
「そう言ってくれて嬉しいよ。今日は迫田くんに紹介したい人がいて、連れてきたんだ」
「えっ、私に……?」
目を丸くする保さんの隣で不思議そうな表情をしているラシード殿下に櫻葉会長はもう一度英語で今の言葉を伝えた。
そして、扉の外に向かって「おいで」と声をかける。
その声に応じるように、貴船会長が一花さんを抱きかかえたまま部屋の中に入ってきた。
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