ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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イタズラは許せない

<side卓>

保さんと一花くんを会わせたい。
そのチャンスが今日巡ってきた。

昇の提案で櫻葉さんに連絡を入れると、あちらも賛成してくれた。
しかもサプライズで会いにくるという。

みんなを連れてカフェに着くと、個室に案内された。
絢斗と何度かお邪魔したことがあるが、この個室は初めてだ。

広々とした座敷は、畳間が気に入っているラシード殿下も喜んでいるようだ。

あの時、すぐにこちらに向かうと話していた通り、すぐに櫻葉さんが部屋にやってきた。
突然の櫻葉さんの訪問に絢斗も最初は驚いていたが、すぐにその意図を理解したようだ。

「卓さん。そういうこと?」

私にだけ聞こえるように小声で尋ねてくる。

「ああ、やっぱりわかったか?」

「うん。桜カフェに着いた時から、そうなればいいなって思ってたから。さすがだね、卓さん」

絢斗に褒められるのは嬉しいがそこはちゃんと言っておかないとな。

「いや、提案したのは昇なんだよ」

「そうなの? そっか、昇くんがね……」

感慨深そうに絢斗は昇を見つめる。その間に櫻葉さんが部屋の外に向かって声をかけると、征哉くんが一花くんを抱き抱えて現れた。

櫻葉さんが自分の息子だと説明をすると、保さんは言葉にできないほど驚いていた。
けれど、一花くんが笑顔で保さんに挨拶をするとそれでハッとしたようだ。

その場に土下座をして謝罪する。
その姿に絢斗は一瞬止めようとしたが

「少し様子をみよう」

そう声をかけると、素直に頷いた。

日本語がわからないラシード殿下は突然の出来事に戸惑っておられたが、表情やその様子で状況を把握されたようだ。
何も言わず、ただ保さんに寄り添う。
すると、その場を一変させたのは直くんだった。

保さんを庇うように駆け寄ってきて、一花くんに声をかける。その様子を見て一花くんは笑顔を見せ、櫻葉さんと征哉くんは穏やかな表情を浮かべていた。

ここには、誰も直くんと保さんを糾弾する者はいない。
それがよくわかった。

「直くん。大丈夫だよ。僕、直くんのお父さんに会えて嬉しいんだ。今日、会えることになって大喜びで来たんだよ」

一花くんの言葉に直くんも保さんも驚いていたが、絢斗は「よかった」と笑顔で呟いていた。

「直くんのお父さん。僕、直くんのお友だちになったんです。今、すごく幸せなので昔のことはぜーんぶ忘れました。だから何も気にしないでください」

一花くんから続けてそんな言葉を言われて、保さんはさらに涙を流していたが直くんは隣で嬉しそうに笑っていた。

征哉くんから保さんの隣にいる人物について教えられた一花くんは、拙いながらも英語で話しかける。
まだ勉強を始めたばかりのようだが、これからまだまだ伸びる子だ。

「一花くん。すごいよ。これからどんどん上達するね」

絢斗からも褒められて嬉しそうだった。

「さぁ、せっかくうちのカフェにきてもらったことだし、お茶にしよう」

櫻葉さんがそう声をかけると、一花くんがすかさず自分が考案したというメニューがあると教えてくれる。
勉強もしながら、この会社になることも頑張っているのだとわかり嬉しくなる。

そんな時、少し離れた場所から犬の鳴き声が聞こえた。
その声で思い出したのか、一花くんに言われて征哉くんがペット用のケージを運んできた。

直くんはすぐにその中にいるのが櫻葉家で飼っているフランだと気づく。
さらに貴船家で飼っているグリの姿まであることに気づいた。

直くんの声にウサギが好きな絢斗が駆け寄る。ケージを覗き込み、「可愛いー!!」と笑顔を見せる。
そんなことで嫉妬してはいけないと思いつつも、ついあの笑顔を独り占めしたくなってしまうのだから、私はどうしようもない。

「パパー。フランとグリを出してもいい?」

「ああ、構わないよ」

どうやらこの部屋はペットと共に過ごせる部屋らしい。だからか、九人集まるにしても広すぎると思った。

一花くんがケージの扉を開けると、二匹が飛び出してきた。

「わふっ!」 「わぁっ、可愛い!」

「きゅう」  「ふふっ、もふもふ」

フランは直くんに、グリは絢斗の胸に向かって飛び込んできて、二人は嬉しそうに腕に抱いていた。

征哉くんは一花くんを畳に下ろし、こちらにやってくる。
ラシード殿下もさっとこちらに寄ってきて、いつの間にか私と櫻葉さん、昇と征哉くんとラシード殿下の五人が、絢斗と直くんと保さんと一花くん、そしてフランとグリを見つめるような位置関係に変わっていた。

「ふふ、可愛いー! あっ、くすぐったいよ」

フランが直くんの頬をぺろぺろと舐める。それがたまらなく嬉しそうな直くんを見て、昇はなんとなく複雑そうな表情をしていた。私はなんとかそれをスルーできたが、グリがイタズラして絢斗の服の中に顔を突っ込んで、

「わっ! そこ、だめ。くすぐったいよー。ひゃぁっ」

と絢斗の甘い声が聞こえてきて我慢の限界を迎えてしまった。

気づけば、私はさっと絢斗の元に駆け寄り、服の中でイタズラしていたグリを急いで取り出した。
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