ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

文字の大きさ
636 / 755

可愛い孫からのおねだり

<side寛>

――明日、直くんと昇をそちらに泊まらせることになるかもしれません。

ラシード殿下と保さんを伴っての外出の前日、そんな電話が卓からかかってきた。
だが、私も賢将さんも最初からそうなるだろうとわかっていた。

「私たちは構わないから、お前の都合に合わせていつでも泊まらせたらいい」

そう言ってやると、電話口からも卓の安堵した様子がわかった。

卓は直くんを心から愛しているし、昇も甥っ子として大切にしているのはわかっている。
だがそれと同時に絢斗くんのことも愛しているし、二人の時間を適度にとってやることが何よりも重要なことをわかっている。

だからこそ、私も賢将さんも卓が二人を泊まらせて欲しいと言っても反対することはない。
と言うか、私たちも直くんと昇との時間を過ごせて楽しんでいるのだから、泊まりに来てくれるのは喜びでしかない。

私たちにとっても卓にとっても、もちろん直くんと昇にとっても楽しい時間になる。

卓は泊まらせるかも……と話していたが、やはり夕方過ぎに直くんと昇をマンションに連れてきた。

来客用の駐車場まで迎えに行ったが、卓は二人を降ろして私たちに渡すと、挨拶もそこそこに帰っていった。

「直くん、今日は楽しかったかな?」

「はい! 父さんとラシードさんと一緒にあの高いタワーに上ったんです」

直くんが楽しかった様子が伝わってくるが、卓があれほど急いで絢斗くんと帰ったのはもっと別の理由がありそうだ。

「そうか、それはよかったな。他にもどこかにいったのか?」

「はい。あやちゃんが音葉屋さんに連れていってくれたんです」

「音葉屋さん? ああ、なるほど。そういうことか」

音葉屋さんと聞いただけで、私はすぐに察した。
賢将さんを見ると笑って頷いていたからおそらく賢将さんも卓があれほど急いでいたのも察したのだろう。

「いい着物が見つかったかな?」

「はい。父さんが選んでくれて……お正月が楽しみです。昇さんもかっこいい……えっと、袴を着るんですよ」

「ほお。それは楽しみだな。ここの近くの神社に行くんだろう?」

「はい。父さんとラシードさんも着物で一緒に初詣行くんです」

この話の流れだと、保さんも女性物の着物を着るのだろう。
直くんとよく似ているし、ラシード殿下もお喜びになっただろうな。

「おじいちゃまと、おじいちゃんもお着物着て一緒に初詣に行きましょう!」

「私たちも?」

もちろん一緒に初詣には行くつもりだった。
可愛い直くんたちを守るためにも必要だと思っていたが、まさか直くんに着物を着るようにねだられるとは思わなかったな。

「パパとラシードさんの着物姿、すっごくかっこよかったのでおじいちゃまとおじいちゃんのお着物も見たいです! だめ、ですか?」

可愛い孫にそんなおねだりをされて断ることなんてできるはずがない。

「もちろんいいよ。一緒に着物で初詣に行こうか」

「わぁー、やったー! 嬉しい!!」

その場で飛び跳ねて喜んでくれる直くんを見て、笑みが溢れる。

私も賢将さんも本当に可愛い孫に恵まれたものだ。

<side卓>

可愛い着物を着た絢斗を見た時から興奮していた。
そして、周平くんの店であのバスローブを見つけたらもう我慢ができなかった。
あの時から夜は絶対に二人っきりで過ごすと決めていた。

桜カフェで櫻葉さんたちとの時間を過ごして車に乗り込んで、そのまま父たちが暮らすマンションに向かった。

直くんと昇を降ろし、父と賢将さんへの挨拶もそこそにすぐにその場を離れた。

今日、初めて絢斗を助手席に乗せ自宅に向かう。

「卓さん、何か怒ってる?」

自宅に戻ることばかり考えていたから、どうも口数が減っていたようだ。

「絢斗に心配させてしまったな。悪い」

信号で停止した時に、さっと手を伸ばし、絢斗の手を握る。

「ううん、ちょっと気になっただけだよ」

「今日、ずっと絢斗と触れ合いたいと思っていたから、やっと二人っきりになって少し緊張しているみたいだ」

「卓さんが、緊張?」

信じられないという表情で私を見るが、本当に緊張しているんだ。

「ああ、だってあんなに可愛い格好をずっと見せられてきたんだ。二人になってドキドキしているんだよ」

「卓さんったら……」

正直に気持ちを告げると、絢斗は少し恥じらいながらも嬉しそうに腕を絡ませてくる。

「じゃあ、たっぷり愛し合おうね」

そんな言葉をかけられて、すぐにでも押し倒したくなるのを必死に抑えて、ようやく自宅に到着した。

それから、数時間私たちは寝室から出ることはなかった。
感想 1,424

あなたにおすすめの小説

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

私の弟なのに

あんど もあ
ファンタジー
パン屋の娘マリーゼの恋人は、自警団のリートさん。だけど、リートには超ブラコンの姉ミラがいる。ミラの妨害はエスカレートしてきて……。

愛さないと言われた妻、侍女と出て行く

菜花
ファンタジー
お前を愛することはないと夫に言われたコレットは、その日のうちに侍女のイネスと屋敷を出て行った。カクヨム様でも投稿しています。

魔王の下僕は今日も悩みが尽きない

SEKISUI
BL
魔王の世話係のはずが何故か逆に世話されてる下級悪魔 どうして?何故?と心で呟く毎日を過ごしている

異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない

木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。 生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。 ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。 その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。