ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

文字の大きさ
642 / 755

びっくりするほど柔らかい

<side直>

あやちゃんと一緒に作ったお正月用のリース。
さっちゃんたちもおじいちゃまたちも喜んでくれて嬉しかった。

これから手作りの鏡餅作り。

大きなお餅と小さなお餅が重ねられているあれだ。

うちの家にも飾られているのを見たことがある。
お餅の上に小さいみかんのようなものが飾られていて、あれがあるとお正月が来るんだなって感じていた。

でも飾った後のお餅がどうなるのか知らない。

「あれって飾った後はどうするんですか?」

おじいちゃまに尋ねると、優しく教えてくれた。

「鏡開きといって、一月十一日に硬くなった餅を木槌で叩いて小さくしてから、ぜんざいにしたり、油で揚げておかきにしたりして食べるんだよ」

「わぁー! すごい、食べてみたいです!」

「よし、じゃあ手作りした鏡餅をみんなで食べよう」

お餅が家で作れることも知らなかったし、鏡餅を作るのも食べるのも初めて。
僕はここでいろんな体験ができて本当に嬉しい。

しかも、お正月には作りたてのお餅も食べられるらしい。
杵と臼で作る、教科書に載っていたあのやり方で。
僕もみたことがないけれど、ラシードさんも絶対に見たことがないはずだからきっと驚くだろうな。
なんだかお正月がさらに楽しみになってきた。

リースを玄関に飾ってもらってみんなで写真を撮った。
昇さんとも交代して僕が写真を撮ったけれどみんな笑顔になってくれて嬉しかった。

お餅が出来上がるまでピアノを弾きたくて演奏室に行った。
昇さんも一緒に来てくれて嬉しい。

「何を弾こうかな」

今はすごく楽しい曲を弾きたい気分。
もうすぐお正月だし、そんな曲がいいかな。

そういえば秀吾さんからもらった楽譜の中にそれがあった気がする。

あの時もらった楽譜は、昇さんが僕のスマホに取り込んでくれていつでもその楽譜が見られるようにしてくれた。

僕はその楽譜を取り出し、さっと最後まで目を通した。
これなら大丈夫。弾けそう。

僕はピアノの前に座り、鍵盤に指を置いた。

家でも毎日ピアノを弾いているけれど、ここのピアノの感触も心地いい。
おじいちゃまの家にあるピアノも好きなんだ。
どれも僕の指にぴったりで弾いていて気持ちがいい。

僕のはしゃいだ心に連動するように楽しいメロディーが耳に入ってくる。
弾きながら昇さんに視線を向けると、笑顔で聞いてくれている。
ああ、こんなふうに楽しく演奏できるって幸せだな……

一曲目の演奏を終えると、昇さんが僕のところに来て椅子に座る僕を後ろから包み込むように抱きしめてくれる。

「今の曲、よかったですか?」

「うん。すっごくいい曲だった。直くんがすごく嬉しそうで俺も楽しくなったよ」

その言葉が嬉しくて振り返って昇さんを見上げると、昇さんの顔が近づいてきてちゅっと僕の唇に重なった。

「可愛くてキスしたくなっちゃった」

そう言ってもらえるのが嬉しい。

「僕も昇さんとキスできて嬉しいです」

素直に気持ちを告げると、昇さんがちょっと苦しげな表情を見せる。

「どうかしましたか?」

「いや、直くんが可愛すぎて困っただけ。もう一曲何か……」

昇さんがそう言いかけた時、少し離れた場所からピー、ピーと音が聞こえた。

「あれは……?」

「多分餅ができたんじゃないかな。行ってみようか」

昇さんに誘われて演奏ルームを出て、パパたちがいるリビングに向かった。

すると、白い粉が振り掛けられた低くて大きなテーブルが用意されていた。

「ここで作るんですか?」

「ああ、そうだよ。直くん、昇もエプロンをつけようか」

おじいちゃんが持ってきてくれたエプロンをつける。
昇さんがさっと紐を結んでくれてあやちゃんが三角巾を渡してくれる。

「出来立てのお餅は熱いから火傷すると危ないからね」

そう言っておじいちゃんがビニールの手袋を渡してくれる。
ピッタリと手に張り付くようなその手袋をつけたらあっという間に準備万端だ。

出来立てのお餅ってどんなんだろうな?
すごく楽しみになってきた。

「さぁ、じゃあ餅を取り出すぞ」

おじいちゃまが声をかけると、すぐにパパが立ち上がる。

「父さん。熱いですから私がやりますよ」

そういうが早いか、さっと餅つき機の蓋を開ける。

「わぁー、お餅だー!」

絵本の挿絵や教科書の写真に載っていたのと同じような真っ白で柔らかそうなお餅がたっぷりと入っている。

パパはそれを手慣れた手つきで取り出し、水に濡らした手で次々に千切っていく。

大きさのまちまちなそのお餅を白い粉につけながら形作っていくみたい。

「これは直くんが作る分だよ」

そう言って目の前に置かれた真っ白なお餅はびっくりするくらい柔らかくて気持ちが良かった。
感想 1,424

あなたにおすすめの小説

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。

魔王の下僕は今日も悩みが尽きない

SEKISUI
BL
魔王の世話係のはずが何故か逆に世話されてる下級悪魔 どうして?何故?と心で呟く毎日を過ごしている

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

そばにいられるだけで十分だから僕の気持ちに気付かないでいて

千環
BL
大学生の先輩×後輩。両片想い。 本編完結済みで、番外編をのんびり更新します。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★