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第二部
卓からのメッセージ
<side寛>
祥也くんたちが作ってくれた料理を満足した表情で食べ終わった直くんは、いつものようにウトウトしかけていた。
隣にいる昇がそっと自分の胸に抱きしめて寝かせようとしていると、
「ああ、隣の部屋に布団を敷いているから寝かせてあげるといい」
と日下部さんから声がかかる。
「いいんですか?」
「もちろんだ。そのために準備していたからな。祥也か透也。どっちか部屋に案内してやってくれ」
その声に二人が反応したところで、
「あ、いいよ。僕が連れて行くから」
と敦己くんが名乗りを上げてくれる。
とはいえ、上田くんが敦己くんを一人で行かせるはずもなく、二人でサッと立ち上がった。
「じゃあ、少しだけ失礼します」
昇は、もうすっかり眠ってしまった直くんを軽々と抱きかかえて、彼らの後ろをついて行った。
扉が閉まり、心配そうな表情を浮かべた暁くんが声をかけてくる。
「あの、直くんって……」
「ああ、心配はいらないよ。お腹がいっぱいになると眠くなってしまうんだ。でもその時間も少しずつ短くなってきているから、仮眠程度で起きるだろう」
「そうなんですね、よかった」
小田切くんには直くんの情報は共有されているだろうが、彼は何も知らないから気になったんだろう。
小田切くんの相手だけあって優しくていい子だ。
「二人が起きてくる前に片付けておくとしようか」
そんな日下部さんの言葉で、祥也くんたちが動き始めたところで、胸ポケットに入れていた私のスマホが振動を伝えた。
賢将さんが、着物姿の直くんの写真を絢斗くんに送っていたから、その返事かと思ったがそれなら私ではなく賢将さんに返事が来そうなものだが……
不思議に思いつつ、スマホを取り出して確認してみれば、メッセージの送信者は卓になっている。
気になって開いてみると
<絢斗が日下部さんをはじめ、みんなに新年の挨拶がしたいというので、夕方そちらに伺います。そのまま直くんと昇を連れて帰るので、私たちが向かうまでそちらにいてください。午後五時にはそちらに伺えると思います。卓>
というメッセージ。
昨日のあの感じからすると確実に今日は絢斗くんは動けないのではないかと思っていた。
そこまで行かずとも家から出ることはないと思っていたが、あいつも直くんの父になり意識が変わったということか……
いや、きっと絢斗くんが行きたいと言ったのだろう。このメッセージからも卓の意思は見えない。
それでも愛しい伴侶の望みなら叶えてやろうとするのだから、卓も頑張っているということか。
<ああ、わかった。日下部さんたちには私から伝えておこう。気を付けてくるんだぞ>
それだけ送るとすぐに既読がつき、了承しましたという簡素なスタンプがポンと送られてきた。
これが絢斗くんや直くん相手なら可愛らしいスタンプを送るのだろうな。
私との扱いの違いに思わず笑いながらも、私はメッセージの内容を日下部さんたちに伝えた。
「夕方五時ごろに、息子が絢斗くんと一緒に直くんと昇を迎えにくるそうです。その時に日下部さんたちに挨拶がしたいと言っています」
「おお。また賑やかになるのか。嬉しいことだ」
日下部さんはそう言って笑顔を見せていただけだったが、小田切くんは驚きの表情を見せていた。
「あの、磯山先生と緑川教授が来られるのですか?」
「ああ、みんなに挨拶がしたいと話していた」
そう告げると、小田切くんは一気に緊張した様子を見せたが、その理由はわかっている。
絢斗くんはコミュニケーション能力が高い。
大学でもたくさんの生徒たちに囲まれているのをみているから余計に、暁くんを絢斗くんに取られるとでも思っているのかもしれない。
まぁ、絢斗くんの場合は諦めて差し出したほうが気が楽になるだろうがな。
最愛を得たばかりの小田切くんは心配で仕方ないのかもしれないな。
祥也くんたちが作ってくれた料理を満足した表情で食べ終わった直くんは、いつものようにウトウトしかけていた。
隣にいる昇がそっと自分の胸に抱きしめて寝かせようとしていると、
「ああ、隣の部屋に布団を敷いているから寝かせてあげるといい」
と日下部さんから声がかかる。
「いいんですか?」
「もちろんだ。そのために準備していたからな。祥也か透也。どっちか部屋に案内してやってくれ」
その声に二人が反応したところで、
「あ、いいよ。僕が連れて行くから」
と敦己くんが名乗りを上げてくれる。
とはいえ、上田くんが敦己くんを一人で行かせるはずもなく、二人でサッと立ち上がった。
「じゃあ、少しだけ失礼します」
昇は、もうすっかり眠ってしまった直くんを軽々と抱きかかえて、彼らの後ろをついて行った。
扉が閉まり、心配そうな表情を浮かべた暁くんが声をかけてくる。
「あの、直くんって……」
「ああ、心配はいらないよ。お腹がいっぱいになると眠くなってしまうんだ。でもその時間も少しずつ短くなってきているから、仮眠程度で起きるだろう」
「そうなんですね、よかった」
小田切くんには直くんの情報は共有されているだろうが、彼は何も知らないから気になったんだろう。
小田切くんの相手だけあって優しくていい子だ。
「二人が起きてくる前に片付けておくとしようか」
そんな日下部さんの言葉で、祥也くんたちが動き始めたところで、胸ポケットに入れていた私のスマホが振動を伝えた。
賢将さんが、着物姿の直くんの写真を絢斗くんに送っていたから、その返事かと思ったがそれなら私ではなく賢将さんに返事が来そうなものだが……
不思議に思いつつ、スマホを取り出して確認してみれば、メッセージの送信者は卓になっている。
気になって開いてみると
<絢斗が日下部さんをはじめ、みんなに新年の挨拶がしたいというので、夕方そちらに伺います。そのまま直くんと昇を連れて帰るので、私たちが向かうまでそちらにいてください。午後五時にはそちらに伺えると思います。卓>
というメッセージ。
昨日のあの感じからすると確実に今日は絢斗くんは動けないのではないかと思っていた。
そこまで行かずとも家から出ることはないと思っていたが、あいつも直くんの父になり意識が変わったということか……
いや、きっと絢斗くんが行きたいと言ったのだろう。このメッセージからも卓の意思は見えない。
それでも愛しい伴侶の望みなら叶えてやろうとするのだから、卓も頑張っているということか。
<ああ、わかった。日下部さんたちには私から伝えておこう。気を付けてくるんだぞ>
それだけ送るとすぐに既読がつき、了承しましたという簡素なスタンプがポンと送られてきた。
これが絢斗くんや直くん相手なら可愛らしいスタンプを送るのだろうな。
私との扱いの違いに思わず笑いながらも、私はメッセージの内容を日下部さんたちに伝えた。
「夕方五時ごろに、息子が絢斗くんと一緒に直くんと昇を迎えにくるそうです。その時に日下部さんたちに挨拶がしたいと言っています」
「おお。また賑やかになるのか。嬉しいことだ」
日下部さんはそう言って笑顔を見せていただけだったが、小田切くんは驚きの表情を見せていた。
「あの、磯山先生と緑川教授が来られるのですか?」
「ああ、みんなに挨拶がしたいと話していた」
そう告げると、小田切くんは一気に緊張した様子を見せたが、その理由はわかっている。
絢斗くんはコミュニケーション能力が高い。
大学でもたくさんの生徒たちに囲まれているのをみているから余計に、暁くんを絢斗くんに取られるとでも思っているのかもしれない。
まぁ、絢斗くんの場合は諦めて差し出したほうが気が楽になるだろうがな。
最愛を得たばかりの小田切くんは心配で仕方ないのかもしれないな。
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