ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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寂しくてたまらない

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リビングに入るとすぐに昇さんが駆け寄ってくれる。

「おはよう。今日の洋服も可愛いね、よく似合ってるよ」

「えっ、あ、ありがとうございます」

「ふふっ。さぁ、ご飯を食べよう」

手を引かれて、食事が並んでいるテーブルに向かうと、ちょうど磯山先生が絢斗さんとダイニングにやってきた。

「おはようございます」

「ああ、おはよう」

「おはよう、直純くん。昇くんは朝食を手伝ってくれたんだって? ありがとう」

朝から笑顔が眩しい絢斗さんが昇さんにお礼を言う。
その言葉に昇さんが朝食を作っていたことを知った。

「えっ、昇さんが作ったんですか?」

「いや、ほとんど伯父さんだよ。俺が作ったのは、このおにぎりだけ。直純くんに食べて欲しくていろんな種類を作ったから、好きなのを食べて」

小さめのおにぎりは、見てどの具だかわかるように上にいろんな具が乗せられている。
見ているだけで美味しそうだ。

「直純くんはどれを食べてみたい?」

どれが好きかと聞かれなかったことにホッとしながら、目の前にあったものを答えてみた。

「ふふっ。鮭だね。俺も好きだよ」

そう言って僕のお皿におにぎりを乗せてくれる。

「いただきます」

「ああ、これは手で食べていいからね」

箸で持つべきか一瞬悩んだことに気づいてくれたのか、すぐそんな声が飛んでくる。
そのおかげで僕はすぐにおにぎりを手で持つことができた。

「わぁ、まだあったかいです」

ほんのりとあったかいおにぎりをパクリと頬張ると、中からも具がたくさん出てきた。

「んんっ、おいひぃ!」

食べながら何かを喋るなんて悪いことだとずっと思ってた。
現に家では黙々と食べないと怒られたし……。
それに美味しいとも思えなかったし、何も言葉が出なかった。

でもここでの食事は毎回どれもが美味しくて、ついつい言葉が漏れてしまう。

最初こそ、怒られる! と思ったけれど、僕が美味しいというと磯山先生も絢斗さんも笑顔になってくれるから、ここではしゃべってもいいんだと思えるようになった。

というか、言おうと思わなくてもついつい出てきちゃうんだけど。
それくらいご飯が美味しくてたまらないんだ。

「ふふっ。よかった。あっ、ご飯粒ついてるよ」

そういうと、昇さんは僕の唇の端についていたらしいご飯粒をとってくれて、そのまま自分の口に入れてしまった。

それがあまりにも自然で驚いてしまったけれど、目の前では磯山先生も絢斗さんの唇についたご飯粒をとって口に入れているのが見えた。

そっか、これって普通なんだ。

僕も昇さんの唇にご飯粒がついていたら、やってみよう!

そうウキウキしていたけれど、昇さんは上手におにぎりを食べるから、僕はできなかった。
次こそは昇さんのご飯粒をとってみたいな。


朝食を終えて、しばらく経つと昇さんが

「伯父さん。俺、今日はそろそろ帰るよ」

と言い出した。

「ああ、そうだな。早いほうがいい」

磯山先生も絢斗さんも納得しているけれど、

「えっ、もう……帰っちゃう、んですか……?」

まだ一緒にいられると思ってた僕は、つい気持ちを言葉に出してしまった。

「直純くん……俺が帰ると寂しい?」

優しい声で尋ねられて僕は頷いた。

「ふふっ。そうか、嬉しいよ。でもね、伯父さんと絢斗さん、そして直純くんの了承をもらえたから、すぐにでも父さんに話をしに行きたいんだ。日本に残って、ここで暮らすことを認めてもらったら、すぐに荷物を纏めてまたここに戻ってくるから。それまで待っててくれるかな?」

「本当に、戻ってきてくれるんですか?」

「ああ、もちろんだよ」

その自信満々な言葉に僕はホッとした。
僕の表情でわかったのか、

「じゃあ、すぐに来れるように頑張るからね」

と笑顔を見せてくれて、昇さんはすぐに荷物を持って帰ってしまった。


「直純くん、一緒にリースでも作ろうか」

「はい」

絢斗さんに誘われて、楽しくリース作りを始めたけれど、なんだかうまく作れない。

「……みくん、直純くん」

「あっ、ごめんなさい……」

「ふふっ。いいよ、集中できない日もあるからね。ちょっと休憩しようか」

絢斗さんがせっかく誘ってくれたのに、僕は何をしているんだろう……。

部屋から出て、リビングのソファーの座ると絢斗さんが美味しいお菓子とジュースを用意してくれた。
それを食べていると、

「昨日のゲームはどうだった?」

と尋ねられた。

「はい、すっごく楽しかったです。操作が難しかったんですけど、昇さんがわかりやすく教えてくれて……」

話をしていると、昇さんに後ろから覆われながらゲームをした記憶が甦ってきた。

昇さん……すっごく、あったかくてホッとしたな…‥。

「そっか、楽しめたみたいでよかった。昇くんがここに住み始めたら、また教えてもらえるよ」

「は、はい。楽しみです」

今はなんだか、寂しくなっていたけど昇さん……ここに住めるようになるかもしれないんだよね。
うん、すごく楽しみだ。


その日は結局リースも作れないまま、夕食を食べたらすぐに眠くなってきた。
きっと昨日夜遅くまで起きていたからかもしれない。

「直純くん、眠そうだから今日は早く寝たほうがいいよ」

「はい。おやすみなさい……」

いつもなら、少し絢斗さんや磯山先生とおしゃべりして寝るのだけど、今日は先に寝かせてもらうことにした。

部屋に戻り、ベッドに入る。
でも、眠たいのに全然眠れない。

どうしてだろう……?

いつもなら、目を瞑ったらすぐに眠れるのに……。

なんとなく寂しくてたまらない。

昨日はぐっすり眠れたのに……。

結局二時間くらいベッドの中で寝返りを打ち続けたけれど眠れない。

ふと

――隣同士だから、いつでも入って来ていいからね

という昇さんの言葉を思い出して、昇さんがいないとわかっていながら、僕はベッドを抜け出し、部屋を出た。

真っ暗でしんと静まり返っている。
きっともう絢斗さんも磯山先生も眠ってるんだ。

僕は静かに隣の部屋の扉を開けた。

ふわっと昇さんの匂いを感じてホッとする自分がいた。
昇さんはいないけど、昇さんを感じる。

僕は吸い込まれるように、部屋の中のベッドに向かい、身体を潜り込ませた。

ああ、ここならなんだか眠れそう……。

そう思った時には、僕はもうあっという間に眠りに落ちていた。
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