ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

文字の大きさ
81 / 717

直くんの将来のために

しおりを挟む
<side卓>

「絢斗、ロールキャベツはクリームとトマトとコンソメ、どれがいい?」

「トマトが好き!」

「ふふっ。そうだと思ったよ。じゃあ、そうしようか」

「ねぇ、作るのみてていい?」

「ああ、もちろん」

料理を作りながらも、絢斗との会話を聴きこぼすことはない。

「そういえば、絢斗」

「んっ?」

「村山くんも法学部志望だと言っていたよ。春からは昇と二人、楽しくなりそうだな」

「うん。知ってる」

「そうなのか?」

「うん。前に二葉さんと瑠璃さんとお茶した時に瑠璃さんが話してたんだよね。法学部に興味があるみたいって。ふふっ、村山くんね。卓さんのこと……尊敬してるんだって話してたよ」

「ははっ。それはありがたいな。優秀な弁護士になってうちに来てくれたら助かるよ」

「そうだね。伊織くんも上田くんも事務所にいる時は依頼がすごかったもんね」

「ああ。今は個人の仕事はセーブしているが、昇と村山くんが来てくれたらまた受けられるようになるかもしれないな」

正直、企業の顧問弁護士の仕事や、協力依頼だけで有り余るほどの報酬を受け取っているから個人の仕事を受けなくても問題はないのだが、目の前の困った人を助けたくて弁護士になったことを考えれば、弁護士を辞めるその時まではそういう案件も受けたいと思っている。

昇や村山くんがその意思を受け継いでいい弁護士になってくれるのなら私としても嬉しいことだ。

「直くんは昇くんが弁護士になったら、中谷くんみたいにパラリーガルとして支えてくれたらいいよね」

「ああ、そうだな。直くんがやりたいと言えば、勉強をさせてやりたいな」

「ねぇ、正式に卓さんの息子として手続きを済ませたら、学校はもう行けるんじゃない?」

「そうだな。直くんの安全のために外には出していなが、今のところ、直くんの顔出しはされていないようだし大丈夫だろう」

絢斗には詳しくは話していなかったが、私が顧問弁護士を務めている櫻葉グループ、貴船コンツェルン、ベルンシュトルフホールディングス、Clef de Coeurのトップに掛け合って直くんの個人情報流出に制限をかけてもらったおかげで、直くんのことを報じる媒体はほとんど現れなかった。

貴船邸やうちの事務所の周りを張り込んでいた媒体はもうとっくに始末しているし、問題はないだろう。

「ねぇ、直くんを新しい学校に行かせるならどこにする?」

「それはもちろん、絢斗の母校しかないだろう」

桜守さくらのもり?」

「ああ、そこなら中学三年で編入させてもそのまま高校に上がれるだろう。直くんなら成績は問題ないだろうし」

「うーん、中学は桜守でいいけど、高校から儁秀しゅんしゅうに行かせるのはどう? 卓さんの母校だし、昇くんたちも同じだよ。成績はそれこそ問題ないよ」

「ダメダメ、直くんが儁秀なんて危なすぎる」

「危ないって……ふふっ」

絢斗は冗談だと思っているだろうが、冗談なんかじゃない。
昇が同じ年でずっとそばについていてあげられるならまだしも、直くんを一人で行かせるなんて危なすぎてとんでもない。

直くんなら桜守で安心安全に過ごしたほうがいいんだ。
父としてそれくらいの学費くらい出せるほどの蓄えはある。

そんな話をしていると、不意に昇が私たちを呼ぶ声が聞こえた。

それに振り返ってみると、そこには昇と同じ学ランに身を包んだ直くんの姿。
儁秀には行かせないと思っていても制服が似合うかどうかは別物だ。

可愛い直くんが着る学ランというのも実に可愛らしい。
私や昇が着るのとは全く印象が変わるから驚きだ。

写真を撮りたいという絢斗の声かけに一気に撮影会が始まる。

直くんだけの写真から昇とのツーショット。
絢斗や私とのツーショット。
そして、昇が私たち三人の写真も撮ってくれた。

とめどなく聞こえるシャッター音に笑ってしまいながらも、昇の気持ちはよくわかる。
愛しい人が自分と同じ制服を着ているなんて最高だからな。

私は以前倉橋くんから教えてもらった写真と動画の保存ファイルの存在を昇にも教えてやることにした。
これで昇の大切な写真や動画は永久に守られることになる。

「ねぇ、直くん。桜守の制服も着てみない?」

「えっ? 桜守ですか?」

「うん。実は思い出に制服取ってあるんだ。直くんなら着られそうだし、着て見せて!」

「でも、あやちゃんの大事な思い出なのにいいんですか?」

「ふふっ。私が直くんに着てもらいたいんだよ。ちょっと待ってて。すぐ持ってくるから!」

そう言って絢斗は走って部屋に取りに行った。

「パパ……いいんですか?」

「ああ。私も見てみたいよ。着てくれるかい?」

「はい。僕……桜守に憧れてたんです」

「そうか、ならよかった」

やっぱり編入は桜守一択だな。
ああ、楽しみだ。
しおりを挟む
感想 1,342

あなたにおすすめの小説

【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」

まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。 【本日付けで神を辞めることにした】 フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。 国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。 人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 アルファポリスに先行投稿しています。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

お姉様のお誕生日を祝うのが、なぜ我儘なの?

月白ヤトヒコ
ファンタジー
健康で、元気なお姉様が羨ましかったの。 物心付いたときから、いつも体調が悪かった。いつもどこかが苦しかった。 お母様が側にいてくれて、ずっと看病してくれた。お父様は、わたしのお医者様の費用やお薬代を稼ぐのが大変なんだってお母様が言ってた。 わたし、知らなかったの。 自分が苦しかったから。お姉様のことを気にする余裕なんてなかったの。 今年こそは、お姉様のお誕生日をお祝いしたかった……んだけど、なぁ。 お姉様のお誕生日を祝うのが、なぜ我儘なの? ※『わたくしの誕生日を家族で祝いたい、ですか? そんな我儘仰らないでくださいな。』の、妹視点。多分、『わたくしの誕生日を~』を先に読んでないとわかり難いかもです。 設定はふわっと。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。

竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。 男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。 家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。 前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。 前世の記憶チートで優秀なことも。 だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。 愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。

奪う人たちは放っておいて私はお菓子を焼きます

タマ マコト
ファンタジー
伯爵家の次女クラリス・フォン・ブランディエは、姉ヴィオレッタと常に比較され、「控えめでいなさい」と言われ続けて育った。やがて姉の縁談を機に、母ベアトリスの価値観の中では自分が永遠に“引き立て役”でしかないと悟ったクラリスは、父が遺した領都の家を頼りに自ら家を出る。 領都の端でひとり焼き菓子を焼き始めた彼女は、午後の光が差す小さな店『午後の窓』を開く。そこへ、紅茶の香りに異様に敏感な謎の青年が現れる。名も素性も明かさぬまま、ただ菓子の味を静かに言い当てる彼との出会いが、クラリスの新しい人生をゆっくりと動かし始める。 奪い合う世界から離れ、比較されない場所で生きると決めた少女の、静かな再出発の物語。

「私が愛するのは王妃のみだ、君を愛することはない」私だって会ったばかりの人を愛したりしませんけど。

下菊みこと
恋愛
このヒロイン、実は…結構逞しい性格を持ち合わせている。 レティシアは貧乏な男爵家の長女。実家の男爵家に少しでも貢献するために、国王陛下の側妃となる。しかし国王陛下は王妃殿下を溺愛しており、レティシアに失礼な態度をとってきた!レティシアはそれに対して、一言言い返す。それに対する国王陛下の反応は? 小説家になろう様でも投稿しています。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

処理中です...