ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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母親の勘

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「よっ、磯山。また朝からイチャイチャしてきたのか?」

「わっ、なんだよ。急に出てくるなよ」

今朝の直くんとのことを何度も思い返しながら、学校の廊下を歩いていると背中に衝撃がきて驚いて振り返ると村山がニヤついた顔で立っていた。

「お前が俺に気づかないからだろ。靴箱のところで声かけたのにスルーして行ったんだから」

「えっ? それは悪い」

「あれだけニヤついてたら気づかないよな。どうせまたあの子のことを考えてたんだろう?」

「まぁな」

「またおにぎりか? いや、それであんなにニヤつかないか? 何かあったのか?」

「聞きたいか?」

「言いたいんだろう? さっさと言えよ」

少し呆れるような口調をしつつも、村山が俺のことを気にかけてくれているのは知っている。
まぁ、言いたいというのは間違ってないし。

教室に入り、席に座ってから俺は村山にだけ聞こえるように話をした。

「直くんと正式に恋人になったんだ」

「ええっ? マジか?」

「ああ。俺の気持ちを伝えて、直くんからもちゃんと返事をもらったからな」

「それで? どうなったんだ?」

「どうなったって?」

「だって、一緒に住んでるんだろう? 一緒の部屋で寝ているみたいな話もしてなかったか?」

「ああ。それは変わらず。昨日も一緒に寝て、寝起きの直くんを起こして一緒に朝食食べてきた」

「マジかよ。それもうほぼほぼ新婚じゃん」

「ああ。可愛い直くんに見送られて……いや、この後は俺と直くんの秘密にしとこう」

言いたいけど、教えるのは勿体無い気がする。
そんな複雑な気持ちなんだ。

「なんだよ、途中で。まぁ大体察しはつくけど。伯父さんたちも認めてくれてるのか?」

「ああ、もちろんだよ」

「すげぇな、公認で付き合えて、しかも同じ部屋で寝るとかなんでもし放題だろ」

「おいっ! 余計な想像すんなよ。言っとくけど、お前の想像しているようなことはないからな。伯父さんとも約束したし」

「そうなのか?」

「当たり前だろ。直くんはまだ14歳だぞ」

「ああ……そういうことか。それはそれで大変だな」

村山の言いたいことはよくわかる。
でも気持ちが通じ合っていない頃よりは今の状況の方が断然いい。
直くんも無邪気に甘えてきてくれるしな。

「それよりカールのことだけど……」

「ああそうそう。明後日の見送りと迎えの件、どうなった?」

「伯父さんと絢斗さんも一緒に見送りに行ってくれるから、そのままカールを迎えるよ。っていうか、村山の両親も一緒に来るんだろう?」

「そうなんだよ。俺は一人で迎えにいく気満々だったんだけど、両親とも、元々磯山の両親を見送るつもりだからそのままカールも迎えるつもりだったって怒られたよ」

「考えてみれば、村山の両親とうちの両親……特に母さんたちは仲良いからな。フランスに行くとなれば見送りに行くよな」

「ああ。俺、カールが来ることで頭がいっぱいでそのこと忘れてたわ」

村山の言葉に、前にビデオチャットで話をした時のことを思い出した。

いつもなら、いろんなことに気を配るはずの村山がカールのことしか考えられなくなっているという事実が、きっとそうなんだろうなと想像できた。

「それで、カールとは毎日話してるのか?」

「ああ。日本行きが近づいてきたから、カールも楽しみらしくてさ。特に俺たちと一緒に学校で勉強できるのを楽しみにしているみたいだぞ」

「ははっ。観光よりも学校での勉強が楽しみなのか、カールっぽいな」

「頼んでいた制服も今日届くから取ってくるよ」

「準備万端だな」

「母さんの方がもっとだよ。何度か母さんも入れてビデオチャットで話したんだけど、やたらとカールのこと気に入っててさ。カールに使ってもらう予定の客間に可愛い家具やらカーテンやら入れて模様替えしてたんだぞ」

「でも、二週間だけだぞ。そのためにそんなに?」

「ああ。でもカールが日本の大学に行く気だって話したから、その時はうちに下宿させるつもりみたいで今から準備してこの部屋に慣れさせておいた方がいいとか言ってるんだよ」

どうやら、すっかり村山の母さんもカールを気に入ったみたいだ。
いや、もしかしたら村山の母さんはカールに対する村山の気持ちに気づいたかもしれないな。

母さんも俺の直くんへの好意に気づいていたし。
それが母親の勘というものなのかもしれないな。

<side絢斗>

昨夜はいつも以上に激しかった気がする。
でも心地良い疲れだ。

卓さんからの愛を身体中で感じられて幸せしかない。

もう卓さんは仕事に行ってしまったのかな?
時計を見ようとゆっくりと身体を起こそうとすると、ガチャリと扉が開いて

「絢斗、起きたのか?」

と卓さんの声が聞こえた。

「おはよう。ちょうど今、目が覚めたところ」

「そうか。ああ、無理して起きないでいい」

卓さんは持っていたトレイをベッド横のテーブルに置くと、すぐに私を抱き起こしてくれた。

「もう仕事に行ったのかと思って時計を見ようとしただけ」

「そうか、ごめん。寂しがらせたな」

「ううん。身体中に卓さんの痕跡があるから寂しくなかったよ」

「絢斗……」

「んんっ……」

嬉しそうにキスをしてくれる卓さんに抱きつくと、

「きゅるる」

とお腹が鳴ってしまった。

「ははっ。可愛い音が聞こえたな」

「だって、いい匂いがするから」

「ああ。一緒に食べよう」

そういうと、私をベッドのヘッドボードにもたれさせて、テーブルを準備してくれた。

目の前に美味しそうな朝食が並んでいる。

「ああ、美味しそう!!」

「このおにぎりは直くんが作ってくれたんだよ」

「そうなんだ! どんどん上手になってるね」

「ああ。だが、私は絢斗が作ってくれるおにぎりも好きだよ」

「卓さん……ありがとう」

料理が苦手でも、こうして褒めてもらえるから私も頑張ろうと思えるんだ。

私は本当に幸せだな。
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