147 / 678
村山家との対面
しおりを挟む
<side昇>
直くんの食べかけのいちごクリームの入ったドーナツを口にする。
フォークももちろん直くんが使ったものだ。
父さんも、伯父さんも甘いものは普段は苦手でコーヒーだって濃い目のをブラックで飲むのに、母さんや、絢斗さんに食べさせてもらったり、残したものは美味しそうに平らげる。
もちろん、宗一郎さんも伊織さんも同じだ。
それをただ単に残したらお店の人に悪いと思って食べていると思っていたあの時の俺は子どもだったと今ならわかる。
直くんが残したものを食べずに置いて帰るなんて絶対にできない。
どれだけ甘くても、どれだけ満腹だとしても直くんの食べ残しならご馳走に見えるんだ。
きっと父さんたちも同じ気持ちに違いない。
だから、俺はゆっくりと味わいながらドーナツを食べ終えた。
すると、そのタイミングで俺のスマホが通知を伝えた。
画面を見ると村山の名前。
<家族で今、空港に着いたんだけど磯山たちはどこにいる?>
「父さん、母さん。村山の家族が空港着いたって」
「あら、早く来てくれたのね。じゃあ、瑠璃さんたちにもこっちに来てもらいましょうか?」
「わかった。そう伝えるよ」
俺は手早くここの店の名前をメッセージで送るとすぐに村山から了解のスタンプが送られてきた。
その間に父さんはスタッフさんに三人増えることを伝え、隣の席をくっつける許可を得た。
「父さん、どうやって座る?」
「そうだな。私がお前の隣に行こう。瑠璃さんには二葉と絢斗さんの間に座ってもらって、純弥と龍弥くんにはこっちに来てもらおうか」
これなら母さんの隣が直くんになるから大丈夫か。隣には俺もいるし、いい席順だな。
席替えを無事に終えたところで、村山たちがやってきた。
父さんが入口にいる村山のおじさんに手を挙げてみせると、三人はすぐにこっちにやってきた。
母さんが立ち上がって出迎え、席に案内する。
「瑠璃さん、見送りに来てくれてありがとう! さぁさぁ、座って!」
「ありがとう! しばらく離れ離れになっちゃうんだから当たり前よ!! でもクリスマスかお正月には帰ってくるんでしょう?」
「うーん、そうね。とりあえず昇の合格が決まった時には帰ってくるのは確定だけど、クリスマスあたりは考え中なの」
「そうなの? 帰ってきてくれたら嬉しいわ」
村山の母さんが案内された席に座ると隣に座っていた絢斗さんが、
「二葉さんは、直くんが合格した頃に来たいんでしょう?」
と尋ねる。
その言葉でようやく村山の母さんも俺と直くんの存在に気づいたようで、俺たちに視線を向けた。
「あ、あなたが直純くん?」
「は、はい。磯山直純です。は、初めまして……」
「――っ!!! 可愛い!! なんて可愛いのかしら!!!」
想像以上の可愛さだったのか、村山の母さんは興奮しながら笑顔で直くんを見つめていた。
「母さん! あんまり怯えさせるなよ。直純くん、びっくりしているだろう!」
「ごめんなさい。あまりにも可愛くてびっくりしちゃったのよ。ごめんなさいね」
「い、いえ。大丈夫です」
直くんはまだ少し緊張している様子だけれど、テーブルの下で俺が手を繋いでいるから安心したようだ。
「あら、そういえば磯山って……」
「そうなの。直純くん、お義兄さんの息子になったのよ。だから、私たち親戚なのよ」
「そうなんですか?」
「ああ、我が家の可愛い息子が増えたよ」
伯父さんの嬉しそうな顔を見て、直くんも笑顔を浮かべる。
やっぱり伯父さんに息子だと言われるのが一番嬉しいみたいだ。
「絢斗さん、良かったですね。可愛い子ができて」
「本当に毎日楽しいよ。きっと、今日瑠璃さんたちの家にホームステイにくるカールくんも同じくらい可愛い子になると思うよ」
「ええ、それは多分間違いないですよ。もう楽しみで、楽しみで」
「言っとくけどカールは俺が磯山から頼まれてるんだから、世話は俺がするからな」
「はいはい。わかってるわよ」
ああ、そうか。
もう村山の両親は村山の様子にやっぱり気づいているんだな。
これが二週間だけのホームスティだけで終わらないことも全部。
カールもきっと直くんと同じくらい村山家で大切にされることだろう。
「それで合格って、どこか受験するの?」
「桜守の中等部の編入試験を受けるつもりなのよ。その合格が決まるのがちょうどクリスマス前くらいだから、その頃に帰ってきてお祝いするのもいいかなって思ってて、まだ決定じゃないんだけどね」
「ああ、そういうこと。それならその頃がいいわね。ちょうどその時にはイリゼホテルのスイーツビュッフェも始まっているし、みんなで一緒に行けるじゃない!」
「ああ、それいいかも!! 絢斗さんと直くんも一緒にいけたら楽しくなるわ! ねぇ直くん」
「はい。僕も行ってみたいです」
母さんと村山の母さんは絢斗さんと直くんを仲間に入れてすっかり話に夢中だ。
父さんと村山の父さんも伯父さんを交えて話をしている。
俺は取り残された村山と顔を見合わせた。
直くんの食べかけのいちごクリームの入ったドーナツを口にする。
フォークももちろん直くんが使ったものだ。
父さんも、伯父さんも甘いものは普段は苦手でコーヒーだって濃い目のをブラックで飲むのに、母さんや、絢斗さんに食べさせてもらったり、残したものは美味しそうに平らげる。
もちろん、宗一郎さんも伊織さんも同じだ。
それをただ単に残したらお店の人に悪いと思って食べていると思っていたあの時の俺は子どもだったと今ならわかる。
直くんが残したものを食べずに置いて帰るなんて絶対にできない。
どれだけ甘くても、どれだけ満腹だとしても直くんの食べ残しならご馳走に見えるんだ。
きっと父さんたちも同じ気持ちに違いない。
だから、俺はゆっくりと味わいながらドーナツを食べ終えた。
すると、そのタイミングで俺のスマホが通知を伝えた。
画面を見ると村山の名前。
<家族で今、空港に着いたんだけど磯山たちはどこにいる?>
「父さん、母さん。村山の家族が空港着いたって」
「あら、早く来てくれたのね。じゃあ、瑠璃さんたちにもこっちに来てもらいましょうか?」
「わかった。そう伝えるよ」
俺は手早くここの店の名前をメッセージで送るとすぐに村山から了解のスタンプが送られてきた。
その間に父さんはスタッフさんに三人増えることを伝え、隣の席をくっつける許可を得た。
「父さん、どうやって座る?」
「そうだな。私がお前の隣に行こう。瑠璃さんには二葉と絢斗さんの間に座ってもらって、純弥と龍弥くんにはこっちに来てもらおうか」
これなら母さんの隣が直くんになるから大丈夫か。隣には俺もいるし、いい席順だな。
席替えを無事に終えたところで、村山たちがやってきた。
父さんが入口にいる村山のおじさんに手を挙げてみせると、三人はすぐにこっちにやってきた。
母さんが立ち上がって出迎え、席に案内する。
「瑠璃さん、見送りに来てくれてありがとう! さぁさぁ、座って!」
「ありがとう! しばらく離れ離れになっちゃうんだから当たり前よ!! でもクリスマスかお正月には帰ってくるんでしょう?」
「うーん、そうね。とりあえず昇の合格が決まった時には帰ってくるのは確定だけど、クリスマスあたりは考え中なの」
「そうなの? 帰ってきてくれたら嬉しいわ」
村山の母さんが案内された席に座ると隣に座っていた絢斗さんが、
「二葉さんは、直くんが合格した頃に来たいんでしょう?」
と尋ねる。
その言葉でようやく村山の母さんも俺と直くんの存在に気づいたようで、俺たちに視線を向けた。
「あ、あなたが直純くん?」
「は、はい。磯山直純です。は、初めまして……」
「――っ!!! 可愛い!! なんて可愛いのかしら!!!」
想像以上の可愛さだったのか、村山の母さんは興奮しながら笑顔で直くんを見つめていた。
「母さん! あんまり怯えさせるなよ。直純くん、びっくりしているだろう!」
「ごめんなさい。あまりにも可愛くてびっくりしちゃったのよ。ごめんなさいね」
「い、いえ。大丈夫です」
直くんはまだ少し緊張している様子だけれど、テーブルの下で俺が手を繋いでいるから安心したようだ。
「あら、そういえば磯山って……」
「そうなの。直純くん、お義兄さんの息子になったのよ。だから、私たち親戚なのよ」
「そうなんですか?」
「ああ、我が家の可愛い息子が増えたよ」
伯父さんの嬉しそうな顔を見て、直くんも笑顔を浮かべる。
やっぱり伯父さんに息子だと言われるのが一番嬉しいみたいだ。
「絢斗さん、良かったですね。可愛い子ができて」
「本当に毎日楽しいよ。きっと、今日瑠璃さんたちの家にホームステイにくるカールくんも同じくらい可愛い子になると思うよ」
「ええ、それは多分間違いないですよ。もう楽しみで、楽しみで」
「言っとくけどカールは俺が磯山から頼まれてるんだから、世話は俺がするからな」
「はいはい。わかってるわよ」
ああ、そうか。
もう村山の両親は村山の様子にやっぱり気づいているんだな。
これが二週間だけのホームスティだけで終わらないことも全部。
カールもきっと直くんと同じくらい村山家で大切にされることだろう。
「それで合格って、どこか受験するの?」
「桜守の中等部の編入試験を受けるつもりなのよ。その合格が決まるのがちょうどクリスマス前くらいだから、その頃に帰ってきてお祝いするのもいいかなって思ってて、まだ決定じゃないんだけどね」
「ああ、そういうこと。それならその頃がいいわね。ちょうどその時にはイリゼホテルのスイーツビュッフェも始まっているし、みんなで一緒に行けるじゃない!」
「ああ、それいいかも!! 絢斗さんと直くんも一緒にいけたら楽しくなるわ! ねぇ直くん」
「はい。僕も行ってみたいです」
母さんと村山の母さんは絢斗さんと直くんを仲間に入れてすっかり話に夢中だ。
父さんと村山の父さんも伯父さんを交えて話をしている。
俺は取り残された村山と顔を見合わせた。
1,643
あなたにおすすめの小説
拗らせ問題児は癒しの君を独占したい
結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。
一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。
補習課題のペアとして出会った二人。
セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。
身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。
期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。
これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
猫を追いかけて異世界に来たら、拾ってくれたのは優しい貴族様でした
水無瀬 蒼
BL
清石拓也はある日飼い猫の黒猫・ルナを追って古びた神社に紛れ込んだ。
そこで、御神木の根に足をひっかけて転んでしまう。
倒れる瞬間、大きな光に飲み込まれる。
そして目を覚ましたのは、遺跡の中だった。
体調の悪い拓也を助けてくれたのは貴族のレオニス・アーゼンハイツだった。
2026.1.5〜
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる