ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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親友ができた

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カールが直くんとの挨拶に、ドイツ人なら至極当然のハグを求めてきて、それがカールの中では普通だとわかっていながらもやっはり目の前で抱きしめられる直くんを見るのが嫌で間に割り込んでしまった。

伯父さんに笑われているのが気配でわかる。それでもそれを許せるほどまだ俺は人間ができていないみたいだ。
そりゃあ伯父さんたちみたいに熟年夫夫ならハグくらいならスルーできるくらいにはなっているかもしれないけれど、なんと言ってもまだ直くんと恋人になれて日が浅いし、そこまで寛容にはなれない。

握手をするようにカールに声をかけると、カールは少し残念そうな表情を見せながらも直くんに握手を求めた。

直くんは初めての握手だろうか。少し緊張しながらも手を差し出し、カールと挨拶をしていた。それがなんとも微笑ましくて、これならハグでもよかったかも……と一瞬思ってしまったけど、まぁそれは言わないでおこう。

『カール、ビデオチャットでも挨拶したから覚えてるよな? 俺が今、居候させてもらってる俺の父さんの兄とそのパートナーだよ』

『あっ、えっと、カール・ヴァーグナーです。よろしくお願いします』

『ははっ。緊張させてしまったな。磯山卓だ。こちらは私のパートナーの絢斗』

『カールくん、会えて嬉しいよ』

『は、はい。僕も嬉しいです。あ、いえ。そういう意味じゃなくて……』

カールが焦っているのはきっと、前にビデオチャットで話をした時に、伯父さんに少し牽制されたからだろう。それを忘れてなかったみたいだ。

『気にしないで構わないよ。悪い、あの時は大人げなかった』

『い、いえ。そんなこと……っ』

『許してくれるかな?』

『はい。そもそも気にしてません』

『なら、よかった。挨拶も無事に終わったことだし、美味しいものでも食べに行こうか』

『わぁ! 嬉しいです!!』

飛び跳ねて喜ぶカールを見て、俺も村山もホッとした。

「というわけで、みんなで食事に行こうか」

一応村山には前もって伯父さんが昼食の場所を予約してくれていることを伝えておいた。
村山の両親は最初は遠慮していたみたいだけど、直くんのことがあるから普通の店では無理だと話をしたようで納得してくれたみたいだ。

村山がそのままカールのキャリーケースを引き、カールと手を繋いで駐車場に向かう。
俺と直くんはその後ろで同じように手を繋いで歩いた。
伯父さんと絢斗さん、そして村山の両親は一緒に歩きながら、伯父さんから昼食の場所を聞いているようだった。

歩いていると、突然カールが振り返って直くんに話しかけた。

『あのさ、ナオズミって長いからナオって呼んでもいいかな?』

「えっ? 今、なんて言ったんですか?」

「ああ、ごめん。ナオズミのことナオって呼んでいいかなって聞いたんだ」

「もちろん! 嬉しいです!!」

「そうか、じゃあ僕のこともカールね」

「えっ……でも、僕……年下なのに、いいんですか?」

「友達なんだから年齢なんて気にしないよ! 僕はナオにカールって呼ばれたい」

「――っ!!! は、はい。じゃあ、カール……」

「やった! これでもう親友だね」

「しん、ゆう……僕、親友なんて初めてです……」

直くんの声が震えている。それもそうか。一花さんとは友人になったけれど、最初の出会いが違いすぎる。初めて会った時も直くん自身にまだ自分の母親がしたことの申し訳なさもあって、すぐに一花とは呼べなかっただろう。
でもカールの場合は違う。最初から友人として出会ったんだ。

カールのグイグイきてくれる性格も相まって、直くんも打ち解けやすいのかもしれない。

「ナオ、仲良くしてね」

「はい! カール!!」

直くんから呼び捨てにされたカールはとても嬉しそうに見えた。

そうこうしている間に駐車場についた。割と近い場所に村山の家の車が止まっている。

「じゃあ、後でな」

「ああ、カール。行こう」

「はーい。ナオ、ノボル。後でね」

手を振ってその場を離れ、伯父さんの車に乗り込もうとすると

『わぁー!! 何、すごいっ!!!』

とカールの驚きと喜びに満ちた声が駐車場に響いた。
一瞬何事かと思ったけれど、

――やっぱりさ、車に持っていくことにするよ。それなら車に乗ってすぐに見せられるし……

前にそんな話をしていたのをふっと思い出した。

ああ、そうか。あいつ、本当に持ってきてたんだな。俺はすっかり忘れていたよ。

「今のって、カールの声ですよね? なんて言ってたんですか?」

「ああ、村山が車にカールへの贈り物を乗せてたんだよ。それを見て驚いたみたいだな」

「車に贈り物? それはびっくりしますね」

「ああ、あれだけ驚いて喜んでくれたら村山も喜んでるはずだよ。さぁ、車に乗ろうか」

「はい」

あいつのサプライズもうまく行ったことだし、楽しくなりそうだな。

それからすぐに伯父さんの車は昼食場所に向けてゆっくりと走り出した。
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