155 / 717
本当のこと
しおりを挟む
<side直純>
――ナオズミのことナオって呼んでいいかな?
そう言われてすごく嬉しかった。
カールさんが僕をナオズミと呼んでくれるのは外国人なら当然だと思っていたところもあったけれど、ナオズミと呼ばれるとどうしても両親……特に母さんのことを思い出してしまっていた。
自分の名前を嫌だとまでは思わないけれど、母さんとの日々がパッと甦ってしまうことがあって……だからパパたちに直くんと呼ばれるようになったのは嬉しかった。本当に新しい自分になれた気がしたんだ。
けれど今日、カールさんと出会って直接ナオズミと呼ばれて、ほんの少し胸の奥が騒ついた。
これが僕の名前なんだから仕方がないという気持ちもあったけれど、やっぱり少し辛かった。だからカールさんからナオと呼んでいいかと言われて嬉しかったんだ。
僕が直純という名前だってことは変えようもないことだけど、もう少し僕が母さんとの辛い記憶を忘れるまでは直くんやナオでいられたらいいな。そんなことを思ってしまう。
しかもカールさんは、僕に昇さんたちと同じようにカールと呼ばせてくれた。
年下なのに呼び捨てなんて……と思ったけれど、僕にカールって呼ばれたい! とまで言ってくれて……すごく嬉しかった。
僕に呼び捨てできる友達ができるなんて思ってもなかった。
カールって、ドキドキしながら呼んだらすごく喜んでくれて、親友とまで言ってくれた。
僕に親友……!! もう嬉しすぎておかしくなりそうだ。
その親友とパパたちとみんなでこれからご飯を食べにいくんだって。
さっき、ふーちゃんや毅パパたちとドーナツを食べたのが、多分物心ついてから初めて食べる外での食事だったと思うけど、今度はご飯をみんなで食べるなんて……。
なんだか今日は初めてのことばかりでドキドキが止まらない。でも、隣で昇さんが手を繋いでいてくれるから安心できる。昇さんがそばにいてくれてよかったな。
駐車場に着き、空港まで来た時と同じようにパパの車の後ろに乗ろうとしたら、少し離れた場所からカールの嬉しそうな声が聞こえてきた。
どうやら村山さんがカールに贈り物を用意していたみたい。僕も昇さんから突然の贈り物をもらった時、ものすごく嬉しかったから、今のカールの気持ちがよくわかる。でも何をもらったんだろう?
昇さんに案内されて、車に乗り込むと、昇さんが隣にピッタリと寄り添って座ってくれる。
「シートベルト付けるね」
「はい」
パパの車に乗り慣れない僕のためにさっきと同じようにシートベルトをつけてくれる。本当に昇さんって優しいな。
昇さんもシートベルトをつけたところで車がゆっくりと動き始めた。
「伯父さん、お店までどれくらい?」
「銀座だから普通なら一時間くらいかな。途中で休憩したかったら声をかけてくれ」
「わかった」
ここから一時間、車に乗れるんだ。なんだか嬉しい。
「直くん、疲れてない?」
「大丈夫です」
「それならよかった」
「あの、昇さん……」
「んっ? どうかした?」
「さっきの、カールへの贈り物って……昇さんは何か知っているんですか?」
「えっ? どうして?」
ふと思ったことを尋ねてみただけだったけれど、少し焦った顔で見つめられて驚いてしまった。
「えっ……あ、いえ。仲良しだから知ってるのかなって……それだけなんですけど……ごめんなさい」
「あ、いや。直くんが謝ることじゃないよ。ちょっと急に聞かれて驚いただけ」
「驚いた?」
「ああ……うん。その……」
なんとなく言いにくそうな雰囲気は伝わってくる。僕、そんなに変なこと聞いちゃったかな?
「昇、もう隠さずにはっきり言った方がいいぞ」
「隠す?」
前からパパの声が聞こえてきて、思わず聞き返すと、昇さんははぁーっと大きなため息を吐いて僕を見た。
「ごめん、別に隠すことこでもないんだけど……もう恋人になったから、はっきり言うね」
「はい」
「あのさ、前に直くんに大きなクマのぬいぐるみプレゼントしただろう?」
「えっ? はい。昇さんがゲームセンターでって……」
急にぬいぐるみの話になって驚きつつも答えた。
「あれ、ゲーセンでとったやつじゃなくて、直くんのために買ったんだ」
「えっ? 僕のために……?」
「ああ、直くんにどうしてもプレゼントしたくて……でも、買うって言ったら貰ってもらえないと思って……家にあるって言ったら受け取ってくれるかと思って、そう言ったんだ。嘘ついてごめん。でも直くんを喜ばせたくて……ごめん、引いた?」
「引くなんて、そんなこと……っ! 僕、あのクマさんすごく嬉しかったです。ずっとぬいぐるみ欲しかったから、昇さんが僕のために選んでくれたのがすごく嬉しいです」
「直くん……よかった」
そう言って僕を抱きしめてくれる。昇さんの温もりがクマさん以上にあったかくて嬉しかった。
――ナオズミのことナオって呼んでいいかな?
そう言われてすごく嬉しかった。
カールさんが僕をナオズミと呼んでくれるのは外国人なら当然だと思っていたところもあったけれど、ナオズミと呼ばれるとどうしても両親……特に母さんのことを思い出してしまっていた。
自分の名前を嫌だとまでは思わないけれど、母さんとの日々がパッと甦ってしまうことがあって……だからパパたちに直くんと呼ばれるようになったのは嬉しかった。本当に新しい自分になれた気がしたんだ。
けれど今日、カールさんと出会って直接ナオズミと呼ばれて、ほんの少し胸の奥が騒ついた。
これが僕の名前なんだから仕方がないという気持ちもあったけれど、やっぱり少し辛かった。だからカールさんからナオと呼んでいいかと言われて嬉しかったんだ。
僕が直純という名前だってことは変えようもないことだけど、もう少し僕が母さんとの辛い記憶を忘れるまでは直くんやナオでいられたらいいな。そんなことを思ってしまう。
しかもカールさんは、僕に昇さんたちと同じようにカールと呼ばせてくれた。
年下なのに呼び捨てなんて……と思ったけれど、僕にカールって呼ばれたい! とまで言ってくれて……すごく嬉しかった。
僕に呼び捨てできる友達ができるなんて思ってもなかった。
カールって、ドキドキしながら呼んだらすごく喜んでくれて、親友とまで言ってくれた。
僕に親友……!! もう嬉しすぎておかしくなりそうだ。
その親友とパパたちとみんなでこれからご飯を食べにいくんだって。
さっき、ふーちゃんや毅パパたちとドーナツを食べたのが、多分物心ついてから初めて食べる外での食事だったと思うけど、今度はご飯をみんなで食べるなんて……。
なんだか今日は初めてのことばかりでドキドキが止まらない。でも、隣で昇さんが手を繋いでいてくれるから安心できる。昇さんがそばにいてくれてよかったな。
駐車場に着き、空港まで来た時と同じようにパパの車の後ろに乗ろうとしたら、少し離れた場所からカールの嬉しそうな声が聞こえてきた。
どうやら村山さんがカールに贈り物を用意していたみたい。僕も昇さんから突然の贈り物をもらった時、ものすごく嬉しかったから、今のカールの気持ちがよくわかる。でも何をもらったんだろう?
昇さんに案内されて、車に乗り込むと、昇さんが隣にピッタリと寄り添って座ってくれる。
「シートベルト付けるね」
「はい」
パパの車に乗り慣れない僕のためにさっきと同じようにシートベルトをつけてくれる。本当に昇さんって優しいな。
昇さんもシートベルトをつけたところで車がゆっくりと動き始めた。
「伯父さん、お店までどれくらい?」
「銀座だから普通なら一時間くらいかな。途中で休憩したかったら声をかけてくれ」
「わかった」
ここから一時間、車に乗れるんだ。なんだか嬉しい。
「直くん、疲れてない?」
「大丈夫です」
「それならよかった」
「あの、昇さん……」
「んっ? どうかした?」
「さっきの、カールへの贈り物って……昇さんは何か知っているんですか?」
「えっ? どうして?」
ふと思ったことを尋ねてみただけだったけれど、少し焦った顔で見つめられて驚いてしまった。
「えっ……あ、いえ。仲良しだから知ってるのかなって……それだけなんですけど……ごめんなさい」
「あ、いや。直くんが謝ることじゃないよ。ちょっと急に聞かれて驚いただけ」
「驚いた?」
「ああ……うん。その……」
なんとなく言いにくそうな雰囲気は伝わってくる。僕、そんなに変なこと聞いちゃったかな?
「昇、もう隠さずにはっきり言った方がいいぞ」
「隠す?」
前からパパの声が聞こえてきて、思わず聞き返すと、昇さんははぁーっと大きなため息を吐いて僕を見た。
「ごめん、別に隠すことこでもないんだけど……もう恋人になったから、はっきり言うね」
「はい」
「あのさ、前に直くんに大きなクマのぬいぐるみプレゼントしただろう?」
「えっ? はい。昇さんがゲームセンターでって……」
急にぬいぐるみの話になって驚きつつも答えた。
「あれ、ゲーセンでとったやつじゃなくて、直くんのために買ったんだ」
「えっ? 僕のために……?」
「ああ、直くんにどうしてもプレゼントしたくて……でも、買うって言ったら貰ってもらえないと思って……家にあるって言ったら受け取ってくれるかと思って、そう言ったんだ。嘘ついてごめん。でも直くんを喜ばせたくて……ごめん、引いた?」
「引くなんて、そんなこと……っ! 僕、あのクマさんすごく嬉しかったです。ずっとぬいぐるみ欲しかったから、昇さんが僕のために選んでくれたのがすごく嬉しいです」
「直くん……よかった」
そう言って僕を抱きしめてくれる。昇さんの温もりがクマさん以上にあったかくて嬉しかった。
1,643
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」
まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。
【本日付けで神を辞めることにした】
フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。
国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。
人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
アルファポリスに先行投稿しています。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
お姉様のお誕生日を祝うのが、なぜ我儘なの?
月白ヤトヒコ
ファンタジー
健康で、元気なお姉様が羨ましかったの。
物心付いたときから、いつも体調が悪かった。いつもどこかが苦しかった。
お母様が側にいてくれて、ずっと看病してくれた。お父様は、わたしのお医者様の費用やお薬代を稼ぐのが大変なんだってお母様が言ってた。
わたし、知らなかったの。
自分が苦しかったから。お姉様のことを気にする余裕なんてなかったの。
今年こそは、お姉様のお誕生日をお祝いしたかった……んだけど、なぁ。
お姉様のお誕生日を祝うのが、なぜ我儘なの?
※『わたくしの誕生日を家族で祝いたい、ですか? そんな我儘仰らないでくださいな。』の、妹視点。多分、『わたくしの誕生日を~』を先に読んでないとわかり難いかもです。
設定はふわっと。
奪う人たちは放っておいて私はお菓子を焼きます
タマ マコト
ファンタジー
伯爵家の次女クラリス・フォン・ブランディエは、姉ヴィオレッタと常に比較され、「控えめでいなさい」と言われ続けて育った。やがて姉の縁談を機に、母ベアトリスの価値観の中では自分が永遠に“引き立て役”でしかないと悟ったクラリスは、父が遺した領都の家を頼りに自ら家を出る。
領都の端でひとり焼き菓子を焼き始めた彼女は、午後の光が差す小さな店『午後の窓』を開く。そこへ、紅茶の香りに異様に敏感な謎の青年が現れる。名も素性も明かさぬまま、ただ菓子の味を静かに言い当てる彼との出会いが、クラリスの新しい人生をゆっくりと動かし始める。
奪い合う世界から離れ、比較されない場所で生きると決めた少女の、静かな再出発の物語。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる