ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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待ち望んだ声

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「良かった。尚孝さん、ずっと待ってました」

尚孝さんの呼びかけに志摩さんは満面の笑みで現れた。

「あの、さっきのプロポーズ……嬉しかったです。唯人さん、大好きです」

尚孝さんが背伸びをすると同じタイミングで志摩さんが顔を近づける。その姿があまりにも綺麗でうっとりしてしまう。
まるで王子さまとお姫さまのようなキスに感動が止まらない。

誰も言葉を出すこともできずにうっとりと見入っていると突然フランくんの鳴き声が聞こえて、尚孝さんは驚いて志摩さんから離れた。ああ、もうちょっと見ていたかった……そう思ってしまうくらいにとても素敵なキスだった。

たくさんの人たちの大人なキスや可愛いキス、綺麗なキス、素敵なキスを見せてもらったけれど、やっぱり僕にとっての最高のキスはパパとあやちゃんのキスだな。

罰ゲームのはずだったけど、みんなキスしたのだし、パパとあやちゃんのキスも見たいな……。でもそんなこと言っちゃダメかな? と悩んでいると、

「最後は、絢斗くんね」

と当然のように未知子さんが言ってくれた。

あやちゃんは驚いていたけれど、敬介さんと佳史さんから

「そうですよ、教授もしないと! 磯山先生がお待ちですよ!」

「熟年夫夫のキス、見せてください!」

と立て続けに言われていて、それに便乗して僕も

「パパとあやちゃんのキス、見たいです!」

とお願いしてみた。あやちゃんは恥ずかしそうに笑いながらもいつものように卓さんとパパの名前を呼びかけてきた。

わっ、パパ。すっごく嬉しそう!

あやちゃんに笑顔で駆け寄ってきたパパが本当に幸せそうで僕まで嬉しくなってしまう。

「卓さん、愛してます」

「絢斗……」

パパとあやちゃんがゆっくりと近づいて優しく唇が重なった。

ああ、やっぱりパパとあやちゃんのキス、優しくて素敵だな。


<side卓>

突然始まったキスイベント。
きっと奥手な教え子たちのために、絢斗が持ちかけた企画なのだということは薄々わかっていた。
そうでなければあの有原くんが人前で榎木くんを呼び出し、みんなの前でキスなんてするわけがない。
恥じらいながらも幸せそうな笑顔を見せる有原くんとそれを笑顔で見守る榎木くんの姿に私も嬉しくなった。

そして、櫻葉の社長である史紀さんと安城くんのキス。
名前を呼ばれて羽が生えたように嬉しそうに飛んでいった安城くんの姿には思わず笑みがこぼれた。

一花くんは今日の主役として想定内だったが、直くんまでこのキスイベントに参加するとは夢にも思ってなかった。
もちろん昇も同じ気持ちだったようだ。前の二組のキスを見ながら喜んではいたものの、あくまでも観客として盛り上がっていただけだったのに、直くんから名前を呼ばれてすぐに反応できずにいた。

征哉くんに声をかけられて慌てて飛んでいったが、私としては先ほどまでの温かく見守る姿勢からドキドキハラハラに変わってしまった。流石にキスイベントでもここで唇にキスはしないだろう。なんと言っても直くんにとってはファーストキスなのだ。直くんだってファーストキスへの夢もあるだろう。

一花くんと征哉くんのキスを見る余裕もないまま、私は昇と直くんに集中してしまっていたが、直くんは昇の胸に手を当てて背伸びをすると、スッと横を向いた昇の頬に唇を重ねた。

ああーーっ。安堵のため息が漏れる。

よかった……さすが、昇だ。

私は直くんの嬉しそうな顔を見てホッと胸を撫で下ろした。

そして、周平くん、甲斐くん、志摩くんと呼ばれていったが、絢斗がこの企画を持ちかけたのなら自分は遠慮してしまうかもしれない。そんな考えが頭をよぎった。私だけ呼ばれないのではないかという不安。そして周りも私に声をかけてはいけないという雰囲気が漂ってきた時、

「卓さんっ」

と絢斗が私の名前を呼んでくれた。この数十年何度も呼んでくれた愛しい声で呼びかけられて私は天にも昇る気持ちで駆け寄った。もう呼ばれないのではないかという不安を冗談ぽく告げると、絢斗は笑って私に愛の言葉を囁いてくれた。

そして、絢斗からのキス。

ああ……みんなに祝福されながらの絢斗とのキスは最高だな。

最高のキスイベントが終わり、絢斗から離れて席に戻ると、

「磯山先生。さすが熟年夫夫の貫禄のキスでしたね。あまりにも美しくて見入ってしまいましたよ」

と周平くんに声をかけられた。

「ははっ。ありがとう。君たちもなかなか素晴らしかったぞ。それにみんなも、いいキスイベントだったな」

「はい。緑川教授のおかげですね」

やっぱりみんなも絢斗が首謀者だと気づいたか。まぁみんな絢斗の教え子ばかりだからな。


「失礼します。そろそろ次の撮影に入りますので、新郎新夫さま、お庭にお越しください」

その呼びかけに征哉くんと一花くんが部屋を出ていく。
そうか、あの色打掛でも撮影するのか。大変だが、それもまた幸せなのだろうな。
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