ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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直くんの気になる子

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<side昇>

水族館での直くんはどれも可愛かった。
どの水槽でも興味津々な様子で立ち止まり、キラキラとした表情を見せてくれた。
賢い直くんだから海に住む生き物にどんなものがいるか知識としては知っていただろう。でも実際に見ると想像を超えていたようで全てに歓声をあげていた。

イルカとの触れ合いはその集大成のようでどこを見ても可愛かった。
イルカにタッチされて嬉しそうな顔も、ほっぺたにキスされて喜んでいる姿も何もかもが愛おしい。
もちろんイルカとのキスはほんの少し嫉妬してしまいそうだったけれど、あの笑顔を見たらそんな気持ちもなくなった。

初めてのハンバーガーは俺の手から食べてくれた。
一生懸命齧り付く表情を俺は間近で見ることができた。唇についたソースも指だったけど取らせてもらえた。
人前だったから恥ずかしがるかと思ったけど、俺がとって当然だと思ったように笑ってくれて嬉しかった。

その上、ポテトを食べさせてもらえたし。もう最高に幸せな食事だった。

そして、最後にお土産物屋さん。
今日の記念にプレゼントしたくて直くんに声をかけると、少し遠慮しながらも選んでくれた。

直くんが選んだのは可愛いイルカのストラップ。
千円もしない安いものだけど、大切にするって言ってくれた。

俺はそれを会計に持って行く時にこっそり同じものを持って行った。
今日の記念にお揃いのものを持ちたかったんだ。

「はい。直くん」

「わぁ、昇さん。ありがとうございます!」

「可愛かったから、俺もお揃いで買ったよ」

「お揃いっ! 嬉しいです!!」

以前もお揃いだって喜んでたな。ああ、そうだ。大おじさんがお揃いだって言ったときだ。
お揃いっていう言葉にこんなにも喜ぶのは何か理由があるんだろうな。

「伯父さん。もう帰るの?」

「いや、今度はあっちのぬいぐるみ屋さんに行くようだよ。絢斗と直くんが見に行きたいそうだ」

ぬいぐるみか。
あのクマの友だちが見つかればいいなんて思いながら、嬉しそうに店に入っていく絢斗さんと伯父さんの後ろから、俺は直くんと手を繋いで入った。

「わぁー。可愛い!」

あのクマは俺が選びに行ったからな、今度は自分で選ぶのも楽しいだろう。

「あのクマの友だちが欲しいから、好きな子を選んで。俺がプレゼントするよ」

「これも買ってもらったのに、いいんですか?」

「もちろん!」

直くんの表情がパーっと明るくなっていく。
ぬいぐるみを自分で選ぶ。それが楽しいんだろうな。

海の生き物のぬいぐるみはなかなか見ないよな。さすが水族館だ。イルカや亀といったメジャーなものから、チョウチンアンコウやタツノオトシゴなんてものもある。

直くんはどれを気にいるかな?

絢斗さんと店中を歩き回り探していた直くんがあるところで止まったのを見て俺は駆けつけた。

「気になる子がいた?」

「あの子、可愛いです」

直くんが見つけたのは、グレーと白の毛並みが可愛い50cmを少し超えるくらいの皇帝ペンギン。
まだ幼そうな顔立ちだから子どもということなんだろう。

「いいね、可愛いよ」

俺は棚の上にあったその子をとって直くんに渡すと、直くんは嬉しそうにその子を抱きしめた。

「可愛い……もふもふしてる」

「じゃあ、この子にしようか」

「あの、このまま抱っこして帰りたいです……」

「いいよ。店員さんに頼むから安心して」

可愛いこの子が袋に入れられるのは嫌なんだろうな。あの時も、大変だったけど抱っこして帰ってよかった。

「ねぇ、直くん。今度一花ちゃんのところに集まりに行くでしょう? みんなに水族館のお土産を買って渡そうよ。きっと喜ぶよ」

「お土産を、渡す……はい! やってみたいです!!」

今までどこにも出かけたことないんだもんな。お土産を誰かに渡すなんてこともあるはずないんだ。

「じゃあ、俺がその子を抱っこしてるから直くんは絢斗さんとお土産を選んでおいで」

「はーい」

嬉しそうな直くんを見送り、待っている間伯父さんの近くに行くと

「可愛いぬいぐるみを選んだな。お前買ってやれるのか? 足りないなら私も出すぞ」

と小声で言ってくれた。

「ありがとう。でも大丈夫。直くんが欲しいと思ったものを買ってあげようと思って結構持ってきてたから」

「それならいいが、無理はするなよ」

「本当に困ったときは伯父さんに頼むよ。出世払いで返すから」

「ははっ。それなら期待できるな」

伯父さんは笑っていたけど、伯父さんに期待してもらえるのはなんだか嬉しかった。

直くんは絢斗さんと相談し合い、いくつかキーホルダーを選んでいた。
喜んでもらえるかなと思いながら選ぶのはかなり楽しかったみたいだ。

直くんにとっていい経験になったみたいだな。

会計を済ませて、直くんにペンギンを渡すと嬉しそうに抱っこする。その姿があまりにも可愛すぎて、店内だけでなく、店の外に出てからも注目の的になっていた。それらの視線から守るようにみんなで水族館を出ると、外は少し曇り空になっていた。海沿いだということもあって、少し風が冷たい。

俺は着ていたジャケットをさっと脱いだ。

「直くん、風邪ひくといけないからこれ羽織っておいて」

「えっ、でも昇さんが寒くなりますよ」

「大丈夫。俺は強いから風邪なんか引かないよ」

「ありがとうございます。ふふっ、昇さんの匂いがしますね。嬉しいです」

「――っ!!」

直くんの無邪気な言葉に俺は昇天しそうになるのを必死に抑えるしかできなかった。
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