ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

文字の大きさ
242 / 678

手料理の味

しおりを挟む
「よし、そろそろ焼けたな。直くん、ソースを塗っていこうか」

「はい!」

すっかり楽しくなってきたようで、嬉しそうにソースポットに手を伸ばす。
蓋を開けてソースがたっぷりとついた刷毛をとり、ホットプレートの上でジュージューと美味しそうな音を立てるお好み焼きに塗り始めた。

私は直くんが火傷しないようにしっかりとみながら、ソースを塗っていくのを見守った。

お好み焼きから垂れたソースがホットプレートの鉄板に落ちてジュッと香ばしい匂いを立てる。

「上手に塗れたね。よし、あとは鰹節と青のりをかけたら完成だ」

「はーい!」

卓くんからのメモにはマヨネーズはあまり好みではないと書かれていたから今日はマヨネーズは出さずにおいた。この笑顔を見ると、それでよかったのだろう。

ヘラで小さなお好み焼きを食べやすい大きさに切って直くんの皿に入れてやると

「わぁー、美味しそう!」

と直くんの嬉しそうな声が聞こえた。

「熱いからフーフーして食べるんだよ」

「はーい」

可愛い返事に癒されつつも、火傷をしないように見守った。
卓くんならきっと食べやすい温度になるまで冷ましてやるだろうが、初めて自分で作ったものを出来立てで食べるのも直くんの成長に繋がるだろう。

「ふーっ、ふーっ、あちっ、あちちっ、んーっ!!」

小さなヘラでお好み焼きを口に運び、はふはふさせて食べる姿は本当に可愛い。

「おいひぃっ!!」

唇の端にソースをつけながら感想を伝えてくれる。
ああ、最高の時間だ。

「お好み焼きって、こんなに美味しいものなんですね」

「自分で作るからさらに美味しく感じるんだよ。ほら、こっちのお肉のも美味しいから食べてごらん」

少し昇や卓くんに悪いかなと思いつつも、おじいちゃん特権だと開き直って、私の皿に乗せていた豚肉のお好み焼きを食べさせてやると

「んーっ! おいひぃっ!!」

とこちらも気に入ってくれたようだ。

「今度は焼きそばを作ろうか」

「焼きそば? はい! 食べたいです!」

直くんをその場に残し、材料をキッチンに取りに行った隙に直くんの可愛いエプロン&三角巾姿と、さっきのお好み焼きを作っている映像を絢斗と卓くん、そして昇に送っておいた。

きっと大喜びすることだろう。

材料を持って急いで直くんの元に戻った。直くんには野菜をホットプレートに入れてもらうのと、最後にソースを入れてもらう手伝いをしてもらい、あっという間に美味しそうな焼きそばが出来上がった。

それを少し皿に取ってあげると、直くんはそれも美味しそうに食べきった。

それでもホットプレートの上にはまだ焼きそばが残っている。

「あの、僕……もう、お腹いっぱいで……」

「そうか、よく食べたね。偉かったよ。残りは昇が来たら食べるだろう。皿に乗せておこう」

「はい!」

残った生地で絢斗と卓くんと昇用に小さなお好み焼きを三枚作っておいた。
直くんが具材を選んで焼いたと知ったらきっと大喜びするだろう。

「片付けも手伝ってくれるかな?」

「はい! 僕、家でもパパのお手伝いしてるんですよ」

「そうか、なら頼むよ」

手伝いを頼むと本当に嬉しそうにする。本当にいい子だ。

丸洗いできるホットプレートをさっと洗って立てかけておけばそれですぐに乾く。
直くんにはボウルやお玉を拭いてもらっている間に、食器などは食洗機にかければすぐに終わった。

「直くんのおかげで早く片付けが終わったよ。ありがとう」

満足げな顔をする直くんを連れてソファーに戻る。

直くんからふわっとお好み焼きの匂いがする。洋服に匂いがついてしまったか。
少し汗もかいているみたいだし、シャワーでも浴びさせよう。
やっぱり着替えを用意していて正解だったな。

「直くん、少し汗をかいたからシャワーでも浴びようか」

「えっ? いいんですか?」

「ああ。バスルームに着替えを用意しているから連れていこう。おいで」

すっかり私に慣れてくれた直くんの手を握り、私はバスルームに向かった。


<side昇>

直くんに見送られ、高校に向かう。
この週末で俺と直くんの関係はかなり変わったように思う。

直くんのドレス姿、最高だったな。
でもそれ以上に最高だったのはあの露天風呂での姿。

俺の手で初めて蜜を溢し、俺の欲望の蜜まで出してくれた。

あの時のことを少しでも思い出すだけで昂ってしまう。

学校にいる間も今日は直くんのことばかり考えていそうな気がする。

しかも今日は大おじさんの家に行くんだ。
直くんは大叔父さんと楽しく過ごせるだろうか……。

大おじさんのことだから直くんを可愛がってくれると思うけど、なんと言っても初めての場所だしそれも気になる。

やっぱり今日は直くんのことしか考えられない一日になりそうだ。

学校に到着し、靴を履き替えていると

「よっ、磯山。おはよう」

と聞き慣れた声が聞こえた。

「ああ、村山、おは――あっ、そっか。カールもおはよう」

振り向きざまにカールの姿が見えて、そういえば日本に来てたんだっけと思い出した。
カールの出迎えに行ってから、直くんが熱を出したり、トラウマが発覚したり、そして結婚式と泊まりのアレコレがあったからすっかり忘れていた。

「お前、カールのこと忘れてただろう?」

「ごめん。ちょっと週末いろいろあってさ」

「いいよ。お前の表情見たら安心したし」

「えっ?」

「あの時、ひどい顔色してただろう? 何があったかは聞かないけど、今の表情なら安心したよ」

「村山……」

直くんのトラウマを聞き出したあの日、相当心配をかけていたみたいだな。
それでもいつでも力になってくれると言ってくれていたことは俺には心強かったよ。
しおりを挟む
感想 1,244

あなたにおすすめの小説

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

拗らせ問題児は癒しの君を独占したい

結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。 一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。 補習課題のペアとして出会った二人。 セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。 身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。 期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。 これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

処理中です...