253 / 717
倉橋くんからの贈り物
しおりを挟む
裁判所で中谷くんと別れ、私は倉橋くんとの待ち合わせ場所である『テリフィックオフィス』に向かった。
中谷くんは裁判所から直帰させるつもりで別々の車で来ていてよかった。
来客用の駐車場に車を止め、オフィスに向かうと
「いらっしゃいませ」
と倉橋くんの専属秘書である藤乃くんの出迎えを受けた。
「藤乃くん、元気そうだね」
「はい。おかげさまで。こちらにどうぞ」
「ああ、ありがとう」
倉橋くんから紹介された頃は、まだ彼らも付き合い始めで秘書としても初々しかったが、もうすっかり倉橋くんの秘書が板についた様子だ。倉橋くんに公私共にいろいろと教えてもらったのだろうな。
倉橋くんが私への出迎えに彼を一人で来させるくらいには、私は信用されているらしいことにホッとしながら、彼の後ろをついていった。
広々とした会議室のような部屋に案内されて入ると、パソコンをパタンと閉め、倉橋くんがこちらにやってきた。
「磯山先生。わざわざ足を運んでいただいてすみません」
「いや、三日は待つ覚悟だったから今日受け取れるだけで嬉しいよ」
「こちらが試作品のホットプレートです」
想像より大きな段ボールに入っているが持てないサイズではない。
「付属のプレートも今までのものより増えてますから、いろいろ試して楽しんでください」
「ありがとう。ありがたく使わせてもらうよ」
「先生、今日早速夕食に使われますか?」
「ああ、そのつもりだよ」
「それならよかったです。実は先ほど食材をいくつかご自宅にお送りしたんですよ」
「えっ? そんな……申し訳ないな」
「いえ、全て貰い物なので気にしないでください。航と二人じゃ食べきれないんですよ。緑川教授と可愛い息子さんたちと召し上がってください」
きっと私が試作品をタダでは受け取らないと言ったから気を遣わせてしまったんだろう。
ここで固辞するのは流石に申し訳ないか。すでに送ってくれていることだし、ここは素直にいただくとしよう。
「ありがとう。家族でいただくとするよ」
「また何か必要なものがあれば、直接連絡くださって構いませんから」
「ありがとう。頼りにしているよ」
私は倉橋くんと藤乃くんにお礼を言ってオフィスを出た。
事務所前についたところでちょうど配送会社の車とあい、冷蔵の荷物を受け取って自宅に戻った。
いつもなら玄関チャイムを鳴らした後で自分で鍵を開けて入るが、今日は荷物で手が塞がっている。
肩でチャイムを押すと、鍵を開ける音が聞こえ扉が開いた。
インターフォンで私の姿を確認したんだろう。目の前に昇がいた。
「伯父さん、今日は大荷物だね。一つ持つよ」
「ああ、ありがとう。ちょうど事務所の前で荷物を受け取ったんだ」
中に入ると、絢斗と直くんもで迎えにきてくれている。
「卓さん、おかえり」
「パパ、おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
荷物を持ったままでも絢斗と唇にキスだけは忘れない。
チュッと唇を重ねて一緒にリビングに向かった。
「この大きな荷物、どうしたの?」
「直くんが、賢将さんとホットプレートで料理して楽しそうだったから、うちでもしようと思って買ってきたんだ」
「えっ?」
「わぁー、さすが卓さん! 嬉しい!」
驚く直くんの隣で、嬉しそうな声をあげる絢斗。
きっと絢斗は私が買って帰ると想像していたんだろう。私のことはなんでも理解してくれているからな。
「うちでもホットプレートでみんなで楽しもう」
「パパ……」
直くんはよほど嬉しかったのか、涙を潤ませている。
本当に今日持ち帰ってこられてよかった。
「伯父さん、こっちの荷物は何? 冷たいけど」
「倉橋くんが食材をくれたんだ。昇、開けていいよ」
昇は嬉しそうにカッターナイフを持ってきて箱を開け、中を見て驚きの声を上げた。
「わぁー、すげー!! こんなでかいステーキ肉が入ってる!」
昇が箱から出して見せたのは、昇の手のひらから随分とはみ出た、見ただけで高級だとわかるステーキ肉の数々。この数なら肉だけでもかなりの金額だろう。
「伯父さん! マンゴーも入ってるよ」
「えっ? マンゴー?」
この時期に? と思ったが、そうだ。
倉橋くんの会社の秘書である砂川悠真くんの実家は温室栽培でマンゴーを育てているから年間を通して作ることができると聞いたな。きっとそこのマンゴーだろう。その温室システムも倉橋くんが開発したというのだから、本当に素晴らしい才能だ。
「せっかくだから今日はこのステーキと食後にマンゴーをいただこうか」
「やったー!!」
大喜びする昇の隣で、直くんは興味津々な様子でマンゴーを見つめていた。
「直くん、どうした? マンゴー、気に入ったかな?」
「あ、いえ。この箱の天使の絵が可愛いなって。このマンゴー、天使のマンゴーっていうんですね」
確か、成瀬くんの恋人で、砂川くんの弟である真琴くんがこの天使のモデルだと聞いたことがある。
彼なら直くんとも仲良くできるだろうか。こうして少しずつ直くんの交友関係も広まると楽しく過ごしていけるだろうな。
中谷くんは裁判所から直帰させるつもりで別々の車で来ていてよかった。
来客用の駐車場に車を止め、オフィスに向かうと
「いらっしゃいませ」
と倉橋くんの専属秘書である藤乃くんの出迎えを受けた。
「藤乃くん、元気そうだね」
「はい。おかげさまで。こちらにどうぞ」
「ああ、ありがとう」
倉橋くんから紹介された頃は、まだ彼らも付き合い始めで秘書としても初々しかったが、もうすっかり倉橋くんの秘書が板についた様子だ。倉橋くんに公私共にいろいろと教えてもらったのだろうな。
倉橋くんが私への出迎えに彼を一人で来させるくらいには、私は信用されているらしいことにホッとしながら、彼の後ろをついていった。
広々とした会議室のような部屋に案内されて入ると、パソコンをパタンと閉め、倉橋くんがこちらにやってきた。
「磯山先生。わざわざ足を運んでいただいてすみません」
「いや、三日は待つ覚悟だったから今日受け取れるだけで嬉しいよ」
「こちらが試作品のホットプレートです」
想像より大きな段ボールに入っているが持てないサイズではない。
「付属のプレートも今までのものより増えてますから、いろいろ試して楽しんでください」
「ありがとう。ありがたく使わせてもらうよ」
「先生、今日早速夕食に使われますか?」
「ああ、そのつもりだよ」
「それならよかったです。実は先ほど食材をいくつかご自宅にお送りしたんですよ」
「えっ? そんな……申し訳ないな」
「いえ、全て貰い物なので気にしないでください。航と二人じゃ食べきれないんですよ。緑川教授と可愛い息子さんたちと召し上がってください」
きっと私が試作品をタダでは受け取らないと言ったから気を遣わせてしまったんだろう。
ここで固辞するのは流石に申し訳ないか。すでに送ってくれていることだし、ここは素直にいただくとしよう。
「ありがとう。家族でいただくとするよ」
「また何か必要なものがあれば、直接連絡くださって構いませんから」
「ありがとう。頼りにしているよ」
私は倉橋くんと藤乃くんにお礼を言ってオフィスを出た。
事務所前についたところでちょうど配送会社の車とあい、冷蔵の荷物を受け取って自宅に戻った。
いつもなら玄関チャイムを鳴らした後で自分で鍵を開けて入るが、今日は荷物で手が塞がっている。
肩でチャイムを押すと、鍵を開ける音が聞こえ扉が開いた。
インターフォンで私の姿を確認したんだろう。目の前に昇がいた。
「伯父さん、今日は大荷物だね。一つ持つよ」
「ああ、ありがとう。ちょうど事務所の前で荷物を受け取ったんだ」
中に入ると、絢斗と直くんもで迎えにきてくれている。
「卓さん、おかえり」
「パパ、おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
荷物を持ったままでも絢斗と唇にキスだけは忘れない。
チュッと唇を重ねて一緒にリビングに向かった。
「この大きな荷物、どうしたの?」
「直くんが、賢将さんとホットプレートで料理して楽しそうだったから、うちでもしようと思って買ってきたんだ」
「えっ?」
「わぁー、さすが卓さん! 嬉しい!」
驚く直くんの隣で、嬉しそうな声をあげる絢斗。
きっと絢斗は私が買って帰ると想像していたんだろう。私のことはなんでも理解してくれているからな。
「うちでもホットプレートでみんなで楽しもう」
「パパ……」
直くんはよほど嬉しかったのか、涙を潤ませている。
本当に今日持ち帰ってこられてよかった。
「伯父さん、こっちの荷物は何? 冷たいけど」
「倉橋くんが食材をくれたんだ。昇、開けていいよ」
昇は嬉しそうにカッターナイフを持ってきて箱を開け、中を見て驚きの声を上げた。
「わぁー、すげー!! こんなでかいステーキ肉が入ってる!」
昇が箱から出して見せたのは、昇の手のひらから随分とはみ出た、見ただけで高級だとわかるステーキ肉の数々。この数なら肉だけでもかなりの金額だろう。
「伯父さん! マンゴーも入ってるよ」
「えっ? マンゴー?」
この時期に? と思ったが、そうだ。
倉橋くんの会社の秘書である砂川悠真くんの実家は温室栽培でマンゴーを育てているから年間を通して作ることができると聞いたな。きっとそこのマンゴーだろう。その温室システムも倉橋くんが開発したというのだから、本当に素晴らしい才能だ。
「せっかくだから今日はこのステーキと食後にマンゴーをいただこうか」
「やったー!!」
大喜びする昇の隣で、直くんは興味津々な様子でマンゴーを見つめていた。
「直くん、どうした? マンゴー、気に入ったかな?」
「あ、いえ。この箱の天使の絵が可愛いなって。このマンゴー、天使のマンゴーっていうんですね」
確か、成瀬くんの恋人で、砂川くんの弟である真琴くんがこの天使のモデルだと聞いたことがある。
彼なら直くんとも仲良くできるだろうか。こうして少しずつ直くんの交友関係も広まると楽しく過ごしていけるだろうな。
1,445
あなたにおすすめの小説
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ボンクラ王子の側近を任されました
里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」
王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。
人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。
そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。
義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。
王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
「最高の縁談なのでしょう?なら、かわってあげたら喜んでくれますよね!」
みっちぇる。
恋愛
侯爵令嬢のリコリスは20歳。立派な嫁きおくれである。
というのも、義母がなかなかデビューさせてくれないのだ。
なにか意図を感じつつも、周りは義母の味方ばかり。
そん中、急にデビュタントの許可と婚約を告げられる。
何か裏がある――
相手の家がどういうものかを知り、何とかしようとするリコリス。
でも、非力なリコリスには何も手段がない。
しかし、そんな彼女にも救いの手が……?
αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…
美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?
あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる