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息子からの動画
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<side毅>
この時期からのパリは寒い。
曇りや雨の日も多く、湿度も高いからかなり冷える。
それでも私たちの部屋はどこも快適な温度を保ち続けていて、過ごしやすい。
昨夜はシャンゼリゼ通りにあるレストランで夕食を楽しんだ。
その間、もちろんお互いの話をしつつも話題は日本で暮らす息子のことばかり。
いや、正確にいえば息子と一緒にいる可愛い甥っ子の話だ。
兄の正式な息子となった直くんの写真が毎日のように絢斗さんから二葉の元に送られてくる。
時折動画もあって、仕事からの帰宅後にそれを見るのが私の楽しみになっているところもある。
兄家族で揃って結婚式に参列した時の写真と動画は特に最高だった。
可愛い甥っ子と絢斗さんが美しく着飾った姿だけでなく、その他の参列者との集合写真は圧巻で、自分もその場にいたかったと二葉は残念そうに何度も呟いていた。
水族館での餌やりの動画も最高だったし、これを上回るものは当分ないかと思っていたが、それを大きく裏切って素晴らしい動画が届いた。
直くんが絢斗さんの父である賢将さんの家で、可愛いエプロン&三角巾姿でお好み焼きを作る動画だ。
綺麗な絢斗さんを育てた賢将さんだけあって、直くんの扱い方が上手だ。
うちの父親があのようにできるだろうかと想像するが、無理だろうなという結論しか出てこない。
それでも少し前に父と電話で話した時は、可愛い孫に早く会いたいから帰国を早めていると言っていた。
それを聞いて少し驚いたが、賢将さんほど大っぴらに愛情表現をすることはないだろうと思っている。
私も兄もかなり厳しく育てられたし、昇のことも孫ということで可愛がってはいたが甘やかすという言葉とは無縁の人だ。
だから直くんに対しても変わらないと思っている。
もう少し柔軟な対応をしてくれたらいいんだけどな……。
直くんが父を見て怯えないか心配だ。
そう思っていたのだが……。
たまたまトイレに起きて、時間確認のためにスマホを確認すると、休日の朝っぱらから、珍しく昇からメッセージが送られてきていた。
しかも動画付き。
そうなったらもうあの可愛い直くんの動画しかありえない。
だが、あの昇が私たちからの要請もなく直くんの動画を送ってくれるとは不思議だ。
あの結婚式や水族館での動画もこちらから前もって散々要請していたから送ってくれただけで、普段は絢斗さんからばかりなのだから。
その昇が送ってくれるものがどんな動画だろうなと少し緊張しながら、再生してみた。
そこにはエプロンと三角巾を頭に巻いた直くんが美味しそうにご飯を食べている姿があった。
また賢将さんの家に行ったのか?
それとも兄さん家の休日の昼食の様子か?
いや、それにしてはこの卓袱台に見覚えが……
食い入るように画面を見ていると、
――おじいちゃま。僕がおじいちゃまのを作ります。何が食べたいですか?
と直くんの可愛い声が聞こえてくる。
おじい、ちゃま?
誰のことだ?
頭の中で疑問符が浮かんだ瞬間、父の顔が画面に映ったかと思ったら、
――おお、そうか。ありがとう。じゃあ、このうなぎを入れてもらおうかな。
目尻を下げ見たこともないほど優しい表情を浮かべながら、この上なく優しい声を出しているのが見えた。
「はっ? なっ、なんだ、これ? ほ、本当に、と、父さん、なのか?」
自分の知らない父の顔に思わず大きな声を出してしまった。
「んっ……た、けしさん? どうかした?」
「えっ? あ、ごめん。起こしてしまったか?」
「それは大丈夫だけど、本当にどうかしたの? 信じられないものを見たような顔してる。何かあった?」
「それが……昇から動画が送られてきてたんだけど、これ合成とかじゃないよな?」
私はすぐに再生していた動画を最初まで戻し、二葉の元に駆け寄ってその動画を見せた。
――おじいちゃま。美味しい?
――ああ、直くんが作ってくれたから美味しいな。
手巻き寿司を作ってもらい、流石に食べさせてもらうことはなかったが、それを嬉しそうに口に運び、笑顔で美味しいと感想を言う。
そのどれもが普段の父からは想像できない。
隣で二葉もきっと驚愕の表情を見せているかと思いきや、
「お義父さんったら、楽しそう! もう直くんが可愛くてたまらないって感じね」
画面を見ながら笑っている。
「二葉、驚かないのか?」
「驚いたわ。でも、それ以上に嬉しかったの。お義父さん……表面上はなんでもないっていう表情していたけど、お義母さんが亡くなってから、こんなに幸せそうな表情見たことなかったもの。だからお義父さんに生きがいができて嬉しいなって」
「二葉……」
父の生きがいか……確かに二葉の言う通りだ。
決してまだまだ長いとは言えない父の人生の最後に来て、可愛い孫ができたことは父にとってこの上ない幸せなのだろう。
「なぁ、二葉。クリスマスに一度日本に帰ろうか。数日しかいられないが、みんなと過ごす時間を作りたい」
「わぁー! それいい!! じゃあ、直くんにクリスマスプレゼントをいっぱい買っていきましょう! ああ、選ぶのが楽しくなるわ!!」
「じゃあ、今日早速下見に行こうか。いいものがあれば買えばいい」
「――っ、嬉しい! 毅さん、早く準備しましょう!」
「ははっ。流石にまだ早いよ。それに一つ忘れてないか?」
「えっ? あっ!」
飛び起きた二葉を抱きしめて、唇を重ねる。
「おはよう、二葉。愛してるよ」
「毅さん、おはよう。私も愛してる」
外の寒さが吹き飛んでしまうほど、今日も幸せな一日が始まる。
この時期からのパリは寒い。
曇りや雨の日も多く、湿度も高いからかなり冷える。
それでも私たちの部屋はどこも快適な温度を保ち続けていて、過ごしやすい。
昨夜はシャンゼリゼ通りにあるレストランで夕食を楽しんだ。
その間、もちろんお互いの話をしつつも話題は日本で暮らす息子のことばかり。
いや、正確にいえば息子と一緒にいる可愛い甥っ子の話だ。
兄の正式な息子となった直くんの写真が毎日のように絢斗さんから二葉の元に送られてくる。
時折動画もあって、仕事からの帰宅後にそれを見るのが私の楽しみになっているところもある。
兄家族で揃って結婚式に参列した時の写真と動画は特に最高だった。
可愛い甥っ子と絢斗さんが美しく着飾った姿だけでなく、その他の参列者との集合写真は圧巻で、自分もその場にいたかったと二葉は残念そうに何度も呟いていた。
水族館での餌やりの動画も最高だったし、これを上回るものは当分ないかと思っていたが、それを大きく裏切って素晴らしい動画が届いた。
直くんが絢斗さんの父である賢将さんの家で、可愛いエプロン&三角巾姿でお好み焼きを作る動画だ。
綺麗な絢斗さんを育てた賢将さんだけあって、直くんの扱い方が上手だ。
うちの父親があのようにできるだろうかと想像するが、無理だろうなという結論しか出てこない。
それでも少し前に父と電話で話した時は、可愛い孫に早く会いたいから帰国を早めていると言っていた。
それを聞いて少し驚いたが、賢将さんほど大っぴらに愛情表現をすることはないだろうと思っている。
私も兄もかなり厳しく育てられたし、昇のことも孫ということで可愛がってはいたが甘やかすという言葉とは無縁の人だ。
だから直くんに対しても変わらないと思っている。
もう少し柔軟な対応をしてくれたらいいんだけどな……。
直くんが父を見て怯えないか心配だ。
そう思っていたのだが……。
たまたまトイレに起きて、時間確認のためにスマホを確認すると、休日の朝っぱらから、珍しく昇からメッセージが送られてきていた。
しかも動画付き。
そうなったらもうあの可愛い直くんの動画しかありえない。
だが、あの昇が私たちからの要請もなく直くんの動画を送ってくれるとは不思議だ。
あの結婚式や水族館での動画もこちらから前もって散々要請していたから送ってくれただけで、普段は絢斗さんからばかりなのだから。
その昇が送ってくれるものがどんな動画だろうなと少し緊張しながら、再生してみた。
そこにはエプロンと三角巾を頭に巻いた直くんが美味しそうにご飯を食べている姿があった。
また賢将さんの家に行ったのか?
それとも兄さん家の休日の昼食の様子か?
いや、それにしてはこの卓袱台に見覚えが……
食い入るように画面を見ていると、
――おじいちゃま。僕がおじいちゃまのを作ります。何が食べたいですか?
と直くんの可愛い声が聞こえてくる。
おじい、ちゃま?
誰のことだ?
頭の中で疑問符が浮かんだ瞬間、父の顔が画面に映ったかと思ったら、
――おお、そうか。ありがとう。じゃあ、このうなぎを入れてもらおうかな。
目尻を下げ見たこともないほど優しい表情を浮かべながら、この上なく優しい声を出しているのが見えた。
「はっ? なっ、なんだ、これ? ほ、本当に、と、父さん、なのか?」
自分の知らない父の顔に思わず大きな声を出してしまった。
「んっ……た、けしさん? どうかした?」
「えっ? あ、ごめん。起こしてしまったか?」
「それは大丈夫だけど、本当にどうかしたの? 信じられないものを見たような顔してる。何かあった?」
「それが……昇から動画が送られてきてたんだけど、これ合成とかじゃないよな?」
私はすぐに再生していた動画を最初まで戻し、二葉の元に駆け寄ってその動画を見せた。
――おじいちゃま。美味しい?
――ああ、直くんが作ってくれたから美味しいな。
手巻き寿司を作ってもらい、流石に食べさせてもらうことはなかったが、それを嬉しそうに口に運び、笑顔で美味しいと感想を言う。
そのどれもが普段の父からは想像できない。
隣で二葉もきっと驚愕の表情を見せているかと思いきや、
「お義父さんったら、楽しそう! もう直くんが可愛くてたまらないって感じね」
画面を見ながら笑っている。
「二葉、驚かないのか?」
「驚いたわ。でも、それ以上に嬉しかったの。お義父さん……表面上はなんでもないっていう表情していたけど、お義母さんが亡くなってから、こんなに幸せそうな表情見たことなかったもの。だからお義父さんに生きがいができて嬉しいなって」
「二葉……」
父の生きがいか……確かに二葉の言う通りだ。
決してまだまだ長いとは言えない父の人生の最後に来て、可愛い孫ができたことは父にとってこの上ない幸せなのだろう。
「なぁ、二葉。クリスマスに一度日本に帰ろうか。数日しかいられないが、みんなと過ごす時間を作りたい」
「わぁー! それいい!! じゃあ、直くんにクリスマスプレゼントをいっぱい買っていきましょう! ああ、選ぶのが楽しくなるわ!!」
「じゃあ、今日早速下見に行こうか。いいものがあれば買えばいい」
「――っ、嬉しい! 毅さん、早く準備しましょう!」
「ははっ。流石にまだ早いよ。それに一つ忘れてないか?」
「えっ? あっ!」
飛び起きた二葉を抱きしめて、唇を重ねる。
「おはよう、二葉。愛してるよ」
「毅さん、おはよう。私も愛してる」
外の寒さが吹き飛んでしまうほど、今日も幸せな一日が始まる。
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