ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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指名が来た!

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「せっかくだから別々のを買おうか。私はチョコのシュトレンにしようかな。直くんは栗ね。私は卓さんに買ってもらうけど、直くんはどうする?」

「えっ、どうするって?」

「お父さんでも寛さんでも昇くんでも、それに卓さんでも……直くんが頼んだら誰でも買ってくれると思うよ。おねだりしてごらん。みんな、おねだりされたら喜ぶから……」

あやちゃんの言葉に後ろを見てみると、入り口にずらりと並んだパパや昇さんたちが窓越しにこっちを見ているのがわかる。

「えっ……どうしよう……」

「ふふっ。ごめん。直くんには選べないかな。カールくんは龍弥くんにお願いするでしょう?」

「えっ、いい、のかな……?」

カールがちらっと村山さんのお母さんを見ると、優しそうに微笑みながら頷いていた。

「カールがドイツで龍弥を思い出しながら食べてくれると思ったら龍弥も喜ぶはずよ」

「僕、お願いしてみます。ねぇ、ナオもノボルに買ってもらおうよ」

嬉しそうなカールに誘われて僕も頷いた。

一緒に入り口まで行って扉を開けると、パパやおじいちゃんたちが一斉にこっちを見る。

「何かいいものがあったかな?」

「は、はい。あの、それで……昇さんに買って欲しいなって……」

パパに声をかけられてドキドキしながら告げると、

「昇! ご指名だぞ」

パパが昇さんを呼んでくれた。その声にさっと昇さんが僕の目の前にやってきた。

「ご指名嬉しいよ。ありがとう。どれがいい? なんでも好きなだけ買ってあげるよ」

「えっと、あの美味しいシュトレンがあって……それを一つ、いいですか?」

「――っ、ああ。もちろん。じゃあ、買おうか」

笑顔で店の中に入ってくる昇さんの後ろでカールも村山さんにお願いしているみたい。

嬉しそうに村山さんとお店の中に入ってきた。

みんな入っちゃうとお店の中がいっぱいになりそうだから、先に買っていいよとあやちゃんが言ってくれて、僕は美味しかった栗のシュトレンをお願いした。

店員さんがすぐにショーケースから大きな栗のシュトレンを取り出してくれて箱詰めしてくれる。

「お召し上がりの際は、真ん中から切ってお召し上がりください。保存の際は切り口を合わせて乾燥しないようにお気をつけくださいね」

「は、はい。わかりました」

見本用のシュトレンで説明してくれるからわかりやすくていい。
クリスマスまで少しずつ食べなくちゃ!

店員さんが両手で抱えるシュトレンは結構な重みがありそう。だってドライフルーツも栗もいっぱい入っていたもんね。
紙袋に入れて手渡されて受け取ろうと思ったら、さっと昇さんが持ってくれた。支払いもささっとしてくれてかっこいい。

「昇さん、ありがとうございます」

「いいよ。一緒にクリスマスまでの時間を楽しもうね」

「はい!」

紙袋を持って外に出ると、交代するようにパパがお店に入ってきた。

「お店の外で待っていなさい」

「はーい」

パパに返事をすると、パパは笑顔であやちゃんの元に向かった。
僕と昇さんが外に出ると、おじいちゃんとおじいちゃまが来てくれる。

「いいものが買えたかな?」

「はい。おじいちゃんとおじいちゃまを待たせてしまってごめんなさい」

「ははっ。そんなこと気にしなくていいんだよ。私たちの年齢になると原宿にはなかなかくる機会もないから通り過ぎる若者たちをみているだけで楽しかったよ。ねぇ、寛さん」

「ああ。その通りだ。それに直くんが楽しそうにしているのをみられるだけで私たちは嬉しいんだよ」

優しいおじいちゃんとおじいちゃまの言葉に僕は嬉しくてたまらなかった。

僕たちの後からカールたち、そしてパパたちと村山さんのご両親が出てきてみんな買い物が終わったみたい。
シュトレン……これから食べていくのが楽しみだな。

<side昇>

直くんたちが店に入って楽しそうに試食しているのをみていると、じいちゃんから声をかけられた。

「お前、今日はお金を持ってきたか?」

「えっ、あ、うん。五万くらい持ってきたけど……」

「そうか、じゃあ足りなくなったら言いなさい。直くんが欲しがるものはなんでも買ってやるといい」

「じいちゃん、いいの?」

「ああ。私はお前と直くんのじいちゃんだからな。孫が欲しいものは買ってあげたいんだよ」

俺が伯父さんや大おじさんに遠慮してしまうのを理解してくれているからこそのこの言葉。
やっぱりじいちゃんだなと嬉しくなる。

「じいちゃん、ありがとう」

お礼を言って店の中を見ると、試食のシュトレンを口にして美味しそうな表情をしている直くんが見える。
あの笑顔をずっと絶やさずにしてやりたい。

そう思いながらそっとスマホを抱えて店の中の楽しげな直くんの写真を撮った。
友人との初めての買い物。きっといい思い出になっただろう。

可愛い直くんの写真に魅入っていると、

「昇! ご指名だぞ」

伯父さんの声が聞こえた。

「直くんが欲しいものがあるそうだぞ」

じいちゃんがこそっと教えてくれて、慌てて入り口に向かった。

なんでも買ってあげると声をかけると、

「えっと、あの美味しいシュトレンがあって……それを一つ、いいですか?」

ほんのり頬を染め見上げながらお願いされてそれだけで興奮する。
可愛い、可愛すぎる!!

その場で抱きつきそうになるのを必死に抑えて一緒に店の中に入り、会計を済ませた。
ずっしりと重みのある紙袋を片手に持ち、直くんと手を繋いで外に出た。

周りから視線は感じるが、直くんは紙袋の中のシュトレンに意識が向いているようで気にしていないみたいだ。
じゃあこのままでいよう。俺はずっと手を繋いでいたいから。
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