ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

文字の大きさ
296 / 678

なんでも願いを叶えたい

しおりを挟む
話は進んでませんが、クレーンゲームをしていた時のパパたちの話が書きたかったので……。
楽しんでいただけると嬉しいです♡

  *   *   *


<side卓>

シュトレン専門店は、絢斗が榊くんから勧められていた店だからせっかく原宿に行くのなら寄ろうと思っていた。
時期も時期だし、きっと直くんも好きな味のものが見つかるだろうと考えていた。
それに、カールくんはドイツ人。きっとその店の前を通れば絶対に入りたがると思っていたから予想通りだった。

中に入り、試食をして購入を決めた直くんが誰に買ってほしいと頼むのか……。
それは父である私であってほしいという気持ちもありつつ、そこまで高い買い物でもないから昇に譲るべきかという気持ちもあった。

結局のところ、直くんが昇に買ってほしいと言ってきたことで支払いは昇になってしまったが、直くんにねだられて嬉しそうな昇を見るとこれでよかったのだという気持ちでいっぱいになる。

「卓さん、ご自分が買ってあげたかったんでしょう?」

「ははっ。純弥くんに気づかれるとはな」

「わかりますよ。その気持ち。私もカールが来てすぐに家族で一緒に出かけた時に、龍弥をすっ飛ばして全部私が買ってあげたい気持ちになりましたから。ねだられるの、可愛いですよね」

「ああ。そうなんだよ! 本当に可愛くてね。何でもしてあげたい気持ちになるよ」

「ですよね」

今までに感じたこともなかった感情を、こうして分かり合える存在がいるというのはなんとも心強い。
きっと純弥くんにとってもカールはすでに可愛い義息子という存在になっているのだろうな。

昇と直くん、そして龍弥くんとカールが出てくるのと交代して、私と純弥くんも店の中に入る。

「あ、卓さん。直くん、嬉しそうだったでしょう?」

「ああ。喜んでいたよ。シュトレン、気に入ったようだったし」

紙袋のシュトレンに目を奪われていたのを見逃さなかった。

「うん。試食してすっごく美味しいって言ってたよ」

「そうか、それならよかった。それで絢斗はどれにする?」

「えっとね、このショコラのシュトレンにしようかなって」

「美味しそうだな。これは私も少しは食べられるのか?」

「もちろんだよ。でも卓さんにはちょっと甘いかも」

「大丈夫、絢斗が食べさせてくれるなら美味しいよ」

「もう、卓さんったら」

いつまで経ってもこうして照れて見せる絢斗が愛おしくてたまらない。
直くんを可愛い、守りたいと思う感情とは全く別のものだな。

無事に買い物を済ませて次なる場所に向かう。
その途中でカールくんの目を惹いたのは、ゲームセンター。
その辺のゲームセンターなら直くんを入らせたりはしないが、ここは問題ない。

ここなら大丈夫だと昇にアイコンタクトを送り、中に入る。

「ここのゲームセンターは死角がなくて安心ですね」

「そこに気がつくとはさすがだな、純弥くん。ここは、倉橋くんが出資をしているゲームセンターだから安心安全保障済みなんだよ」

「なるほど。彼が手を出しているところならそれは最強ですね」

元々いろんな業種に手を伸ばしていた彼だったが、可愛い伴侶ができてからはほぼ全ての業種を網羅していると言っても過言ではない。きっとその可愛い彼ががどこに行きたいと言っても安全な場所に連れて行けるようにしているのだろう。彼一人を守るためにかなりセキュリティを強化しているが、安心安全が保障された店の情報は全て私たちに共有されるから、私たちも安心して連れて行くことができるのでそこの売り上げも鰻登り。どちらにとってもwin-winというわけだ。

カールくんが見つけたクレーンゲームで父と直くんと昇が楽しんでいるのを見物していると、絢斗が私の指を優しい力で引っ張ってきた。

「絢斗、どうした?」

「あの可愛いぬいぐるみ、欲しいなって……」

「絢斗の願いならなんでも叶えるよ。どれだ?」

「あれだよ」

私の指を引っ張る可愛い絢斗にそのゲーム機まで連れて行かれる。
本当に可愛い。
チワワやプードル、ポメラニアン、ヨークシャテリアなど可愛らしい小型犬のぬいぐるみが集まっているゲーム機で
絢斗が欲しがったのは可愛いチワワ。

「これ、埋まってるけど取れる?」

「うーん、そうだな。大丈夫、取れるよ」

チラッと横からも確認するが、まず間違いなく取れるだろう。

硬貨を入れてレバーを動かす。
絢斗は期待いっぱいの目で私の隣に立ち、行方を見守ってくれている。

ここで失敗するなんて男が廃る。

気合を入れて、絶好のタイミングで手を離した。

クレーンの片方のアームが可愛いチワワの背中を滑っていく。

「あっ……」

絢斗は失敗したと思ったろう。
だがアームはそのままチワワの首輪にスッと入り込んだ。

「えっ、わぁ! すごい!!」

アームに首輪が刺さったまま吊り上げられていく。

その様子に絢斗はその場で飛び跳ねて喜んでいた。
そして無事に落とし口に入って行ったチワワを取り出して絢斗に渡した。

「卓さん! ありがとう、可愛いっ! 嬉しい!!」

「絢斗の願いならなんでも叶えられるんだよ」

「卓さんは私の魔法使いだね。ありがとう」

嬉しそうにチワワで隠しながら、私の唇にキスしてくれた。
人前でこうして喜びをあらわにしてくれるのが何よりも嬉しい。

チワワを抱っこして直くんの元に駆けていく絢斗をこの上ない笑顔のまま見送っていると、

「さすがですね、卓さん」

と純弥くんが声をかけてきた。

「君も何か取れたんじゃないか?」

視界の隅にクレーンゲームをしている彼と瑠璃さんの姿が見えていた。

「はい。卓さんのほどは難しくなかったですから。でも喜んでもらえるのは嬉しいですね」

「ああ、そうだな」

可愛いぬいぐるみを手に喜んでいる、絢斗と直くん、そして瑠璃さんとカールくんの姿を見て微笑んでいると、

「なぁ、せっかく来たしプリクラも撮っていこうぜ!」

という龍弥くんの声が聞こえてきた。
しおりを挟む
感想 1,244

あなたにおすすめの小説

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

拗らせ問題児は癒しの君を独占したい

結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。 一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。 補習課題のペアとして出会った二人。 セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。 身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。 期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。 これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

処理中です...