ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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父の腕前

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「わぁ、すごいお店ですね」

「ああ、結婚式の時にあった蓮見くんを覚えているかな?」

「えっと、僕のドレスを用意してくれたっていう……」

「そう。その彼のお店だよ」

「そうなんですね、すごいな」

目を輝かせながら店内をキョロキョロしている直くんを抱っこして奥へ進むと、

「あ、昇さんだ!」

直くんの可愛い声が響いた。
その声にすぐに気づいたのか、昇がこちらに駆けてくる。
その表情は喜び半分、驚き半分と言った様子だ。

まぁ、無理もない。
愛しい直くんが私の腕に抱っこされているのだからな。
だが、私は直くんの父親だ。ここで狭量さを見せるのは男としても恋人としても良くないぞ。

さてどう言った反応を見せるかなと思っていると、昇は私が抱っこしていることよりも先に

「直くん! その洋服、とてもよく似合うよ!! 可愛い!!」

と笑顔で褒めた。

昇のその反応に直くんは嬉しそうな笑顔を浮かべ、私を見る。

「パパ、昇さんも可愛いって言ってくれました」

「ああ、そうだな。直くんは本当に可愛いよ」

「ふふっ。嬉しいです」

直くんは私にギュッと抱きつくと嬉しそうに笑った。

ああ、私はもうこれで十分だ。
父として直くんとしっかりと触れ合えた。

あとは昇に渡してあげるとしよう。

直くんとの触れ合いに満足した私は、

「昇のところに行っておいで」

と直くんを腕からそっと下ろした。

直くんは嬉しそうに昇のところに行き、

「昇さんもすっごくかっこいいです!」

と褒めているのが聞こえる。

直くんと釣り合うように必死に考えていた昇にとってはこの上ない褒め言葉だろうな。

身長差は30cmはありそうだが、二人のあの衣装なら兄弟には決して見えない。
今日のところは合格だな。

龍弥くんの方もカールくんと上手く釣り合いの取れた服装が選べたようだ。

「二人とも無事に合格できてよかったですよ」

「ああ、本当に。でも龍弥くんはさすがだな。最初からカールくんが隣にいることを考えて選んでいただろう?」

「いえ、昇くんが卓さんに言われていたことを聞いていただけですよ。あいつはそういうところちゃっかりしているから……」

「ははっ。そうか。でもそういうのも社会に出れば必要なこともあるから、頼もしいじゃないか」

愛しい相手に褒められて嬉しそうにしている昇と龍弥くんを見ながら、私たちはお互いに笑顔で顔を見合わせた。


店を出て、昼を食べに行くから一度車に戻ろうと声をかけた。

せっかく着替えたばかりだから駐車場に戻るまでは若いカップルたちで歩かせてあげようかと思い、昇と直くん、龍弥くんとカールくんが歩いていく後ろから見守るように私たちも歩き始めた。

直くんもカールくんも可愛すぎて、周りの注目を浴びまくりだが、今のところは昇も龍弥くんもしっかりと二人を守れているようでホッとする。

このまま何事もなく駐車場まで戻れたらいい。
そう思っていたが、突然人混みから男が直くんにわざとぶつかろうとして飛び出してきた。

私があっ!! と思うのと同時に昇はさっと直くんの腕を引き、自分の胸に抱き込んだ。
すると、男は急に目の前に空間ができたからか、そのままバタンと地面に転がった。

「ぐぁーーっ! 腕が折れたーー!!」

派手にジタバタしながら大声で叫びまくる男に直くんは震えているようだ。
こんなやつの姿をもう直くんの目に入れたくない。

「賢将さん、絢斗と直くんたちをお願いします」

「わかった」

さっと一瞬のうちに役割が決まった私たちは、すぐに行動に移した。

賢将さんが絢斗と直くんと昇を、同時に純弥くんが瑠璃さんとカールくんと龍弥くんをこの場から急いで離し駐車場に向かわせる。

ジタバタしていた男が、

「お前らふざけんな。病院代払えよ!!」

といいながら立ち上がった時には、男の前には私と父しかいなかった。

「ああ? なんだよ、お前ら。さっきの子どもはどうした?」

男はキョロキョロと辺りを見回すがもうすでに昇たちの姿はない。

「くそっ! 俺に怪我させて逃げたのか? ふざけやがって! 探し出して慰謝料払わせてやるからな!」

「何をおっしゃっているんですか? ずっと見ていましたが、あなたが自分で転んだだけで彼らは何も触れてないでしょう?」

「はぁー? 部外者がいちいちうるせーんだよ! 被害者の俺が怪我させられたって言ってんだよ! じじいがしゃしゃり出てくんなよな!」

「ですが、どこを怪我されたんですか? どう見ても骨が折れているようには見えませんが」

「うるせーって言ってんだろ! 折れたって言ったら折れてんだよ!」

「怪我もしていないのに病院代やら慰謝料やら請求するのは犯罪ですよ。しかも恫喝してお金を出させるのも犯罪です。警察を呼びましょうか?」

「余計なことするなって言ってるだろ! じじいたちが正義感振り翳して出てくると痛い目見るぞ!」

「痛い目、とはどういうことでしょう?」

「本当、うぜぇな。こういうことだ――ぐぁっ!!!!」

男が怒りのままに私に殴りかかろうとしたところで、隣にいた父がさっとその腕を掴み、そのまま後ろ手に捻り上げて地面に這いつくばらせた。その間、十秒もかかってないだろう。

相変わらずの腕前だ。この男はもちろん、きっとここにいる誰もが父がもうすぐ90歳とは思わないだろうな。
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