312 / 678
初めてのタコス
しおりを挟む
俺は直くんに食べさせたい具材を選んで注文した。
直くんが選んだ定番のものを食べつつ、俺のも食べたらここのタコスの味もわかって、次に来たときは自分で選べるようになるかもしれないからな。
多めに頼んでもどうせ全部食べ切れるし問題ない。
「おじさん。タコスソースなんだけど辛さを抑えるのもできる?」
「ああ、大丈夫だよ」
「じゃあ、普通のと辛み抑えめのものと一つずつください」
「あの子のだね。わかったよ」
貸切を頼んだ時に、俺の大事な子を連れて行くって話もしたから、おじさんはすぐにわかったみたいだ。
おじさんはその後全員から注文を受けて、直くんと同じようにいくつか辛み抑えめのタコスソースを絢斗さんと村山の母さんも頼んでいた。
カールは意外と辛いものが得意だというのは一緒に学食を食べていたからわかっていた。
だからだろう、普通に俺たちと同じソースを頼んでいた。
「カールはタコスは初めて?」
「ドイツにも一応タコス屋はあって一度食べたことはあるよ。でも見た目は、日本の方が美味しそうに見えるね。それに具材の種類も多いよ」
確かに俺もドイツに短期間住んでいたことはあるけど、ドイツ料理店以外の各国の店は定番のものしか置いていないイメージだったな。きっとここのタコスを食べたらカールのタコスへのイメージも大きく変わるだろう。
しばらくして、俺たちのテーブルに次々と料理が運ばれてくる。
「わぁ! 昇さん、なんだか周りがパリパリしてます」
「この皮が美味しいんだよ。こぼしてもいいから大きな口開けてバクっと食べたらいいからね」
「大きな口開けて……は、はい。頑張ってみます!」
直くんの口は小さいからな。
俺ならこのタコスも二口で食べ終わるけれど、直くんは絶対に無理だろう。
俺がタコスソースを入れて
「食べてごらん」
と皿を添えながら差し出すと、直くんは少し緊張した様子で口を開けた。
いつもより大きく開けた口が可愛い。
パリっといい音がして、タコスの五分の一くらいが直くんの口の中に入っていく。
タコスミートもソースもちゃんと入っているから味はわかるはずだ。
「んん! んーひー」
「美味しい?」
リスみたいにもぐもぐしながら
「ん、んっ!」
頬を染めて頷いてくれる。
ああ、もうこれだけで可愛い。
直くんはようやく口の中が空っぽになると目を輝かせながらじいちゃんをみた。
「タコス! すっごく美味しいです!」
「直くんが気に入ってくれてよかったよ。では私も食べてみようかな」
向こうでもよく食べていたというだけあって、じいちゃんは手慣れた様子でタコスにソースをかけ、大きな口を開けて一気に半分ほど齧り付いた。やっぱり元気だよな、じいちゃん。
周りに同じ歳くらいの高齢者をみたことがないからよくわからないけれど、絶対に若いと言い切れる自信がある。
「ああ、美味しいな」
じいちゃんの言葉が厨房にいるおじさんの耳にも入ったようで、声を出さずに大喜びしている様子が俺の席からよく見える。
あれだけ尊敬していると言っていた相手が自分の作ったものを食べて美味しいと言ってくれたらそれは嬉しいのも当然だろう。おじさんにとってはいい一日になったかもしれないな。
「直くん、このチキンも食べてみようか。両手で端の骨を持ってかぶりついて食べたら最高に美味しいから」
「は、はい」
外でこんな食べ方、というかそもそもこんな食べ方もほとんどしたことがないかもしれない。でもせっかくこういうお店に来た時くらいは好きに食べて美味しく感じて欲しい。
直くんは少し緊張しながら周りを見るが、絢斗さんや村山の母さんもチキンを手に持って食べていることに気づいてホッとしたように手を伸ばした。
指を汚しながらパクッと齧り付く。
その時の嬉しそうな表情を俺は迷わず写真に撮った。
「ん!」
「ごめん、直くんの可愛いところ撮っちゃった」
直くんは急にシャッター音が聞こえてびっくりしていたけど、俺が素直に気持ちを伝えると照れながらも笑顔を見せてくれた。
ああ、直くんが優しくてよかった。
「直くん、こっちのタコスも食べてみて」
俺の好きな、サイコロステーキが入っているボリュームのあるタコスだけど、オニオンソースとこの皮のパリパリと一緒に食べると最高に美味しいんだ。
こぼしてもいいように皿を添えて口の前に運ぶと、直くんも慣れてきたのかさっきよりも大きな口を開けてくれる。
「喉に詰まらないように無理はしないでいいからね」
声をかけて食べさせた。
サイコロステーキはすごく柔らかくて食べやすい。
この値段で出していいのかと心配になるくらいの肉だ。
直くんはこれも美味しそうな表情をみせて満足そうに食べ終えた。
「どうだった?」
「こっちのタコスもすっごく美味しかったです!」
よかった。俺とじいちゃんが好きなタコスは直くんにも受け入れられたようだ。
直くんが選んだ定番のものを食べつつ、俺のも食べたらここのタコスの味もわかって、次に来たときは自分で選べるようになるかもしれないからな。
多めに頼んでもどうせ全部食べ切れるし問題ない。
「おじさん。タコスソースなんだけど辛さを抑えるのもできる?」
「ああ、大丈夫だよ」
「じゃあ、普通のと辛み抑えめのものと一つずつください」
「あの子のだね。わかったよ」
貸切を頼んだ時に、俺の大事な子を連れて行くって話もしたから、おじさんはすぐにわかったみたいだ。
おじさんはその後全員から注文を受けて、直くんと同じようにいくつか辛み抑えめのタコスソースを絢斗さんと村山の母さんも頼んでいた。
カールは意外と辛いものが得意だというのは一緒に学食を食べていたからわかっていた。
だからだろう、普通に俺たちと同じソースを頼んでいた。
「カールはタコスは初めて?」
「ドイツにも一応タコス屋はあって一度食べたことはあるよ。でも見た目は、日本の方が美味しそうに見えるね。それに具材の種類も多いよ」
確かに俺もドイツに短期間住んでいたことはあるけど、ドイツ料理店以外の各国の店は定番のものしか置いていないイメージだったな。きっとここのタコスを食べたらカールのタコスへのイメージも大きく変わるだろう。
しばらくして、俺たちのテーブルに次々と料理が運ばれてくる。
「わぁ! 昇さん、なんだか周りがパリパリしてます」
「この皮が美味しいんだよ。こぼしてもいいから大きな口開けてバクっと食べたらいいからね」
「大きな口開けて……は、はい。頑張ってみます!」
直くんの口は小さいからな。
俺ならこのタコスも二口で食べ終わるけれど、直くんは絶対に無理だろう。
俺がタコスソースを入れて
「食べてごらん」
と皿を添えながら差し出すと、直くんは少し緊張した様子で口を開けた。
いつもより大きく開けた口が可愛い。
パリっといい音がして、タコスの五分の一くらいが直くんの口の中に入っていく。
タコスミートもソースもちゃんと入っているから味はわかるはずだ。
「んん! んーひー」
「美味しい?」
リスみたいにもぐもぐしながら
「ん、んっ!」
頬を染めて頷いてくれる。
ああ、もうこれだけで可愛い。
直くんはようやく口の中が空っぽになると目を輝かせながらじいちゃんをみた。
「タコス! すっごく美味しいです!」
「直くんが気に入ってくれてよかったよ。では私も食べてみようかな」
向こうでもよく食べていたというだけあって、じいちゃんは手慣れた様子でタコスにソースをかけ、大きな口を開けて一気に半分ほど齧り付いた。やっぱり元気だよな、じいちゃん。
周りに同じ歳くらいの高齢者をみたことがないからよくわからないけれど、絶対に若いと言い切れる自信がある。
「ああ、美味しいな」
じいちゃんの言葉が厨房にいるおじさんの耳にも入ったようで、声を出さずに大喜びしている様子が俺の席からよく見える。
あれだけ尊敬していると言っていた相手が自分の作ったものを食べて美味しいと言ってくれたらそれは嬉しいのも当然だろう。おじさんにとってはいい一日になったかもしれないな。
「直くん、このチキンも食べてみようか。両手で端の骨を持ってかぶりついて食べたら最高に美味しいから」
「は、はい」
外でこんな食べ方、というかそもそもこんな食べ方もほとんどしたことがないかもしれない。でもせっかくこういうお店に来た時くらいは好きに食べて美味しく感じて欲しい。
直くんは少し緊張しながら周りを見るが、絢斗さんや村山の母さんもチキンを手に持って食べていることに気づいてホッとしたように手を伸ばした。
指を汚しながらパクッと齧り付く。
その時の嬉しそうな表情を俺は迷わず写真に撮った。
「ん!」
「ごめん、直くんの可愛いところ撮っちゃった」
直くんは急にシャッター音が聞こえてびっくりしていたけど、俺が素直に気持ちを伝えると照れながらも笑顔を見せてくれた。
ああ、直くんが優しくてよかった。
「直くん、こっちのタコスも食べてみて」
俺の好きな、サイコロステーキが入っているボリュームのあるタコスだけど、オニオンソースとこの皮のパリパリと一緒に食べると最高に美味しいんだ。
こぼしてもいいように皿を添えて口の前に運ぶと、直くんも慣れてきたのかさっきよりも大きな口を開けてくれる。
「喉に詰まらないように無理はしないでいいからね」
声をかけて食べさせた。
サイコロステーキはすごく柔らかくて食べやすい。
この値段で出していいのかと心配になるくらいの肉だ。
直くんはこれも美味しそうな表情をみせて満足そうに食べ終えた。
「どうだった?」
「こっちのタコスもすっごく美味しかったです!」
よかった。俺とじいちゃんが好きなタコスは直くんにも受け入れられたようだ。
1,331
あなたにおすすめの小説
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
拗らせ問題児は癒しの君を独占したい
結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。
一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。
補習課題のペアとして出会った二人。
セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。
身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。
期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。
これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
僕を惑わせるのは素直な君
秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。
なんの不自由もない。
5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が
全てやって居た。
そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。
「俺、再婚しようと思うんだけど……」
この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。
だが、好きになってしまったになら仕方がない。
反対する事なく母親になる人と会う事に……。
そこには兄になる青年がついていて…。
いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。
だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。
自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて
いってしまうが……。
それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。
何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる