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父親として、恋人として
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<side寛>
昇の行きつけの店が貸切にしてくれていて助かった。
この小さな店で貸切でなければ、直くんとは一緒に座って食べることもままならなかっただろう。
直くんにとって初めてのタコスだが、私もこれほど具材の種類があるタコス屋は初めてだ。
L.Aで食べていたキッチンカーはタコスミートの入った定番のものと、ヴィーガンタコスしかなかったからな。
そもそも本場よりも具材の種類が多いのは、日本特有のものかもしれない
メニューの写真があるとはいえ、それがどのような味かを想像できない直くんには選ぶのが難しいだろうと思い、定番を頼もうと声をかけた。その時のホッとした表情の理由を昇も気づいたようだ。
こうして少しずつ直くんの性格や考えを学んでいけばいい。
そのために人生の先輩として私たちがついているのだから。
「直くん、こっちのも美味しいよ」
絢斗くんが自分のタコスを直くんに食べさせようと持ってくる。
それを直くんが美味しそうに齧り、美味しそうな表情を見せる。
それに満足して絢斗くんが残りを卓と分け合う姿を見ていると本当の親子にしか見えない。
絢斗くんに対しては狭量な卓が、直くんとならあんなにも許せるのだと思うと微笑ましくさえ思ってしまう。
卓が本当に父親になったのだな。嬉しいことだ。
直くんはいろんなタコスやチキンを食べて大満足の様子だ。
そういえば、直くんは食事をするとすぐに眠くなると言っていたな。
今日は朝からはしゃいでいたし、人混みも歩いてトラブルにも見舞われたし肉体的にも精神的も普段とは違いすぎて疲れてしまっただろう。
そろそろ眠くなる頃かもしれない。
そう思っていると、直くんが隣に座る昇に寄りかかるのが見えた。
ああ、やっぱりな。
「昇、楽な体勢にしてやれ」
「うん」
すぐに気がついた賢将さんが声をかけると昇はさっと上着を脱ぎ、直くんを抱きかかえて自分の膝に横抱きに座らせた。
そして今まで自分が着ていた上着を直くんにかけると、直くんは幸せそうな表情を浮かべて昇の胸元に顔を擦り寄せていた。
「ふふっ。直くん、その場所が好きなのね。見て、絢斗さん。直くん、すごく安心している顔してるわ」
「うん。直くん、昇くんといる時いつもホッとしているからね。昇くんの存在は私と卓さん以上に大きいよ」
絢斗くんの言葉に昇は嬉しそうに笑っていた。
「それじゃあ直くんも眠ったことだし、私たちは失礼しようか。あとは村山家の楽しい家族の時間にしてくれ」
「でも、直くんが起きた時カールたちがいなかったら自分が寝たせいで一緒に遊べなかったってがっかりしないかな?」
「それなら大丈夫だよ。明日は我が家に来て絢斗の講義に参加するんだろう?」
「あ、そっか。そうだった。今日で最後じゃないんだ。それなら直くんも安心するね」
昇はホッとした表情を見せ、直くんを優しく抱きしめた。
「カールくん、明日来てくれるの楽しみにしてるね」
「はい! 僕、日本の大学の講義に参加できるなんてすごく嬉しいです!」
絢斗くんは講義になるといつもとは印象が変わるからカールくんは驚くかもしれないな。
明日のスケジュールも決まったところで、会計をして帰ることにしたが卓や純弥くん、それに賢将さんも財布を取り出している。
「ここは年長者の私に華を持たせてくれ」
それでも遠慮する彼らを制して支払いに向かうと、店の店主が
「今日のお代は結構です。大先輩方にお会いできただけで幸せですから……」
と言ってくる。
「いやいや、そういうわけにはいかない。そんなことをされては私は孫を連れて来れなくなるよ。ちゃんと代金を受け取ってくれ」
「磯山先生……はい、ありがとうございます。それではお代を頂戴いたします」
料金よりも一万円上乗せして支払ったのは、可愛い孫たちのために貸切にしてくれたお礼だ。
彼はそれも遠慮しようとしていたが、これからも貸切にしてもらうためのお礼だと告げるとようやく受け取ってくれた。
直くんを抱きかかえて店を出る昇に
「代わろうか?」
卓が声をかけていたが、昇は代わることはしなかった。
父としての卓の気持ちもわかるし、恋人を自分の手で守るという昇の気持ちもわかる。
今日は卓と久しぶりに呑みたい、そんな気持ちにさせられた。
駐車場まで歩いて行く間も、直くんを抱きかかえている昇には夥しい視線が注がれていたが、昇は何も気にすることなく腕の中の直くんだけに意識を向けていた。
昇も頼もしくなったものだと思いながら、私は賢将さんと共に笑顔で顔を見合わせた。
昇の行きつけの店が貸切にしてくれていて助かった。
この小さな店で貸切でなければ、直くんとは一緒に座って食べることもままならなかっただろう。
直くんにとって初めてのタコスだが、私もこれほど具材の種類があるタコス屋は初めてだ。
L.Aで食べていたキッチンカーはタコスミートの入った定番のものと、ヴィーガンタコスしかなかったからな。
そもそも本場よりも具材の種類が多いのは、日本特有のものかもしれない
メニューの写真があるとはいえ、それがどのような味かを想像できない直くんには選ぶのが難しいだろうと思い、定番を頼もうと声をかけた。その時のホッとした表情の理由を昇も気づいたようだ。
こうして少しずつ直くんの性格や考えを学んでいけばいい。
そのために人生の先輩として私たちがついているのだから。
「直くん、こっちのも美味しいよ」
絢斗くんが自分のタコスを直くんに食べさせようと持ってくる。
それを直くんが美味しそうに齧り、美味しそうな表情を見せる。
それに満足して絢斗くんが残りを卓と分け合う姿を見ていると本当の親子にしか見えない。
絢斗くんに対しては狭量な卓が、直くんとならあんなにも許せるのだと思うと微笑ましくさえ思ってしまう。
卓が本当に父親になったのだな。嬉しいことだ。
直くんはいろんなタコスやチキンを食べて大満足の様子だ。
そういえば、直くんは食事をするとすぐに眠くなると言っていたな。
今日は朝からはしゃいでいたし、人混みも歩いてトラブルにも見舞われたし肉体的にも精神的も普段とは違いすぎて疲れてしまっただろう。
そろそろ眠くなる頃かもしれない。
そう思っていると、直くんが隣に座る昇に寄りかかるのが見えた。
ああ、やっぱりな。
「昇、楽な体勢にしてやれ」
「うん」
すぐに気がついた賢将さんが声をかけると昇はさっと上着を脱ぎ、直くんを抱きかかえて自分の膝に横抱きに座らせた。
そして今まで自分が着ていた上着を直くんにかけると、直くんは幸せそうな表情を浮かべて昇の胸元に顔を擦り寄せていた。
「ふふっ。直くん、その場所が好きなのね。見て、絢斗さん。直くん、すごく安心している顔してるわ」
「うん。直くん、昇くんといる時いつもホッとしているからね。昇くんの存在は私と卓さん以上に大きいよ」
絢斗くんの言葉に昇は嬉しそうに笑っていた。
「それじゃあ直くんも眠ったことだし、私たちは失礼しようか。あとは村山家の楽しい家族の時間にしてくれ」
「でも、直くんが起きた時カールたちがいなかったら自分が寝たせいで一緒に遊べなかったってがっかりしないかな?」
「それなら大丈夫だよ。明日は我が家に来て絢斗の講義に参加するんだろう?」
「あ、そっか。そうだった。今日で最後じゃないんだ。それなら直くんも安心するね」
昇はホッとした表情を見せ、直くんを優しく抱きしめた。
「カールくん、明日来てくれるの楽しみにしてるね」
「はい! 僕、日本の大学の講義に参加できるなんてすごく嬉しいです!」
絢斗くんは講義になるといつもとは印象が変わるからカールくんは驚くかもしれないな。
明日のスケジュールも決まったところで、会計をして帰ることにしたが卓や純弥くん、それに賢将さんも財布を取り出している。
「ここは年長者の私に華を持たせてくれ」
それでも遠慮する彼らを制して支払いに向かうと、店の店主が
「今日のお代は結構です。大先輩方にお会いできただけで幸せですから……」
と言ってくる。
「いやいや、そういうわけにはいかない。そんなことをされては私は孫を連れて来れなくなるよ。ちゃんと代金を受け取ってくれ」
「磯山先生……はい、ありがとうございます。それではお代を頂戴いたします」
料金よりも一万円上乗せして支払ったのは、可愛い孫たちのために貸切にしてくれたお礼だ。
彼はそれも遠慮しようとしていたが、これからも貸切にしてもらうためのお礼だと告げるとようやく受け取ってくれた。
直くんを抱きかかえて店を出る昇に
「代わろうか?」
卓が声をかけていたが、昇は代わることはしなかった。
父としての卓の気持ちもわかるし、恋人を自分の手で守るという昇の気持ちもわかる。
今日は卓と久しぶりに呑みたい、そんな気持ちにさせられた。
駐車場まで歩いて行く間も、直くんを抱きかかえている昇には夥しい視線が注がれていたが、昇は何も気にすることなく腕の中の直くんだけに意識を向けていた。
昇も頼もしくなったものだと思いながら、私は賢将さんと共に笑顔で顔を見合わせた。
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